セブンスソード
79
今もエプロンをつけながらどちらがなにをするか話し合っている。俺にはちょっと冷たい態度の此方も日向ちゃんと話すときはあんなにも笑顔を浮かべている。それは彼女も同じで見上げる姉に笑顔を返していた。
仲のいい姉妹だな。
テーブルの席に着きながら二人をぼうと眺める。彼女たちと出会ったのは今日がはじめてだが二人の仲がいいことは十分伝わってくる。
なんていうか、意外と言えば、意外だった。
最初此方に抱いた印象は怒りや憎しみに近いものだった。話し合いをしに行った俺たちをだまし討ちのような真似で迎え入れ、そのせいで力也は命を落としてしまった。星都や香織は涙を流して悲しんだ。俺だって悲しかった。どうしてこんなことをするんだと怒りを覚えた。
でも。
こうして楽しそうに談笑している二人を見ていると思う。
彼女も普通の女の子なんだって。普通に笑って、普通に怒ったりする。大切な家族がいる。
もしかしたら、彼女も怖かったのかもしれない。スパーダを名乗るセブンスソードの敵が自宅に現れたんだ、ここで討たなければいつ襲われるか分からない。そう考えたかもしれない。
それもきっと、自分のためじゃない。
「それじゃあ日向はキャベツの千切りをお願い。私は炒めておくわ」
「うん、分かった!」
笑顔で妹に指示を送る此方。
日向ちゃんを守るために、あの時の此方は決断したんだと思う。
『私がやらなきゃ。私がやらなきゃ。私が。私が』
「…………」
あの時彼女が言っていた言葉、自分に向けて言っていた言葉の数々は、人を殺すことと妹を守ることの天秤というか、葛藤だったんだ。
彼女にも守るものがある。命をかけてでも守りたいものがある。それを俺はこの世界で知ることができた。
「俺も手伝うよ」
俺だけが見ているわけにもいかない。俺もなにか手伝わなきゃ。
それで俺は席を立つのだが、此方はジト目で、日向ちゃんはポカンとした顔で見つめていた。
「…………」
「…………」
「? どうしたんだ?」
ええーと、なぜそんな顔で見られなきゃならないんだ? 一応俺なりに気を遣ったんだが。ほらだって! 俺だけがなにもしていないなんてあれだろ? お客さんってわけじゃないんだし。そりゃ姉妹で楽しそうにしている中割り込んだ形だけど、そんな反応しなくてもいいだろ。え、俺そんなに悪いことしたのか?
「今ので確信した、あんたほんとなにも覚えてないのね」
「どういう意味だよ?」
ほんと分からない。どうやら姉妹の中に入り込んだことを言われているわけじゃなさそうだが。
「あのね、聖治さん。前も聖治さんが手伝ってくれるって言ってくれたことがあるんだけど、包丁で指は切るわ調味料は間違えるわ食器は割るわで大変だったんだ。それからね、気持ちは嬉しいんだけど」
あー……、なるほど。そういうことか。完璧に理解したわ。
「うん、分かった。もう言わなくていい、十分伝わった」
俺は椅子に戻った。なんだか悲しい。
「要はなにもしないで、邪魔だから」
「なんで言った!? 言わなくてもいいって言っただろ!」
嫌がらせかこいつは!
そんなこんなで俺は二人の調理風景を静かに見守る係りとなった。日向ちゃんはキャベツを千切りにしており此方はフライパンでなにやら炒めている。どちらも慣れたものでテキパキと進んでいく。なんか女の子が調理している姿っていいな。
せっかくだし俺も手伝いたい。やはりしてもらってるだけというのは悪いし。
俺はそーと腰を浮かしてみた。
「!」
「!」
「!?」
が、その動きを射止めるように二人の視線が突き刺さる。いやいや、だるまさんが転んだじゃないんだぞ。
まさか二人が二人の調理を見守る係りを見張る係りだったとは。器用なものだ。ていうか俺信用なさ過ぎじゃないか?
