セブンスソード

奏せいや

139

 此方は怪訝な顔をしている。

「よし、退いてろ相棒。俺が見本を見せてやる」
「ううん、皆森君も静かにしてて。私が話すわ」
「なにぃ!?」
「従おうぜ星都、女の子同士だ」
「んだよくそ」

 俺は星都の肩を叩き香織に交渉役を譲る。

「はじめまして。ただ今紹介に預かった沙城香織っていいます。まずは私たちを信じてくれてありがとう。仲間になってくれて嬉しいな」
「別に。まだ仲間として信用したわけじゃないわよ。ただ様子見なだけ」
「え、そうなの?」

 香織が俺を見てくる。自然と目を逸らす。

「そっか……」

 そんな顔しないでくれ、俺だって頑張ったんだ。

「お姉ちゃ~ん」
「うるさい」

 日向ちゃんは優しいからな、同情してくれているがそれに比べて姉の方は。

「ううん。それで十分。こうして話ができれば私たちのこと分かってもらえるだろうし、信用してもらうのはその後でも遅くない。戦いになるよりよっぽどましだよ」
「それは」

 香織の言う通りだ、二人だって戦いはしたくないし同じ思いのはずだ。

「私たちだって戦いはしたくない。その気持ちが同じなら私たちは仲間になれる。そうでしょう?」

 此方の疑いを晴らすように香織は笑ってそう言った。

「お姉ちゃ~ん、沙城さんの方が大人じゃな~い?」
「うるさい」
「そうだそうだ」
「ああ?」

 賛同したら睨まれた。

「あの、自己紹介が遅くなってすみません。私は安神日向っていいます。それでお姉ちゃんの此方。私たちもセブンスソードで殺し合うなんて大っ嫌いだったんで、沙城さんみたいな人たちがいてうれしいです」
「うん。私もだよ。よろしくね、日向ちゃん」
「はい!」

 日向ちゃんは素直な性格もあって明るく返事をしている。新しい仲間ができて喜んでいる。

「ふぅー。分かったわ。確かに視野を狭めて可能性を切り捨てるのが賢い方法とは言えないし」
「お」

 俺の台詞を覚えていてくれたのか。

「安神此方よ。疑って悪かったわね。セブンスソードから逃げ出すためだっていうなら、私たちも協力するわ」
「うん、よろしくね」

 そう言うと此方から手を差し出し香織はその手を握った。二人の間で握手が交わされ晴れて仲間になったわけだ。

「ふふふ」

 香織は笑っている。本当に嬉しいようでかなりニコニコだ。

「上機嫌だな」

 仲間が出来たのは喜ばしいことだが香織の場合それ以上に嬉しそうだ。

「だって、ようやく女の子の友達が出来たんだもん」

 そういえば香織以外は男だけだからな。

「んだよ、俺たちじゃ駄目だってか?」
「皆森君たちが駄目ってわけじゃないけどさ、やっぱり女の子の友達だって欲しいもん」

 まあ、そりゃそうだよな。同性の友達だって欲しい気持ちは俺にも分かる。

「そうは言っても香織は会うの初めてだろ? 最初は緊張したりするんじゃないか?」
「そんなことないよね?」
「そんなことないですよね?」
「ねー」
「ねー」
「……早くないか?」

 香織と日向ちゃんだからなのか、すげーな。

 香織は此方も交え三人で話をしている。日向ちゃんとはもうすっかり打ち解けている。此方はまだ若干固いがそれもいずれ解けていくだろう。

 なんだか、感慨深い場面だ。香織。星都。力也。此方。日向ちゃん。みんなが仲間になることを目指していくつも遠回りしてきたが、それがようやく叶ったんだ。それを思うと見ていて胸が熱くなる。

「…………」

 今までの失敗は、無駄じゃなかったんだな。

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