セブンスソード

奏せいや

145

 半蔵の攻撃は当たった。大部分は光の壁で防がれたもののその体には何十本ものナイフが全員に刺さっていた。

 白衣姿が前屈みになる。全身を縫い針みたいに刺されあれでは助からない。

 しかし、男から血は流れていなかった。

 それだけじゃない。男の全身が発光したかと思うと光となって破裂したのだ。体が粒子となって散り刺さっていたナイフが地面に落ちる。

 すると、漂っていた粒子が集まり再び白衣姿の男になっていた。そこに傷はない。元通りだ。

 回復、なんてものじゃない。

 これは復元だ。傷を治すというよりも一から作り直す、そんな感じだ。

 白衣の男は半蔵の前に瞬時に現れると光の剣で切り裂いた。半蔵が倒れる。

「馬鹿な、なぜ生きているのですか?」
「君が知る必要はない」

 男はそう言い半蔵の背中に剣を突き立てた。それで半蔵の息の根は止まり管理人の二人は死んでいた。

「なにが、どうなっているんだ……」

 まさかあの管理人二人がやられるなんて。半蔵なんて四人がかりでも勝てなかったんだぞ。

「あんた、何者だ?」 

 それをたった一人で倒した。誰だ、なにが目的なんだ?

 白衣の男が向き直り俺たちを見る。顔が見えないのに男の視線ははっきりと分かる。

「セブンスソード。まさかそうまでしてグレゴリウスの幻影を求めるとはな」

 グレゴリウス。それを知っているということは関係者か? だが団員なら団長なり敬称をつけるはず。呼び捨てにするということは団員ではないということか。半蔵はなにか知っている風ではあったが。

「質問に答えてくれないか。あんたは何者で、目的はなんだ。管理人を倒してくれたことに感謝はするがなぜ殺した」

 この男がまだ味方なのか敵なのか分からない。敵である管理人を倒してくれたのはありがたいが素直には喜べなかった。

 この男から漂う存在感に気が抜けない。警戒心が全身の肌を刺激されるように反応している。

 この男は、おそらく敵だ。

「君たちは生まれていいものではなかった」

 男の両手に再び光の剣が握られる。両手をぶら下げているが戦意が突き刺さる。

 俺たちは全員スパーダを構え直した。

「十一番目の剣は不要だ。君たちには消えてもらう」
「けっきょくこれかよ」

 星都がぼやく。だが愚痴を言ったところで仕方がない。

「聖治君」

 香織が不安そうに俺を見る。俺だってこんな展開になるなんて予想だにしていなかった。まさか管理人二人を瞬殺する相手と戦うことになるなんて。

 だけど、戦うしかないんだ。

「みんな、気をつけろ! 強いぞ」
「見てたよアホンダラ」

 軽口を叩く星都だがその声は明らかに緊張している。星都だけじゃない、ここにいる全員が新たな敵に緊張していた。

「では、終わりにしよう」

 男の姿が消えた?

「ちぃ!」

 そう思うと同時、星都が俺の前に立っていた。その前には白衣の男がおりエンデュラスと光の剣をぶつけ合っている。

「星都!」
「気ぃ抜いてんな相棒!」

 二人でつばぜり合いをしているが男はもう片方の剣を振り上げる。

 その剣は大剣へと変形し星都へと攻撃した。

「させないんだぁ!」

 それを防いだのは力也だった。グランの大剣で男の攻撃を防ぐ。だがグランを以てしても押し返せないのか力也は険しそうな顔をしている。

 そこへ日向ちゃんが駆けつけた。星都と力也の間、地面を蹴って力也の肩に手を置くとミリオットの剣先を男に突き刺す。

 だが男はそのままの姿勢で後退しミリオットをかわす。日向ちゃんは着地するがまだ終わっていない。むしろここから。

「ミリオットォオ!」

 聖剣の輝きが男を襲う。一条の光が宙を突き進む。

 が、男も片腕を日向ちゃんに向けると光の線を放った。

 ミリオットの光と男の光が激突する。その力は拮抗し二人の中間で弾かれミリオットは男の背後にある売店を、男の光は俺たちの背後にある外灯を破壊していった。

「なんだよこの強さは!」

 星都が叫ぶ。

 光を扱う白衣の男。速い。力もある。そして放出もできるなんて。光を自在に操っている。隙がなさ過ぎる。

「聖治君、おかしいわ」
「香織?」

 おかしい? いったいなんのことだ?

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品