セブンスソード

奏せいや

38

「沙城さんファミレスに来てからびっくりの連続だね」
「うん、まさかこんなに驚くなんて思ってもみなかった。あと皆森君と聖治君はそんなにからかわないでよぉ」
「驚くお前が悪いんじゃねーか」
「もう! だって仕方がないじゃんか」
「はいはい。沙城さんは? 注文するのはもう決まった?」
「あ、えっと、もうちょっと待ってて!」

 沙城さんはすぐにメニュー表を見るとあれでもないこれでもないと選んでいる。穴が開くほど凝視しているな。一応俺たちは決まったから沙城さんを待つがなかなか決まらない。

「うーん、こっちもいいけどこれならエビフライも付いてくるんだよね。でもこっちは目玉焼きが乗ってるのかぁ。うーん、それならやっぱり…………でもパスタもいいんだよなぁ」
「どっちだよ!?」
「なあ沙城さん、俺のミックスグリルにもエビフライ乗ってるし、それあげるよ」
「ほんとに!? じゃあこっちにしようかな」
「もう全部頼めよ」
「そんなに食べきれないんだな」

 とりあえず沙城さんも決まったようだな。ボタンを押すと女性の店員が来てくれた。

「ご注文はなんでしょうか?」
「あの、この目玉焼きとチーズのダブルハンバーグと海藻サラダ、あとカルボナーラをください」
「ほんとに両方頼むのかよ!」
「今ならスープバーが付くランチセットがおすすめですがどうしますか?」
「スープバー?」
「スープの飲み放題です」
「飲み放題!?」
「ああ、気にしないでくれ。彼女ユーチューバーなんだ」
「ユーチューバーって?」
「な? 完璧なリアクションだろ?」
「あはは……」

 困ったように愛想笑いしている店員さんになんとか注文を終え、しばらく話していると料理が運ばれてきた。

「お待たせしました。目玉焼きとチーズのダブルハンバーグとカルボナーラです」
「うわあ」

 まるで子供がお子様ランチを見たように喜んでいる。すごい、目が輝いているってこういうことを言うんだな。
 俺たちの料理も揃い全員で手を合わせる。

「いただきます」

 目の前の鉄板にはハンバーグとエビフライ、サイコロステーキが乗っている。写真で見るよりもうまそうだ。早速ナイフとフォークを持ち切り分けていく。間からこぼれる肉汁と鉄板の上で弾ける音が食欲を誘う。ハンバーグをカップに入ったソースに付け口に入れた。

「うん! うまい」

 ファミレスのハンバーグだけど十分うまい。すぐにフォークでライスをすくって口に放り込んだ。

「どう沙城さん、おいしい?」

 メニューを見ただけであんなに感動していた彼女だからな、どんなリアクションをするんだろうか。

「もぐもぐ! もぐもぐ! ごっくん! もぐもぐ!」

 なるほど、そうくるか。

「ファミレスの料理をカニのように食ってるぞ」
「それはまたたとえが違くないか?」
「おいしそうに食べてて見てて気持ちがいいんだな」
「てか力也も量でかいな!」

 隣ばかり気にしてたから分からなかったけど力也もすごいたのんでるぞ! 

「なんでハンバーグステーキとライスがあるのにピザとからあげ定食があるんだよ! ライスとごはんで被ってるだろ!」
「重なっててもおいしいんだな~」
「マジかよ」
「こいつは昔からこういうやつだぞ」

 そうだったのか。学食とかでよく食べてるのは知ってたがこんなに食うやつだったとは。
 そんなこんなで俺たちは食事を進めていった。俺は自分の分を食べ終えコーヒーを飲んでいた。星都や力也も食べ終え飲み物を飲んでいる。力也のやつ、本当に一人で全部食べたな。

「ん?」

 ふと隣を見てみる。そこでは箸の止まった沙城さんが俯いていた。まだテーブルにはダブルハンバーグの片方があるが。

「…………」
「…………」
「あの、沙城さん」
「…………」
「もしかしてだけど」
「…………」
「お腹いっぱい?」
「…………」
「…………」
「…………うん」

 彼女は小さく頷いた。とても申し訳なさそうだった。

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