セブンスソード

奏せいや

126

 瞬間、激痛が腕を走った。

「がああああ!」

 カリギュラの能力は吸収。それを他者ではなく己に使い、奪った力でさらにカリギュラの能力を強化する。

 黒い霧はさらに勢いを増し、その暴虐を発揮していた。

 ひび割れた地面は風化しへし折れていた木々は枯れた。生命だけじゃなく形あるものを終焉へ導いていく。

 それは力也の重力操作も例外ではなく、効力を失い徐々にだが重力が元に戻っていく。

「ぐううう!」

 痛い。カリギュラが太い針のように侵入してくる。

 ミリオットで強化しているが、それでも先に自分の生命力が枯渇しそうだ。

 他者だけでなく、己すら殺す魔剣。

 カリギュラを融合した手はもう人のものではなくなっていた。全体が黒く、指は鉤爪となり腕全体が凶悪な異形のものにでもなったかのようだ。

 でも、それでもいい。目の前の敵を倒せるなら。彼女を救えるのなら。

 戦い続けるって、誓ったんだ!

 力也が質量と重力を上げ世界を破壊してきて、俺は減衰と強化でその勢いを押さえ込む。互いの能力がせめぎ合う。

「うおお!」
「ウオオ!」

 そして、同時に走り出した。

 力也がグランを片手で振りかぶる。踏み出した一歩が大地を砕き、大振りの一撃が空気を振るわせる。

 小さな巨人。そう錯覚する。

 その巨体へ、紅白のスパーダを振った。

 衝突する緑と赤と白。三色の激突は互角だ。負けてなるものかと俺と力也も力を込める。

 負けられない。ここで負けたら、

『聖治』

 ここで負けたら、

『聖治さん』

 ここで負けたら、

『相棒』

 俺はなんのために、みんなを犠牲にしたんだ!

 負けられないんだよぉおお!

「がああ!」

 力也が悲鳴を上げる。膝を付き背後を見る。

 そこにはパーシヴァルが突き刺さっていた。この間に遠隔操作で突き刺したんだ。

「うおおおお!」

 すぐさにカリギュラとミリオットを振りかぶる。両腕を上げ、力也を見下ろす。

 力也が俺を睨み上げる。でもそんなの関係ない。卑怯だろうがなんだろうが、負けられないんだ。

 覚悟はもう決めた。後戻りなんてできない。

 俺はカリギュラとミリオットを振り下ろし、力也の首を断ち切った。赤と白がクロスし、力也がその場に倒れ落ちる。ずどんという重い音を立てながら、力也の巨体は横になっていた。

 倒した。ようやく。この勝負に勝ったんだ。

 重力が元に戻る。

「はあ……はあ……」

 一気に重力から解放されたのと疲労感からもう立っているだけで精一杯だ。足下がふらつく。それを気力でなんとか支えた。カリギュラはすでに止めている。それで浸食するカリギュラは引いていき手も元通りとなっていた。

「く」

 満身創痍だ。額は汗でびっしょりで、カリギュラのせいで精神的にもきつい。風が吹くだけで倒れそうだ。

 それでも。

 俺はパーシヴァルとグランを回収した。ふらつく足取りで歩き出す。

 ようやく、ようやく終わったんだ。

「は、はは」

 苦しい。だけど笑みがこぼれる。

「スパーダが、四本」

 そう、今の俺にはスパーダが四本もある。過半数のスパーダを手に入れたんだ。

「勝てる、これなら」

 もう負けることはない。相手が誰だろうと。

「魔来名にだって」

 俺たちを散々殺してきたあの男にだって。俺は四本もあるんだ、負けるはずがない。実質セブンスソードに勝ったんだ。

「終わった」

 この旅も、ようやく終わる。

「ははは。勝ったんだ」

 ゴールに、たどり着いた。

「セブンスソード」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く