そういうこともあり大人しく待って十数分後。テーブルには豚の生姜炒めとごはんと味噌汁が並んでいた。皿に乗った豚とたまねぎからは生姜の食欲をそそるいい匂いが立ち上がってくる。見ているだけでお腹が減ってきた。
「すごいな、これ二人が作ったのか?」
「あんたは今までなにを見てたのよ」
「ふふふ、冷めないうちに食べてくださいね」
俺は手を合わせた。
「いただきます」
二人も手を合わせる。早速豚の生姜焼きを口に入れてみた。
仲のいい姉妹だな。
テーブルの席に着きながら二人をぼうと眺める。彼女たちと出会ったのは今日がはじめてだが二人の仲がいいことは十分伝わってくる。
なんていうか、意外と言えば、意外だった。
最初此方に抱いた印象は怒りや憎しみに近いものだった。話し合いをしに行った俺たちをだまし討ちのような真似で迎え入れ、そのせいで力也は命を落としてしまった。星都や香織は涙を流して悲しんだ。俺だって悲しかった。どうしてこんなことをするんだと怒りを覚えた。
でも。
こうして楽しそうに談笑している二人を見ていると思う。
彼女も普通の女の子なんだって。普通に笑って、普通に怒ったりする。大切な家族がいる。
もしかしたら、彼女も怖かったのかもしれない。スパーダを名乗るセブンスソードの敵が自宅に現れたんだ、ここで討たなければいつ襲われるか分からない。そう考えたかもしれない。
それもきっと、自分のためじゃない。
「それじゃあ日向はキャベツの千切りをお願い。私は炒めておくわ」
「うん、分かった!」
笑顔で妹に指示を送る此方。
日向ちゃんを守るために、あの時の此方は決断したんだと思う。
『私がやらなきゃ。私がやらなきゃ。私が。私が』
「…………」
あの時彼女が言っていた言葉、自分に向けて言っていた言葉の数々は、人を殺すことと妹を守ることの天秤というか、葛藤だったんだ。
彼女にも守るものがある。命をかけてでも守りたいものがある。それを俺はこの世界で知ることができた。
「俺も手伝うよ」
俺だけが見ているわけにもいかない。俺もなにか手伝わなきゃ。
それで俺は席を立つのだが、此方はジト目で、日向ちゃんはポカンとした顔で見つめていた。
「…………」
「…………」
「? どうしたんだ?」
ええーと、なぜそんな顔で見られなきゃならないんだ? 一応俺なりに気を遣ったんだが。ほらだって! 俺だけがなにもしていないなんてあれだろ? お客さんってわけじゃないんだし。そりゃ姉妹で楽しそうにしている中割り込んだ形だけど、そんな反応しなくてもいいだろ。え、俺そんなに悪いことしたのか?
「今ので確信した、あんたほんとなにも覚えてないのね」
「どういう意味だよ?」
ほんと分からない。どうやら姉妹の中に入り込んだことを言われているわけじゃなさそうだが。
「あのね、聖治さん。前も聖治さんが手伝ってくれるって言ってくれたことがあるんだけど、包丁で指は切るわ調味料は間違えるわ食器は割るわで大変だったんだ。それからね、気持ちは嬉しいんだけど」
あー……、なるほど。そういうことか。完璧に理解したわ。
「うん、分かった。もう言わなくていい、十分伝わった」
俺は椅子に戻った。なんだか悲しい。
「要はなにもしないで、邪魔だから」
「なんで言った!? 言わなくてもいいって言っただろ!」
嫌がらせかこいつは!
そんなこんなで俺は二人の調理風景を静かに見守る係りとなった。日向ちゃんはキャベツを千切りにしており此方はフライパンでなにやら炒めている。どちらも慣れたものでテキパキと進んでいく。なんか女の子が調理している姿っていいな。
せっかくだし俺も手伝いたい。やはりしてもらってるだけというのは悪いし。
俺はそーと腰を浮かしてみた。
「!」
「!」
「!?」
が、その動きを射止めるように二人の視線が突き刺さる。いやいや、だるまさんが転んだじゃないんだぞ。
まさか二人が二人の調理を見守る係りを見張る係りだったとは。器用なものだ。ていうか俺信用なさ過ぎじゃないか?
そういうこともあり大人しく待って十数分後。テーブルには豚の生姜炒めとごはんと味噌汁が並んでいた。皿に乗った豚とたまねぎからは生姜の食欲をそそるいい匂いが立ち上がってくる。見ているだけでお腹が減ってきた。
「すごいな、これ二人が作ったのか?」
「あんたは今までなにを見てたのよ」
「ふふふ、冷めないうちに食べてくださいね」
俺は手を合わせた。
「いただきます」
二人も手を合わせる。早速豚の生姜焼きを口に入れてみた。
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