セブンスソード

奏せいや

45

 星都と魔来名で刀身を押し付け合っている。星都は必死に力を入れるが、魔来名は真剣な表情のままじっと星都を見つめていた。

 魔来名のスパーダ、天黒魔の刀身は漆黒だった。禍々しい雰囲気を感じるのにどこか透き通った芯も覚える。

 黒い刀身。それを見た瞬間、俺は不覚にも美しいと思ってしまった。全うな武器じゃない、魔刀と呼ばれる部類のはずなのに、それは真っ直ぐとして芯のある美しさを感じさせた。

 魔来名に押し返され星都が退く。そこへ魔来名は一閃し星都は剣で防ぐも弾かれてしまった。

 天黒魔は振るうと紫のオーラを刀身から漂わせ空間に紫の線を刻んでいた。それは振るった時のみ出るらしく今は消えている。

「ちぃ!」
「…………」

 攻撃が不発に終わり星都が苦々しくつぶやく。反対に魔来名は精悍なままだ。

 だが、まだ終わりじゃない。

 沙城さんと力也が走り出す。それぞれディンドランとグランを手に魔来名に襲い掛かる。

 力也が振りかぶったグランを打ち付ける。受け止めきれないと判断したんだろう、魔来名は後ろに下がった。その一撃に地面は砕け散りアスファルトだけでなくその下の土まで飛び上がる。

 そこへ沙城さんと星都が同時に攻める。二つの刃が魔来名に迫った。

 それを、魔来名は刀身と鞘で受け止めた。二人は両手で押し込んでいるのにびくともしていない。体格差はあるけれど片手で止めるなんて。

 さらには二人を押し戻した。

 体が反った隙に星都を蹴り飛ばし沙城さんに刀身を叩きつける。それで二人とも転倒してしまった。

「星都! 沙城さん!」

 俺は駆け寄ろうかとも思ったがそれよりも先に力也が魔来名の前に立つ。二人を庇うように立ち魔来名にグランを振るっていく。

 力也の攻撃は重力の影響を受けない、ようは体感では重量ゼロなため簡単に振れる。グランの大きな見た目に反して振るう速度は速い。

 力也の攻撃が乱舞する。振り方は素人かもしれないがそんなの関係ない。

 とにかくすごいんだ、振るうだけで風が起こってる。それが魔来名の前髪やコートの端を揺らしていた。あんなのまともに受けたら一撃で終わりだし、もし防御しても腕が折れる。

 それが魔来名も分かっているからスパーダで防ぐことはせず体裁きでかわしていた。決して剣で受けようとはしない。

 押している。

 さらに星都と沙城さんもそこに加わる。力也が正面から切りかかり左右から星都と沙城さんが攻める。

 このまま押し切れるか?

 三人からの猛攻に魔来名は手が出せない。それでも、この男の表情にはヒビ一つ入らなかった。
 その、次の瞬間だった。

 星都の速攻を見切った魔来名は鞘で払うとスパーダで斬りつけた。さらに沙城さんの攻撃を防ぐと蹴りで吹き飛ばし力也の攻撃をかわすとその隙に斬りかかっていた。

「ぐ!」
「く!」

 危ない。なんとか二人とも防いだが魔来名はただ防戦しているだけじゃない、一瞬の隙を突いてくる。

 星都と沙城さんは体勢が崩され、その中で力也が一人で攻める。大剣であるグランを打ちつけ魔来名が大きく下がった。二人の距離が離れる。力也はさらに攻撃しようと大きく振り被った。

「――――」

 そこへ、魔来名は天黒魔を投げつけた。

「があ!」

 天黒魔の黒い刀身が胴体に突き刺さった。

「力也ぁあ!」

 力也が倒れる。グランが、地面に落ちた。

「てめえええ!」
「駄目、星都君!」

 天黒魔を投げたことで魔来名は無防備だ、星都はエンデゥラスの速攻ですぐさま攻める。
 だが、魔来名は天黒魔を一旦消すと再び手元に出し、大振りとなっていた星都を返り討ちにした。

 スパーダを投擲してから手元に出す技、沙城さんが管理人と戦った時にしたのと同じだ。

「星都おお!」
「そんな」

 この一瞬で、状況が一変していた。

「ディンドラン!」

 すかさず沙城さんが起きあがり二人にディンドランを近づけた。

「そんな、どうして!?」

 なのに、二人の傷は一向に治らなかった。

「力也、星都!」

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