セブンスソード

奏せいや

163

 そこで星都が前に出た。

「愉快な連中だな。奇抜な仮装して興業中か? おまけにワンちゃんショーもセットかよ」
「人間風情が愚弄するか!?」
「この俺を誰だと思っている!?」
「貴様のような人間が前に立つことすら不遜であるぞ」
「知ったことかよ、そもそもてめえの方から来たんだろうが」
「ぷぷ、言えてる」
「あ?」
「ひいい!」
「……なぜオイラの背に隠れるズラ」
「うるさい! 庇えコロポックル」
「そしてなぜ偉そうなんだズラ」

 あのピクシーとコロポックルと呼ばれている悪魔はなんだかコミカルだ。俺が知っている悪魔とはずいぶん雰囲気が違うが人類の本拠地を潰すためにきたんだ、油断はできない。

 特に、あの仮面と犬は要注意だと分かる。さきほどから戦意が高いというか気が引き締まっている。

「全うに戦えそうな者が一人はいるな。安心した。虐殺は望むところではないからな」
「ふん。弱者も強者も等しく殺すだけ。そこに優劣もないだろうに」
「気持ちの問題だ、気に掛けるな」
「お前もつくづくくだらんものだ」
「好きに思え」

 互いに価値観は違うようだが戦闘の心構えっていうのがちゃんとできている。どちらかというと仮面の方が正々堂々を好むタイプなんだろうか。

「さっきからおしゃべりが好きな連中だな。ここは休憩所じゃないんだぜ? 用がないなら帰りな。お出口は後ろだぜ?」
「そうだそうだ! 私たちは人間を殺すために来てんのに仲間威嚇してどうすんのよ! 三つも頭あるんだからちゃんとしてよね!」
「「「あ?」」」
「ひいい!」
「だからなんでオイラに隠れるズラ」
「いいでしょ! あんたと私の仲なんだから」
「仕方がないズラねー」

 なんなんだこいつら。

 そこで最初に現れた女性の悪魔が拳を挙げた。それに気づいた他の悪魔が一斉に黙り出す。
 最初から思っていたが、やはりリーダーはあの女か。一挙動だけで黙らせるなんて。

 他の悪魔たちも全員が真剣な顔つきになる。始めるつもりだ。相手の空気を読み取り星都や他の隊員も銃を構える。

 女の悪魔は手を挙げたまま。拳を開きそのままの状態でにらみ合う。

 緊張が走る。女の動きに集中する。

「…………」

 直後、女が手を前に倒した。

「いぇーい! 始まりだ!」
「オイラも頑張るズラ!」
「尋常に!」
「滅びの時だ、人間」
「来るぞ!」

 手を倒したのを合図に悪魔たちが動き出す。

 一番先に動いたのは仮面の男だった。槍を構え星都に真っ先に迫る。まさに一番槍といった具合だ。

 次に三頭の犬が隊員たちに迫る。迎え撃ついくつもの銃弾が命中するがびくともしていない。

「そのようなものでこの体が傷つくか!」

 犬の前足が隊員を払い壁に激突する。

 その中で星都は仮面の男の速攻を受け止めていた。突かれる槍の先端をエンヂュラスで逸らしている。相手の先手を防ぐがそれだけじゃない。星都は片手を放した。

「こい、グラン!」

 現れる鉄塊王グラン。緑の大剣を片手で振るい仮面の男を返り討ちにした。男は槍で防ぐものの大きく後退し着地する。

「ぬう!」

 二本目のスパーダに仮面の男が声を漏らす。

 そこから星都の猛攻が始まった。星都は方向を三頭の犬に変え突進する。エンデュラスの高速移動により襲われていた隊員の前に立ちカウンターのグランを振るう。それにより巨大な体が吹き飛び回転しながら後退していった。三頭の犬はすぐに体勢を整え星都を睨みつける。

 すごい。やはり星都は強い。特にエンデュラスとグランの組み合わせは最高だ。速度と力。複雑な能力なんていらない、これだけで敵を倒すには十分だ。

「ちょっと! 押されるんだから早くしなさいよ!」
「分かってるズラ、これは配合が難しいんだズラ!」

 仮面の男や三頭の犬が前線で戦っている中後方ではピクシーとコロポックルがなにやらやり取りをしている。

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