セブンスソード

奏せいや

144

 ロハネスは両腕を広げた。この儀式の意義を示すように。いや、この儀式の完成によって起こる奇跡を崇めるように。

 剣聖、グレゴリウスの復活。

「セブンスソード。それがこの儀式の正体ってわけか」

 俺たちの知らない、セブンスソードの真の狙いだった。

「その通り。お利口だな、なら正解のご褒美に」

 ロハネスが広げていた両腕をそのままに背後にいくつもの槍を出現させた。何本もの矛先が俺たちを狙っている。

「苦しまずに殺してやる」

 顔が邪悪に歪む。俺たちもスパーダを出す。

「肉体も心も一つにならなきゃ意味がねえ。それを拒むというのな、お前たちに用はない」

 ロハネスと同じく半蔵も武器を出す。両手に現れる投擲用のナイフが指の間に挟まっている。

「お前たちは処分し、スパーダを回収させてもらう」
「すまないが、これも我らの未来のためだ」

 二人からわき上がる敵意と戦意。どちらもすさまじい。

 だが、俺たちは退かない。これが最後の戦いだ。俺たちの自由と未来を取り返すために。

 俺は、パーシヴァルを二人に向ける。

「みんな気をつけろ。くるぞ!」
「勝ちましょう。この戦いを制して、すべてを終わらせるために!」
「おうよ。知らない誰かのために、俺の命もダチの命もくれてやるかよ」
「友達と一緒にいることを奪うなら、僕も容赦しないんだな」
「私だって、本気でいくからね!」
「殺す。恨みっこはなしよ」

 俺たちはそれぞれのスパーダを手に二人と対峙する。

 その時だった。

「その必要はない」

 この場に声が掛けられる。男の声だ。それは俺たちでもなければロハネスでも半蔵のものでもなかい。

 管理人の背後。道路の上に白衣の姿が立っていた。

 ロングコートにフードを被ったその姿は魔卿騎士団と似ているがデザインが違う。なにより全身が白い。真っ直ぐと立ったその姿は凛としており立ち姿だけでも強いのが分かる。夜中となりさらにセブンスソードの影響で人がいないこの場所の静けさの中にあってもその姿は際立っていた。

「誰だ、お前」

 ロハネスが振り返る。顔を半分だけ白衣の男に向け怪しんでいる。

 魔卿騎士団の者じゃない? 色が違うのもあるがしかし、ロハネスが知らないならこの男はなんなんだ? それにセブンスソードで戦闘が起きる時周りの人は消えるんじゃないのか? なぜこの男はこの場に現れた?

 突然のことに混乱するが、白衣の男の両手に突如光の剣が現れた。

「なに?」

 ロハネスの目が鋭くなる。

 それはやや黄色かかっていて固形の物質ではなかった。本当に光を型に入れ固めたような、そんな剣だ。

 男の行動に対してロハネスの判断は早かった。

 男が剣を出すのと同時、ロハネスは浮かせていた槍を手に取り投げつけたのだ。

 しかし、その槍が白衣姿に当たる直前、今度は男の前に光の盾が現れ槍を防いでいた。

「その力……、まさか」

 次の瞬間、ロハネスの足下が光り出す。そこから光がいくつも伸びるとロハネスを縛り付けた。まるで綱のような太さで全身を固定されている。

「ぐ!」

 動けない。まるで鋼鉄で縛られたようだ。

 だがそのままで終わる魔卿騎士団の管理人じゃない。ロハネスは姿を消すと別の場所に転移していた。槍を出したり消したりできるように自身を空間転移したのか。

 ロハネスは空中に現れる。

「なに!?」

 だが、そこには白衣の男もいた。

 速すぎて見えなかった。ロハネスが現れると同時に白衣の男も移動し空中にいるロハネスの背後を取っていたのだ。そして出てきたばかりのロハネスの背中を突き刺した。

「がああ!」

 二人が地面に着地する。ロハネスはうつ伏せに倒れ白衣の男だけが両足で立っている。

 そこを半蔵のナイフが狙っていた。

 前後左右、十本ものナイフが投げられる。相手の隙を空かさず突くナイフの投擲が迫る。
 が、それらは全部十個もの光の盾によって防がれていた。

「その力、やはり」

 半蔵は再びナイフを出現させると投げつける。両手で投げた八本ものナイフは白衣の男に迫る時にはその数を爆発的に上げていた。

 なんて数だ。百? 二百? 分からない。白衣の男の周囲を埋め尽くすほどの膨大な数。空間を蹂躙するような投げナイフの数だ。しかもその出現位置もバラバラで白衣姿の至近距離からいきなり現れたのもあった。

 これでは防げないし逃げる隙間もない。

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