セブンスソード
90
上体を起こした日向ちゃんだったがしぶしぶ体を元に戻してくれた。
風邪のこともあるが、万が一のことがある。それに巻き込みたくない。此方も同じらしくなにも言ってこなかった。
「それじゃあ行ってくるよ」
明るくそう言ってドアノブに手をかける。
「聖治さん」
「ん?」
日向ちゃんに呼ばれ振り向く。日向ちゃんは布団に包まりながら、不安そうな目を向けていた。
「いいこと、ですよね?」
心配そうな声。
「もちろん」
それに、俺は笑顔で答える。
俺と此方は部屋を出て玄関へと歩いて行く。
「聖治、どうなの?」
「……分からない」
此方からの質問。日向ちゃんにはああ言ったがその笑顔はすでになくなっている。
この世界の星都と出会うのは初めてだ。いわばこのパターンも初めて。どうなるか確信は持てない。でも、相手は星都だ。ここは信じるしかない。
「やることをやるだけだ。きっと大丈夫。言っただろ、あいつもセブンスソードには反対だった。戦いにはならないさ」
「……うん」
此方は俯き、そう言った。
俺たちはエレベーターを使い一階まで降りる。その間ずっと無言だ。いったいどうなるか、期待と不安に緊張が膨らむ。
でも、そんなことがあるか? あの星都と戦闘になる? 自分でもどうかしてる。そんなことない。あいつはそんなやつじゃない。
あいつにとっても宝物は友人で、そいつらと過ごす日常だって屋上で言ってくれたじゃないか。殺し合うなんて馬鹿げてる。
「大丈夫」
エレベーターが一階に着いたと同時、俺はつぶやいていた。
「星都なら仲間になってくれるよ」
俺は此方を見ると互いに頷き、マンションの外に出る。マンションの前は塗装された地面が広がるちょっとした広場になっており木も数本植えられている。地面は白いが夕焼けに染まり始めている町ではオレンジと影が大きく伸びている。
そんな明暗とした場所の中央に、星都と香織は立っていた。
「星都! 香織も一緒だったのか」
この世界に来てから初めて会う。やっぱり会えると嬉しい。それにインターホンには映っていなかったが香織も来ていたのか。
俺はつい呼んでしまうが、しかし二人の雰囲気は重苦しい。星都は俺たちを警戒しているのが分かるし香織は伏し目がちだ。
「? なんで俺たちのことを知ってるんだ?」
「あ、その」
当然星都が聞き返してくる。それにやっぱり警戒しているからか声にも若干トゲがある。仲の良かった友人からそう言われるとけっこう辛い。
「話すと長くなるんだが、とりあえず会えてよかった。無事でなによりだよ」
「無事じゃねえよ」
「え?」
星都が俺をにらみ付ける。その怒りをぶつけるような目に押される。
「どういうことだよ。そういえば力也はどこだ? 一緒じゃないのか?」
二人がいて力也がいないっていうのはどうしてだ? この世界じゃ一緒じゃないのか?
「ん」
すると俯いて香織が声を漏らした。もしかして泣いているのか?
「まさか」
うそだろ。もしかして。
「あいつなら死んだよ」
「!?」
瞬間、体が固まる。力也が、死んだ?
「そんな!? どうして?」
なんで!? まさかもうセブンスソードで衝突があったのか? でも俺たちは戦っていない。ということは魔来名がやったのか? あいつはセブンスソードに積極的だった。この世界でもあいつに?
「お前もスパーダなら知ってるんだろ? 魔卿騎士団の管理人だよ。あいつが、いきなり襲ってきたんだ」
そう言うと星都は顔を下げた。悔しそうに拳を握って、今にも泣き出しそうだった。
「殺されたんだよ! 槍を使うやつに、見せしめだとか言って。殺し合わなきゃ殺してやるってな」
「くそ!」
そういうことか!
風邪のこともあるが、万が一のことがある。それに巻き込みたくない。此方も同じらしくなにも言ってこなかった。
「それじゃあ行ってくるよ」
明るくそう言ってドアノブに手をかける。
「聖治さん」
「ん?」
日向ちゃんに呼ばれ振り向く。日向ちゃんは布団に包まりながら、不安そうな目を向けていた。
「いいこと、ですよね?」
心配そうな声。
「もちろん」
それに、俺は笑顔で答える。
俺と此方は部屋を出て玄関へと歩いて行く。
「聖治、どうなの?」
「……分からない」
此方からの質問。日向ちゃんにはああ言ったがその笑顔はすでになくなっている。
この世界の星都と出会うのは初めてだ。いわばこのパターンも初めて。どうなるか確信は持てない。でも、相手は星都だ。ここは信じるしかない。
「やることをやるだけだ。きっと大丈夫。言っただろ、あいつもセブンスソードには反対だった。戦いにはならないさ」
「……うん」
此方は俯き、そう言った。
俺たちはエレベーターを使い一階まで降りる。その間ずっと無言だ。いったいどうなるか、期待と不安に緊張が膨らむ。
でも、そんなことがあるか? あの星都と戦闘になる? 自分でもどうかしてる。そんなことない。あいつはそんなやつじゃない。
あいつにとっても宝物は友人で、そいつらと過ごす日常だって屋上で言ってくれたじゃないか。殺し合うなんて馬鹿げてる。
「大丈夫」
エレベーターが一階に着いたと同時、俺はつぶやいていた。
「星都なら仲間になってくれるよ」
俺は此方を見ると互いに頷き、マンションの外に出る。マンションの前は塗装された地面が広がるちょっとした広場になっており木も数本植えられている。地面は白いが夕焼けに染まり始めている町ではオレンジと影が大きく伸びている。
そんな明暗とした場所の中央に、星都と香織は立っていた。
「星都! 香織も一緒だったのか」
この世界に来てから初めて会う。やっぱり会えると嬉しい。それにインターホンには映っていなかったが香織も来ていたのか。
俺はつい呼んでしまうが、しかし二人の雰囲気は重苦しい。星都は俺たちを警戒しているのが分かるし香織は伏し目がちだ。
「? なんで俺たちのことを知ってるんだ?」
「あ、その」
当然星都が聞き返してくる。それにやっぱり警戒しているからか声にも若干トゲがある。仲の良かった友人からそう言われるとけっこう辛い。
「話すと長くなるんだが、とりあえず会えてよかった。無事でなによりだよ」
「無事じゃねえよ」
「え?」
星都が俺をにらみ付ける。その怒りをぶつけるような目に押される。
「どういうことだよ。そういえば力也はどこだ? 一緒じゃないのか?」
二人がいて力也がいないっていうのはどうしてだ? この世界じゃ一緒じゃないのか?
「ん」
すると俯いて香織が声を漏らした。もしかして泣いているのか?
「まさか」
うそだろ。もしかして。
「あいつなら死んだよ」
「!?」
瞬間、体が固まる。力也が、死んだ?
「そんな!? どうして?」
なんで!? まさかもうセブンスソードで衝突があったのか? でも俺たちは戦っていない。ということは魔来名がやったのか? あいつはセブンスソードに積極的だった。この世界でもあいつに?
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そう言うと星都は顔を下げた。悔しそうに拳を握って、今にも泣き出しそうだった。
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「くそ!」
そういうことか!
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