セブンスソード
131
「俺のこと、分かるのか?」
俺が転校生だった時、彼女は俺のことは分からなかったはずだ。
香織は俺を見ている。でもその目は不安そうというか、なにかを躊躇っているように見えた。
「あの」
彼女が、俺に話しかける。
「聖治君は、覚えてる? 前の世界のこと」
「え」
胸が、震えた。
「前の世界って……」
その言葉は。それを知っているってことは。
「香織は、覚えてるのか?」
質問すると、香織は俺の両手を握ってくる。そして、強い言葉で言ってきた。
「覚えてるよ。前の世界のことだけじゃない。ぜんぶ!」
彼女に強く手を握られる。香織は顔を下に向けて、声は涙声に変わっていた。
「ごめんね、聖治君。君がどれだけ苦しんで、とても悩んでいたのに。たった一人で君は頑張っていた。それなのに私は」
彼女が話す度、胸が熱くなる。
いつしか、俺の目にも涙が溜まっていた。
「ごめんね、聖治君。ごめんね。聖治君は、私のために頑張っていたのに」
彼女が、涙を流している。俺のために。
俺も泣いていた。涙が頬を伝っていく。
「香織も、覚えてるのか? 前の世界のことも?」
「うん」
ずっと、一人だと思っていた。
「何度も、繰り返していることも?」
「うん」
ずっと、理解されないと思っていた。
この旅を、ずっと一人で続けていくしかないと思っていたんだ。
だけど、この世界では違う。俺は一人じゃない。彼女も覚えている、この世界にたどり着いたんだ。
「ごめん。ごめん香織! 俺は、君や、みんなにひどいことを」
俺は泣きながら謝る。前の世界の過ちを。それは本当なら取り返しのつかないことだ。
「ううん、いいんだよ。もう、聖治君は自分を責めなくてもいい」
「う、うう」
だけど、彼女は許してくれた。
「一人で、苦しまなくていいんだよ」
今度は、彼女も一緒にいる。もう、一人じゃないんだ。
俺は、大声で泣いた。
ずっと辛かった。ずっと苦しかった。それでも彼女を助けるんだって、俺が頑張らなくちゃ駄目だって、一人で頑張ってきたけど、本当は苦しかった。誰にも理解されないことが辛かった。
でも、この世界には彼女がいる。
それが嬉しくて、嬉しいという感情が爆発している。嬉しいという感情でこんなにも泣けるんだと初めて知った。
「聖治君」
彼女に呼ばれ顔を上げる。目にはまだ涙が溜まっていたが、見れば彼女も目が赤く腫れていた。目の端に溜まった涙がきらきらと輝いている。
香織は俺を見ながら、小さく笑っていた。
「今度は、一緒に戦おう。約束したでしょう、いつも一緒だって」
俺は泣いた。全身の水分を涙に変えるぐらいの勢いで泣いていた。
香織が覚えていてくれた。俺は一人じゃない。もう、誰にも理解されなくて、誰にも知られない、そんな寂しさを感じなくていい。ひとりぼっちの旅をしなくていいんだ。覚えていてくれる人がいる。それだけで、地獄から救われたような気持ちだったんだ。
俺は泣いた。それも次第に収まって、俺は鼻をすすり涙を拭いていた。まだ目の奥が熱いが見れば香織も目を赤くしている。そんな互いの顔を見合い、俺たちは小さく笑い合う。
そこへ星都が気まずそうに話しかけてきた。
「あー……なるほど。よく分からんが二人は知り合いだったみたいだな。それならそうと教えておいてくれよな。呼び出すとき警戒されたじゃねえか」
「うん、ごめんね。まだ確証が持てなかったから」
「あん? 知り合いなんだろ? なら連絡取り合ってたんじゃねえのか?」
「はは。ちょっと複雑でな」
「?」
星都や力也からすればちんぷんかんぷんだろうな。それも仕方がないが。覚えているのは香織だけのようだし。
「その、一応確認するが、星都や力也は俺と初対面なんだよな?」
「はあ? 当たり前だろ」
「うん。僕たち、今日が初めて会うんだなぁ」
