セブンスソード

奏せいや

103

「くっ!」

 涙を流して追及してくる此方の表情。みんなを守ろうとして、結局多くを失った。恋人も、友人も、守ると誓った約束ですら。

 俺は、守れなかった。

「軽々しく口にするな。お前の覚悟などただの逃避だ。願望に縋っているに過ぎん」

 そう言って魔来名は居合いの構えを取る。さらに天黒魔に魔力が集中していく。魔来名を中心に風が起こり空気が重くなる。

「俺は違う」

 力が、放たれようとしている。

「守ると決めた」
「止めろぉおー!」

 走る。パーシヴァルを振り上げて。駄目だ、駄目だ、止めろおお!

「刹那斬り」

 振り下ろす。しかしそこに魔来名はいなかった。一瞬で姿はなくなり視界から消える。

 聞こえるのは、勢いよく吹き出す水音。ほとんど同時に倒れる人の物音。

 ゆっくりと振り返る。そこに広がる惨状に、心が停止する。

「香織」

 彼女はうつ伏せに倒れていた。胴体から広がっていく赤い水たまりが桃色の髪を染めていく。
 彼女だけじゃない。

「星都」

 みんな。

「力也」

 みんな。

「日向ちゃん」

 みんな。

「此方」

 みんな、血を流して倒れている。誰も起き上がらない。悲鳴すら聞こえない。

 みんな、殺されていた。

「う、あ、あああああ!」

 失ったものが多すぎて、駆け寄ることも出来ない。抱きしめることも出来ない。その場で泣き叫ぶ。

「これが覚悟だ」

 そんな俺を無視して魔来名が話す。天黒魔を納刀し振り返る。

「覚悟を決めた者と、そうでない者の差だ」

 みんなの返り血を頬に付けた顔がそこにある。平然として、反省も悪気もない。

 こいつは、平気でみんなを殺した。

「てめえええ!」

 怒りが、爆発する。

「よくもみんなを!」

 また殺された、こいつに。たとえ世界を繰り返してもこいつがいる限りみんなは殺される。

「俺はみんなを守りたかった、みんなと一緒にいたかった、それだけだった!」

 悔しくて、悔しくて、涙が止まらない。

「なのにお前は殺した。お前は、絶対に許さない!」

 体が熱いくらい叫んでいる。怒りがすべてを燃やしそうだ。

「聞け。お前に話がある」
「黙れ! お前と話すことなどなにもない!」

 みんなを殺したやつとなにを話す? なにもない。すべきことは一つだけだ。

「これはセブンスソードだ。力を得るためには殺すしかない。それはお前も分かっているはずだ。頭を冷やせ」

 ふざけるな、ふざけるな。

 怒りが決意に変わる。覚悟が殺意に変わる。絶対に譲れない思いとなって俺を支配する。

「聞け。お前にも関係することだ」
「黙れぇえ!」

 俺はパーシヴァルを翳す。みんなは死んだ。その魂は二つ回収している。

「ちっ」

 魔来名が動く。だが遅い。

 パーシヴァルの第三段階の能力を発動する。刀身から光が迸りこの場を覆い、世界を書き換えていく。

 それでも変わらない。

 俺の思い。俺の決意。

 この出来事だけは。

 絶対に!

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