セブンスソード

奏せいや

91

 あの野郎。そういえばそうだ。最初の世界であの槍男は俺を殺そうとしてきた。その時は香織に助けられたから無事だったし、二度目の世界では香織を殺そうとしてきたのを俺が守った。

 じゃあこの世界では? あいつは力也を殺そうとした。そんな力也を誰が守れる?

 結果、力也が殺された。セブンスソードが脅しじゃないと見せしめるために。あいつがいきなり襲ってきたのは不真面目だとか野蛮とかじゃなくてそういう理由だったのか。

 はじめから、一人は捨て駒だったんだ。

「そんな……」

 あいつの顔が浮かぶ。呑気でおっとりした性格だったけど、仲間思いのやつだった。とても優しいやつだったのに。

「力也が……」

 親友の訃報(ふほう)に胸が沈んでいく。

 けっきょく、この世界でも失敗していたんだ。みんなで生き抜くという俺の目的は俺の知らない間に終わっていた。俺は、またもあいつを救えなかったのか。

 失敗した。この世界は失敗した。ならやり直すべきだ。俺は一瞬パーシヴァルのことが過ぎるが、

「ち」

 駄目だ。世界をやり直すにはスパーダが三本は必要だ。俺はまだ一本しか持っていない。

「俺たちにはもう、選択肢なんてないんだよ」
「星都?」

 顔を上げる。そこには、スパーダを握った星都がいる。

「期限は一週間。それを過ぎれば全員殺される。その前に、決着付けなくちゃ駄目なんだよ」
「星都、待て!」

 待て、うそだろ。

「確かに期限は一週間だしそれを過ぎれば管理人が動き出す。でも! だからといって参加するなんて馬鹿げてる。そんなことしてなんになるんだよ。そんなことよりも協力すべきだ。それでみんなで生き残るんだよ」
「みんなってなんだよ! 力也はもういないんだぞ!」
「それは……」

 その言葉にうなだれそうになる。力也はもういない。俺の中にあるみんなで生き延びるという目標はすでに失敗しているんだ。

「なんでお前が俺たちのことを知っているのか、そんなのはどうでもいい。俺たちだってお前らの居場所を管理人に聞いたんだからな。救われるのは一人だけ。もう、それしかないだ!」

 星都は覚悟を決めている。力也が殺されたことで。それしか道がないと思っている。

「香織は? 香織も同じ考えなのか?」

 彼女はどうなんだ? 自分たちが助かるためだとしても他人を犠牲にするなんて、そんなことを思うような人じゃない。

「俺はお前たちと戦う気なんてない。本当だ!」

 香織は俯いている。だがその顔を上げると隣に立つ星都を見る。

「ねえ皆森君、やっぱりこんなこと止めようよ。殺し合うなんて、そんなことするなんて駄目だよ」
「香織」

 彼女の言葉にホッとする。やっぱり香織は香織だ。殺し合うなんてこと望むはずがない。

「黙ってろ!」
「星都!」

 なのに、星都は香織を怒鳴りつけた。

「お前は力也の犠牲を無駄にする気かよ!?」
「それは……」

 星都に強く言われ香織の顔が下がる。

 力也の死。星都と力也は親友だ。それは俺が一番知っている。その力也が殺されたことで星都は冷静さを失っている。

 親友の死。生き残りを賭けたセブンスソードの舞台。そのせいで星都はもういつもの星都ではない。それほどまでに力也の存在は大きかったんだ。

 俺だって力也が亡くなったと聞いて落ち込んでいる。でも星都はきっとそれ以上にショックだ。星都と力也は俺よりも付き合いが長かったから。

 今だって、表情は激高(げっこう)しているがその目は泣きそうなくらいだった。

「あいつは俺たちを庇って死んだんだぞ? なら俺たちのどちらかが生き残らなくちゃならないんだ。それにこいつの言っていることが本当なんて保証がどこにある!?」

 星都に怒鳴られ香織はなにも言えなくなっている。それに香織も力也が殺されたことを思い出しているのか涙を堪えていた。これじゃ星都を止められない。

 駄目だ、このままじゃ本当に戦いになる。

「香織、聞いてくれ。俺のことを覚えてないか? 聖治だよ。前に一緒だったことがあるんだ!」
「?」

 香織は俺を見てくれたがその顔はなにも分かっていないようだ。

「くそ」

 この世界でも覚えていない。星都も覚えていないし、どうすれば。

「やるしかないんだ。抜けよ」
「ちょっと待ってくれ!」
「聖治」

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