セブンスソード

奏せいや

84

 それから俺たちはベッドの上でたわいもない話に花を咲かせては笑い合った。

 セブンスソードはまだ終わっていない。脅威はなくなっていない。なのに俺は笑ってる。

「そうそう。それでそのラーメン屋のエベレスト盛りっていうのがヤバくてさ、日向ちゃんだと食べ終わるのに一日かかるんじゃないか?」
「え~そんなに~?」

 久しぶりだった、こんな感覚。

 それで思い出す。俺は、こんな生活を取り戻したくて、守りたくて。

 だから、絶対にみんなで生き延びるんだ。

 セブンスソードなんていう、最悪の儀式から。



 それから夜が明けて俺は目を覚ましていた。まぶたが重い。まだ眠くて俺は盛大なあくびをしていた。

「ふぁ~あ」

 まるで猫みたいな大きなあくびだ。

「ん?」

 と、体に当たる感触に俺は下を向いてみる。

 布団の中で日向ちゃんが寝息をたてている。幸せそうな寝顔に見ているこっちまで笑顔になる。昨日は遅くまで話し込んでしまったからな、ぐっすりと眠っている。

「ふぇ?」
「ごめん、起こしちゃったな」

 俺が動いたのが伝わっちゃったかな。半開きのまぶたをこすり日向ちゃんが起きる。ずいぶんとゆるい顔をしている。

「あさぁ?」
「おはよう、朝だよ」
「うん……」

 俺からのあいさつにもとりあえずうなずくだけで日向ちゃんはまたいそいそと布団の中に戻っていく。

「え!?」
「うお!」

 と思えば急に起き上がり俺を見てきた。

「どうして聖治さんがここに!?」
「どうしてって」

 まだ寝ぼけてるな。昨日のことを忘れてるみたいだ。

「そんな、聖治さんが私の部屋に忍び込むなんて」
「俺の部屋だぞ」
「自分の部屋に連れ込むなんて」
「自分から来たんだぞ」
「心を操った!?」
「違うぞ」

 大丈夫かな? かなりまずい発想に取り付かれているようだけど。

「あ、そうだった」
「ようやくか」

 危ない。もう少しで犯罪者にされるところだったぞ、俺。

「日向ー!?」

 そこで鍵が開く音がするなり玄関から大声が聞こえてきた。どしどしと足音が近づき部屋の扉が開けられる。

「貴様、死ねぇ!」
「なぜだ!?」

 なにか勘違いしてるだろこいつ!

 それから慌てて部屋に上がり込んできた此方を説得して俺たちはリビングに移っていた。なんかこんな展開昨日もしたよな。

「勘弁してくれ。なぜ俺があらぬ事実で疑われなくちゃならないんだ」
「あの状況見れば誰だってそう思うでしょ」
「えへへ」
「日向も。夜に抜け出すなんてなにしてんのよ。心配したのよ」
「ごめんごめん。でもはっきりさせたくて」
「まったくもう」

 此方はやれやれと顔を振っている。まあ、奔放な妹を心配する姉としてはそうだろうな。俺も日向ちゃんの行動力は評価する一方心配になる。

「とりあえず朝食にしましょう。安心したらお腹すいたわ」

 此方がソファから立ち上がる。それもそうだな。俺もホッとしたらお腹が空いたよ。

「じゃあ私も手伝うよ」

 日向ちゃんも立ち上がり台所へと向かおうとする。

「コホ」
「ん? 日向ちゃんどうかした?」

 立ち止まってせきしてるようだけど。

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