セブンスソード
67
こいつの言うとおり魔卿騎士団の幹部たち、管理人はあくまで儀式進行を見守る立場で儀式自体に手出しできる立場じゃない。
なのに俺がこいつに聞こうと思ったのには訳がある。
「殺しにきておきながらずいぶん真面目な答えじゃないか。お前がしようとしたことは管理人の仕事じゃないだろう」
そう、こいつは以前では俺を、この世界では香織を殺そうとしてきた。
戦う意志がない。セブンスソードに覚醒していない。そんな理由だけで殺しにきたのだ。管理人の範疇を逸脱(いつだつ)している。
「ふーん」
男はつまらなそうに声を出し、構えていた槍を引っ込めた。
「まあ、そりゃそうだ」
やはりというか図星らしい。この男はいい加減なんだ。だからもしかしたら教えてくれるかもしれないと、可能性を感じたんだ。
男は話すが声にはやる気がない。
「実際俺としちゃ、こんな儀式どうでもいいんだ。お前らの誰かが新たな団長? 言わせてもらうがふざけんじゃねえよ。剣なんか握ったばかりで修行もしてねえ、師もいねえ、戦場も知らねえ。ド素人じゃねえか」
「お前!」
それをお前が言うのかよ!
「それが分かっていながら、じゃあなんでこんなことしてんだよ!」
ふざけんなと言いたいのはこっちの方だ! お前らの勝手な行いでどれだけ悲しんで、恐怖して、絶望したと思ってる。
星都や力也、香織が殺されなきゃならないんだよ!
「時間がねえからさ」
「時間?」
こいつの発言に怒りがこみ上げるが、反対に男は冷たい態度だ。
「育ててる時間がねえ。こうしてる今も他の二つがいろいろ準備してやがる。いつ衝突するか分からない」
「……ゼクシズ。リング・オブ・オーダーと週末の書庫会か」
これは香織が言っていたから覚えている。
この世界の裏側にいる闇の勢力。それを支配しているゼクシズの三人。一大勢力の首領たち。
悪魔召喚師の集団、魔帝ソロモン。
魔術師たちの組織、天上アンデルセン。
そして武術と魔術を融合した騎士団、剣聖グレゴリウス。
現在このグレゴリウスが亡くなってしまい魔卿騎士団の立場はゼクシズ内で危ぶまれている。三竦(さんすく)みの関係が崩れリング・オブ・オーダーと週末の書庫会が覇権を狙って激突寸前になっているとか。
それによってどれだけの被害が出るかは分からない。でも、それを重く見て魔卿騎士団はセブンスソードに乗り出した。
この儀式は魔卿騎士団の、ひいては闇の勢力すべての未来を左右するほどのものなんだ。
だが待てよ、前の世界では半蔵はセブンスソードは剣聖の復活だと言っていた。
聞いてみるか? セブンスソードにはなにか裏がある気がしてならない。この男が言っているように俺たちのような素人が魔卿騎士団の団長なんてやはり違和感がある。
「…………」
俺は悩むが、だけど止めておいた。今聞きたいのはそこじゃない。
「その衝突を回避するためにも魔卿騎士団には新たな団長が必要なのさ。強いだけでいい。抑止力になるならなんだって」
伝統や実績はこの際関係ない。団長に相応しい強者なら誰でもいいってわけか。
「今はただ、力だけが必要なんだ」
その時、男の声からは覚悟のようなものが感じ取れた。
それも一瞬でありすぐに元の調子に戻る。
「それで言えば魔堂魔来名は打って付けだ。あいつは力を求めている。素質も十分だ」
「力……」
男の言うとおり魔来名はセブンスソードに積極的だ。それは力を求めていることに他ならない。
やつがあれだけ強いのも力への望みがあるからなのだろうか。
「魔来名はどうしてそんなに力を求める? なぜあいつだけあんなに強いんだ?」
「ん? なにか知ってる口振りだな」
「いいから言えよ」
「うざいガキだな。言ったろ、素質だよ。あれほどの魂はそうはない。身内なのが残念だよ。敵ならやり合えるってのに」
どうやら粗暴なだけじゃなくバトルマニアらしいな。あんなのと戦いたがるとかまったく理解できない。
「まあ、俺がこの儀式に賛成的じゃないのはそうだよ。だからといって教えてやるっていうのもなぁ」
「…………」
男の答えを持つように俺は見続ける。俺にはこれしか方法がないんだ。
もし答えないというのなら、戦ってでも聞くしかない。
俺が剣を握る手に力を入れた、その時だった。
「本来はそうなんだが、だけどいいか。直接なにかするわけじゃないし。戦ってくれるならその方が捗(はかど)るか」
男が話し出した。気が緩み掛けるがすぐに引き締める。
「つついてやるのも必要だしな」
「じゃあ、教えてくれるんだな」
「いいぜ」
男は危険な雰囲気はそのままに、飄然(ひょうぜん)と答えた。
「そいつらの名前はな、安神(やすかみ)だ」
なのに俺がこいつに聞こうと思ったのには訳がある。
「殺しにきておきながらずいぶん真面目な答えじゃないか。お前がしようとしたことは管理人の仕事じゃないだろう」
そう、こいつは以前では俺を、この世界では香織を殺そうとしてきた。
戦う意志がない。セブンスソードに覚醒していない。そんな理由だけで殺しにきたのだ。管理人の範疇を逸脱(いつだつ)している。
「ふーん」
男はつまらなそうに声を出し、構えていた槍を引っ込めた。
「まあ、そりゃそうだ」
やはりというか図星らしい。この男はいい加減なんだ。だからもしかしたら教えてくれるかもしれないと、可能性を感じたんだ。
男は話すが声にはやる気がない。
「実際俺としちゃ、こんな儀式どうでもいいんだ。お前らの誰かが新たな団長? 言わせてもらうがふざけんじゃねえよ。剣なんか握ったばかりで修行もしてねえ、師もいねえ、戦場も知らねえ。ド素人じゃねえか」
「お前!」
それをお前が言うのかよ!
