セブンスソード

奏せいや

125

「でぃ、ディンドラン!」

 香織はディンドランを取り出した。それでなんとか重力に耐えているようだが起き上がれない。顔も苦しそうに歪んでいる。

「止めろ力也! 香織まで苦しんでるぞ!」
「コロス!」
「ち!」

 完全に我を失ってる。

 駄目だ、このまま逃げ回っていたら被害が広がるばかりだ。

 俺は立ち止まり地面に足をつく。上空にいる力也を見上げた。

 夜の空に力也の巨体がある。今なら隙だらけだ。そこへパーシヴァルとカリギュラを放ちミリオットに力をため込む。

 黄色と赤の軌跡を残しながら二つのスパーダが力也に襲いかかる。だがそれらは力也の前で壁に当たったように動きを止めると弾かれる。無防備に見えて斥力を防御にも使っているのか。

 間に合え!

「うおおお!」
「ウオオオ!」

 力也が振り下ろすグラン。力を増幅させたミリオットが唸りを挙げる。高重力にも負けない風を巻き起こし光り輝く。

「ミリオットぉおお!」

 溜めに溜めたミリオットの輝き、それを力也に照射した。

「!?」

 極大の光が力也に迫る。力也を飲み込むほどの光線はまたしても力也の斥力に阻まれるが弾かれていない。両者の力が激突している。

 押しつけ合う力と力。その均衡がわずかに崩れる。

「!?」

 ミリオットの光が力也に近づく。力也はすぐにグランを構えた。直後ミリオットの光は斥力を突き破り力也に激突する。グランで防ぎつつも力也は弾かれ地面に激突していった。地面に引っ張られるのをグランを地面に突き刺し勢いを止める。

「はあ、はあ」
「…………」

 距離が離れる。だが俺にはミリオットがあり力也にはグランの引力がある。間合いが開けていても安全ではない。緊張感を張りつめながら俺たちはにらみ合っていた。

「はあ……はあ……」

 強いな。スパーダの数なら俺の方が上だが余裕なんてない。むしろ危機感しかない。

 今の力也はグランの力を完全に使いこなしている。スパーダ三本じゃ足りないくらいだ。

 どうする? どうやって力也を倒す? 

 そうだ、香織は今どうなっているんだ?

 見れば香織はまだ地面に倒れている。力也の重力はここの広場全域を覆っている。もう逃げ場はない。こうしている今だって俺の体も締め付けられるようだ。

 すると力也がグランをかかげた。グランが緑の光を吸い込み始める。

「なんだ?」

 次はなにをするつもりだ。

 グランは光を吸っていく。それと連動して力也の足場がどんどんひび割れていく。重力が上がっているのかとも思ったが違う。

「これは」

 重力が上がってるんじゃない、グランの重さ自体が上がっているんだ。

 質量の増加か? でもそんなの俺の記憶にもない。まさか第七段階の能力?

 質量とはそれだけで力だ。それが上がるということは力がさらに上昇するということ。これ以上力を上げられたら勝ち目がなくなる。

 質量の増加は質量保存の法則から外れている。まさに魔法。いわば物理法則すら超越したもの。

 世界すら破壊する圧倒的な力。

 グランの完全解放。それは無限の力に他ならない。

 だが如何にスパーダを砕いてブーストしているとはいえ第七段階の能力なんて長くは使えないはず。

 決める気か、この勝負を。

 やるしかない。こうしている今だって香織に被害が出ているんだ。もたもたしていたらまた香織を失ってしまう。

 記憶の中にある笑顔が脳裏に浮かぶ。何度も何度も彼女が死ぬ場面に遭遇してきた。

 もう!  二度と! 

「うおおおお!」

 失ってたまるか!

 俺はミリオットとカリギュラの二刀流に持ち替えた。ミリオットで体全体を強化し、さらにカリギュラを発動させる。黒い霧があふれ出しこの場を襲う。

「うう!」

 カリギュラの影響で力也の表情が歪む。だが質量はさらに増している。

 俺はさらにカリギュラのもう一つ上の能力を発動させた。

 カリギュラの柄からツルのようなものが伸び手に絡みつく。それは皮膚と融合し黒い血管のような線が腕に何本も走っていく。

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