そうだよな。星都や力也も覚えていてくれたら嬉しかったがそんな贅沢は言っていられない。香織だけでも十分僥倖(ぎょうこう)だ。
俺が転校生だった時、彼女は俺のことは分からなかったはずだ。
香織は俺を見ている。でもその目は不安そうというか、なにかを躊躇っているように見えた。
「あの」
彼女が、俺に話しかける。
「聖治君は、覚えてる? 前の世界のこと」
「え」
胸が、震えた。
「前の世界って……」
その言葉は。それを知っているってことは。
「香織は、覚えてるのか?」
質問すると、香織は俺の両手を握ってくる。そして、強い言葉で言ってきた。
「覚えてるよ。前の世界のことだけじゃない。ぜんぶ!」
彼女に強く手を握られる。香織は顔を下に向けて、声は涙声に変わっていた。
「ごめんね、聖治君。君がどれだけ苦しんで、とても悩んでいたのに。たった一人で君は頑張っていた。それなのに私は」
彼女が話す度、胸が熱くなる。
いつしか、俺の目にも涙が溜まっていた。
「ごめんね、聖治君。ごめんね。聖治君は、私のために頑張っていたのに」
彼女が、涙を流している。俺のために。
俺も泣いていた。涙が頬を伝っていく。
「香織も、覚えてるのか? 前の世界のことも?」
「うん」
ずっと、一人だと思っていた。
「何度も、繰り返していることも?」
「うん」
ずっと、理解されないと思っていた。
この旅を、ずっと一人で続けていくしかないと思っていたんだ。
だけど、この世界では違う。俺は一人じゃない。彼女も覚えている、この世界にたどり着いたんだ。
「ごめん。ごめん香織! 俺は、君や、みんなにひどいことを」
俺は泣きながら謝る。前の世界の過ちを。それは本当なら取り返しのつかないことだ。
「ううん、いいんだよ。もう、聖治君は自分を責めなくてもいい」
「う、うう」
だけど、彼女は許してくれた。
「一人で、苦しまなくていいんだよ」
今度は、彼女も一緒にいる。もう、一人じゃないんだ。
俺は、大声で泣いた。
ずっと辛かった。ずっと苦しかった。それでも彼女を助けるんだって、俺が頑張らなくちゃ駄目だって、一人で頑張ってきたけど、本当は苦しかった。誰にも理解されないことが辛かった。
でも、この世界には彼女がいる。
それが嬉しくて、嬉しいという感情が爆発している。嬉しいという感情でこんなにも泣けるんだと初めて知った。
「聖治君」
彼女に呼ばれ顔を上げる。目にはまだ涙が溜まっていたが、見れば彼女も目が赤く腫れていた。目の端に溜まった涙がきらきらと輝いている。
香織は俺を見ながら、小さく笑っていた。
「今度は、一緒に戦おう。約束したでしょう、いつも一緒だって」
俺は泣いた。全身の水分を涙に変えるぐらいの勢いで泣いていた。
香織が覚えていてくれた。俺は一人じゃない。もう、誰にも理解されなくて、誰にも知られない、そんな寂しさを感じなくていい。ひとりぼっちの旅をしなくていいんだ。覚えていてくれる人がいる。それだけで、地獄から救われたような気持ちだったんだ。
俺は泣いた。それも次第に収まって、俺は鼻をすすり涙を拭いていた。まだ目の奥が熱いが見れば香織も目を赤くしている。そんな互いの顔を見合い、俺たちは小さく笑い合う。
そこへ星都が気まずそうに話しかけてきた。
「あー……なるほど。よく分からんが二人は知り合いだったみたいだな。それならそうと教えておいてくれよな。呼び出すとき警戒されたじゃねえか」
「うん、ごめんね。まだ確証が持てなかったから」
「あん? 知り合いなんだろ? なら連絡取り合ってたんじゃねえのか?」
「はは。ちょっと複雑でな」
「?」
星都や力也からすればちんぷんかんぷんだろうな。それも仕方がないが。覚えているのは香織だけのようだし。
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