セブンスソード

奏せいや

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 それから俺たちはいろいろなコーナーを見て回った。魚と一概に言ってもいろいろいるもので熱帯魚コーナー、イルカコーナー、日向ちゃん激推しのペンギンふれ合いコーナーもあった。柵の中に数羽のペンギンがよちよちと歩いており飼育員の案内のもとペンギンに触ったりしている。

 俺たちは柵の外から眺めている。ただ、どのペンギンも疲れているのかあまり動こうとはしていない。

「なんか元気ないわね」
「そりゃこれだけの数だぞ、塩対応にもなるだろ。俺の言ったとおりだ」
「はいはい」

 此方がちょっとだけ笑っている。

「触っていくか?」
「ううん。すぐ触れるなら触ってもみたいけど、これだけの列並ぶのもあれだし。それにペンギンの気持ちを思うとね」
「それもそうだな」

 せっかくのキャンペーンということだが俺たちは遠慮した。此方はペンギンに小さく手を振り俺たちは次のコーナーへと向かう。労働に勤しむペンギンには人間社会の洗礼は酷だろうが今日は特においしい魚を食べて欲しい。

「そういえばもういい時間だよな。此方は昼食まだだろ? お腹空いてないか?」
「そうだね、なにか食べよっか」

 いったんコースを外れ水族館内にあるレストランに入る。天井には魚やクジラなんかのぬいぐるみが吊されており家族連れの子供たちがはしゃいでいる。俺たちはそこでハンバーグを頼んだ。ライスがイルカに形取られていて可愛らしい盛りつけだ。

「此方はたい焼きは頭としっぽどっちから食べる?」
「これを見てそれを聞く?」
「いやなんとなく」

 俺たちは昼食を終えレストランを後にする。なかなかにおいしかった。水族館内にあるレストランということでいろいろ凝っていたな。

 その後俺たちはイルカショーを見たりクジラの骨の模型なんかを見たりした。中には深海魚コーナーもありイラストで紹介されている下にはその魚の骨の標本が飾ってあった。なかなかお目にかかることのない深海魚だがどれもユニークな姿をしている。なんというかグロテスクな形が多くないか、深海魚って。

「深海魚って変な形してるのが多いよな」
「環境がぜんぜん違うもんね。光は届かないし水圧は重く水は冷たい。環境が違えば姿形も変わるってことね」
「進化というシステムが多様性に富んでいて優れているってことか。逆にさ、仮に神がいたとするじゃんか。そうだとしたらよく深海魚なんてデザインしたなって尊敬するわ」
「ふふ。確かにね」
「すごくないか? こんなんデザインしろとか言われてもできねえよ」

 俺たちは深海魚コーナーを出る。それですべてを見終わり俺たちは水族館を出た。時刻はもう夕方だ。海の向こう側がうっすらと茜色に染まっている。

 水族館はもうおしまいだ。このまま帰ってもいいんだが、水戸水族館の隣には小さな遊園地も併設されておりそこには観覧車がある。せっかくなんだ、帰りが遅くなってはいけないが少しくらいはいいだろう。

「なあ此方、せっかくだし観覧車乗っていかないか?」
「うん、そうだね」

 俺たちは観覧車のチケットを購入しゴンドラに乗り込む。ゆっくりとゴンドラが回り高度を上げていく。見える町の景色がどんどん広がって、見える建物がどんどん小さくなっていく。海の向こうから夕日の強い光が世界を染めていた。

「きれいだな」
「うん」

 海が輝いている。夕日を反射させキラキラとしていた。

 俺は此方と向かい合わせに座っており、一緒に窓から景色を見渡している。

「今日はありがとうね」
「え?」

 此方は窓から顔を俺に向ける。

「なんか、わがままにつき合ってもらっちゃったから」
「ううん、いいさ。楽しかったしさ」
「ほんと?」
「ほんとだよ、俺が笑ってるの見てなかったのか?」
「うん。見てた」
「だろ?」

 そう言うと再び俺たちは窓へ視線を向ける。会話が終わり希少な光景を目に焼き付けていく。

 あれだけ広かった水戸水族館の屋根が見える。入る時の行列はなくなり帰る人の数が目立つ。町に目を向ければ新都のビル群があり、さらにその先には山脈が広がっていた。俺たちはじっと町を眺め続ける。

「なんていうか、すごい偶然だよね」
「ん?」

 彼女のつぶやきに振り返る。

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