セブンスソード

奏せいや

124

 砕かれた魂の欠片が力也に降り注ぐ。それはグランにも当たり、グランが輝き出す。

「うおおおお!」
「なんだ?」

 突然力也の存在感が跳ね上がる。

 なにが起きている? 分からない。今力也がどんな状態なのか。そもそもスパーダを砕くなんてどういうつもりなんだ。

「鉄塊王、グラン。解放」

 力也がグランを突き出す。緑色の光は輝きを増している。

 俺と力也の間にはまだ距離があるが、構わず力也はグランを振り上げた。

「死ね」

 直後、俺の体が力也に吸い寄せられる。

「なに!?」 

 引き寄せられる!? 足が地面から離れ力也へと近づいていく。

 そのまま間合いに入り力也はグランを振り下ろした。俺はミリオットと二つのスパーダ、三本で受け止める。頭上から下ろされた攻撃を受けたことで足が地面につくが、その衝撃に床は砕け全身まで砕けそうだった。

 三本で受け止めるのがやっと。明らかに力が増している。なにより前と違うことがある。

「引力だと!?」

 物体と物体に働く相互作用の一つ。それにより俺を引き寄せた。

 グランは強い。その力は防御の上からでも相手を粉砕できるだけの力がある。でも、間合いの外にいれば安全だった。

 だが引力を手に入れたのなら話は別だ。この危険な破壊領域に引きずり込まれる。安全なんてない。

 俺は押しつけられるグランを横にずらしその隙に反撃に出た。グランの間合いは危ない。だが攻撃が当たるのはこっちも同じ。

 が、攻撃に出る直前、俺の体は吹き飛ばされ力也から離れていく。

「これは!」

 地面に剣を突き刺し停止する。だがこれのせいで間合いが離れてしまった。

 物体と物体で離れようとする相互作用。

「斥力(せきりょく)か?」

 それのせいで俺は力也から引き離された。

「くそ」

 さっきからグランの能力に翻弄される。

 グランが司るのは力。それは重力から段階が上がれば引力、斥力までも扱える。他にもだ。

「まさか」

 さきほど星都のスパーダを砕いたが、それをエネルギーにしてスパーダの段階限界を跳ね上げたのか? 今の力也はスパーダ二本の段階を越えている。そうとしか考えられない。まさかそんな使い方が。

「潰れろ」

 力也が言った後、力也の足場がひび割れた。まるで目に見えない重石を乗せられたように潰れていく。それは力也を中心に広がり俺にまで届いた。

「ぐうう!」

 全身が重い。重圧が体全体にかかる。

 間違いない、重力が上がってる。何倍ものGが襲う。

 引力、斥力、重力。どれも力。グランが扱う領域だ。おまけにグランは重力の影響を受けない。それを使用者にも適用すればこの高G下でも普通に動ける。

 まずい。このままじゃ身動きが取れない。そんな状態の時にグランなんて振るわれたら。

「砕けろォオ!」

 力也の叫びが大地を振るわした。

 力也が空高く跳ぶ。数メートルをその場で跳躍したのだ。

 俺の足場だけ重力を上げ自分の場所は無重力にしたのか。重力から解放されれば空高く跳ぶこともできる。

 そのまま高重力である俺の頭上に達したことで急降下してくる。

「くそ!」

 受け止められない。俺は急いでその場から離れた。

 直後、隕石でも落ちたかのように力也が降りてくる。グランを打ち付け地面が爆発する。

 俺は剣を足場に空中を走る。その後を追って力也が何度も高度から追突してきた。

 力也が地面を砕く度に背中に強風を感じつつ足に全力をかける。かなりきつい。ミリオットで足も強化しているとはいえこの重力の中では加速がままならない。

「ウオオオオ!」

 力也の雄叫びさえも重圧となって体に叩きつけられる。

「ん!?」

 見れば地面に入るひび割れが広がっていく。それは香織まで届いた。

「きゃあ!」
「香織!」

 力也の重力に当てられ立っていられずうつ伏せになる。こんなの生身で受ければ潰れてしまう。

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