「それが分かっていながら、じゃあなんでこんなことしてんだよ!」
ふざけんなと言いたいのはこっちの方だ! お前らの勝手な行いでどれだけ悲しんで、恐怖して、絶望したと思ってる。
星都や力也、香織が殺されなきゃならないんだよ!
「時間がねえからさ」
「時間?」
こいつの発言に怒りがこみ上げるが、反対に男は冷たい態度だ。
「育ててる時間がねえ。こうしてる今も他の二つがいろいろ準備してやがる。いつ衝突するか分からない」
「……ゼクシズ。リング・オブ・オーダーと週末の書庫会か」
これは香織が言っていたから覚えている。
この世界の裏側にいる闇の勢力。それを支配しているゼクシズの三人。一大勢力の首領たち。
悪魔召喚師の集団、魔帝ソロモン。
魔術師たちの組織、天上アンデルセン。
そして武術と魔術を融合した騎士団、剣聖グレゴリウス。
現在このグレゴリウスが亡くなってしまい魔卿騎士団の立場はゼクシズ内で危ぶまれている。三竦(さんすく)みの関係が崩れリング・オブ・オーダーと週末の書庫会が覇権を狙って激突寸前になっているとか。
それによってどれだけの被害が出るかは分からない。でも、それを重く見て魔卿騎士団はセブンスソードに乗り出した。
この儀式は魔卿騎士団の、ひいては闇の勢力すべての未来を左右するほどのものなんだ。
だが待てよ、前の世界では半蔵はセブンスソードは剣聖の復活だと言っていた。
聞いてみるか? セブンスソードにはなにか裏がある気がしてならない。この男が言っているように俺たちのような素人が魔卿騎士団の団長なんてやはり違和感がある。
「…………」
俺は悩むが、だけど止めておいた。今聞きたいのはそこじゃない。
「その衝突を回避するためにも魔卿騎士団には新たな団長が必要なのさ。強いだけでいい。抑止力になるならなんだって」
伝統や実績はこの際関係ない。団長に相応しい強者なら誰でもいいってわけか。
「今はただ、力だけが必要なんだ」
その時、男の声からは覚悟のようなものが感じ取れた。
それも一瞬でありすぐに元の調子に戻る。
「それで言えば魔堂魔来名は打って付けだ。あいつは力を求めている。素質も十分だ」
「力……」
男の言うとおり魔来名はセブンスソードに積極的だ。それは力を求めていることに他ならない。
やつがあれだけ強いのも力への望みがあるからなのだろうか。
「魔来名はどうしてそんなに力を求める? なぜあいつだけあんなに強いんだ?」
「ん? なにか知ってる口振りだな」
「いいから言えよ」
「うざいガキだな。言ったろ、素質だよ。あれほどの魂はそうはない。身内なのが残念だよ。敵ならやり合えるってのに」
どうやら粗暴なだけじゃなくバトルマニアらしいな。あんなのと戦いたがるとかまったく理解できない。
「まあ、俺がこの儀式に賛成的じゃないのはそうだよ。だからといって教えてやるっていうのもなぁ」
「…………」
男の答えを持つように俺は見続ける。俺にはこれしか方法がないんだ。
もし答えないというのなら、戦ってでも聞くしかない。
俺が剣を握る手に力を入れた、その時だった。
「本来はそうなんだが、だけどいいか。直接なにかするわけじゃないし。戦ってくれるならその方が捗(はかど)るか」
男が話し出した。気が緩み掛けるがすぐに引き締める。
「つついてやるのも必要だしな」
「じゃあ、教えてくれるんだな」
「いいぜ」
男は危険な雰囲気はそのままに、飄然(ひょうぜん)と答えた。
「そいつらの名前はな、安神(やすかみ)だ」
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