セブンスソード

奏せいや

32

 星都は光帝剣を驚いたように見つめていた。が、すぐに表情をほころばせる。

「どうよ聖治、いいだろう。これは当たりだな」
「うん、私もいいと思う。速いっていうのはそれだけでやれることの幅が広がるし。足が速いのは生き残るには必要なことだもんね」
「星都君よかったんだなぁ」
「ふふーん。まあな」
「ま、まあ、いい部類みたいだな」

 星都が鼻を高くして光帝剣を見せびらかしてくる。くそ、悔しくなんかないぞ。

「あと沙城、俺のことは呼び捨てでいいって言っただろ」
「う、うーん。そのうち、ね?」
「ま、好きにすればいいけどさ」
「次は織田君の番だけど、たぶんそれ、もう発動してるよね?」
「え?」

 ああ、そうか。
 改めて力也のスパーダを見る。力也が持っている鉄塊王グランは大剣だ。というより鉄の塊と言った方がしっくりくる。それほど大きな剣だ。
 それを片手で軽々持てるのは重力の影響を受けないからに他ならない。

「えへへ、僕は出した時にはもう分かってたんだなぁ」
「んだよ、抜け駆けか?」
「違うんだなぁ~!」
「まったく」

 状況分かってるのか、こいつは。

 今まさに俺たちはセブンスソードという危機に直面しているっていうのに、はしゃいでいる場合じゃないんだぞ。

「ふふ」

 と思っていると、俺の隣にいた沙城さんが小さく笑っていた。

「皆森君と織田君って面白いね」
「星都はお調子者で力也はマイペースなんだよ。もっと危機感持たないのか」
「そうだね。でもリラックスしてるのはいいことだよ、不安ばかりじゃ気の方がさきにまいっちゃうだろうし」
「それは、まあ」

 ある程度の緊張感は持っていなければならないが彼女の言うことも正しい。ここに来てから最初の十分は緊張で息苦しいほどだったからな。それを思えばちょっとの冗談くらい言える方がいいか。

 沙城さんは、そういう周りのことも見ているんだな。

「ほれ聖治、次はお前だぜ」
「おう」

 パーシヴァルに目を落とす。沙城さんや星都、力也の能力は分かった。残るのは俺だけだ。

 いったいどんな能力なんだろうか? いざ自分の番になると緊張とわずかな興奮を覚える。これで俺の未来が決まると言っても過言じゃないんだ。

 息を深く吐き、集中した。

「神剣」

 俺の力、俺のスパーダ。応えてくれ。

「パーシヴァル!」

 念じる。

 するとパーシヴァルの刀身が光った。俺の願いに応えるように発光し、能力を発動した。

「…………」

 俺だけでなく、ここにいる三人もなにが起きるのか固唾を飲んで見守っている。

 俺は能力を発動した。

 したんだが。

 パーシヴァルを顔の前に持ってくる。

「…………?」

 パーシヴァルを見る。なにか変わったところがないか探してみるがどこにもそれらしきものはない。次に周囲を見渡してみるが唖然としている三人が俺を見ているだけだ。

「なあ、どうした? 発動したんじゃなかったのか?」
「いや」

 聞かれて反射的に答えるが、次の言葉が出てこない。

「…………」
「どうした?」
「その、ちゃんと発動したんだ」
「発動した?」
「でもぉ」

 星都と力也が周囲を見る。

 分かってる。能力を発動したのに、なにも起きていないんだ。

「どうして?」

 パーシヴァルを見るがなんでかは分からない。なんで? まさか不具合か?

「聖治君、落ち着いて」

 沙城さんが俺の手に手を重ねてきた。

「もしかしたら条件が必要なのかもしれないし」
「条件? この大変な時にか?」

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