セブンスソード

奏せいや

31

 のんびりした調子なのに力也もすごいよ。きっとこの中で誰よりも優しいやつだと思う。

「ありがと、力也」
「ううん。僕たち、ずっと友達だからね」
「ああ」

 そう言うと俺と力也は拳をぶつけ合った。その流れで星都ともぶつけ合う。

「ぐすん」

 見れば沙城さんがまた泣いていた。

「方針は決まったな。俺たち四人は沙城さんが探しているロストスパーダを見つけ出し、それを手に入れる。それからセブンスソードから逃げればいい」

「話の流れは分かったけどよ、問題は二つだ。探し物のスパーダとその後の逃走ルートだ。探し物はともかく、逃げるのだって危険なんだろ? ちなみにだけどお前を襲ったっていう管理人、俺たち四人がかりなら倒せたりしないのか?」

「それはたぶん難しいんじゃないかな。今の私たちじゃ管理人にはかなわない。逃げるっていうのが一番現実的だと思う。それも難しいとは思うけれど。魔卿騎士団はこの儀式をするためにこの街を支配してると聞いてる。この街が経済成長をしてきた裏には魔卿騎士団の手があったていう話だし」

「それだけ昔から準備してたんだ、向こうも必死ってわけだ。そういえば管理人に襲われた時スマホが圏外になってたな」

「うん、偶然なはずがないよ。きっと騎士団の結界だと思う。スパーダ同士の戦闘が起きると自動的に発動して異なる位相に移る仕組みらしい。それか管理人が動く時だね。闇雲に動いても見つかって、規則違反だとして管理人に殺されるわ」

 バレたらその場で処刑される、か。昨日の男を思い出す。槍を使うあの男に俺は殺されかけた。人を殺すことに一切躊躇いはない連中だ。

「なあ、それっておかしくねえか?」

 そこで星都が聞いてきた。

「俺たちは団長になるために作られたんだよな? なのに団長よりも弱い管理人に勝てないっていうのは変だろ」
「そういえばそうだな」

 星都の言う通りだ。矛盾している。どうして団長候補の俺たちが管理人よりも弱いんだ?

「それはね、朝は言えなかったんだけど、スパーダの固有能力には制限があって、スパーダを獲得することで段階的に解放されていくの。だから今の私たちでは幹部より弱い設定になってる」
「今の俺たちはレベル一で、セブンスソードでレベルアップしていくってことか」
「うん、そういうこと」

 なるほど。厄介だな。これが初期の暴動を抑えるための処置ならセブンスソードは相当手が込んでる。

「気になってたんだけどよ、その固有の能力って全員にあるんだよな? 転校生のは見せてもらったけど」
「うん。皆森君にもあるはずだよ。あと名前で呼んでくれていいから。いつまでも転校生じゃあれだし」
「じゃあ沙城って呼ぶぞ。俺も呼び捨てでいい」
「え、いきなり?」
「こういうやつなんだ、気にしないでくれ」

 星都は基本さばさばしてるからな。

「とりあえず俺たちがどんな能力を持ってるのか確認しておかないか? なにをするにしても情報の整理は必要だろ? 彼を知り己を知れば百戦危うからずって言うしな」
「孫子の言葉だな」

 脱線にはなるが必要なことだからな、俺も賛成だ。

「とりあえずしてみるか」

 俺と星都、力也はスパーダを取り出した。最初は緊張したが二度目にもなればスムーズに出すことができた。黄色い刀身をした神剣パーシヴァルを持つ。

「沙城さん、その固有の能力っていうのはどうやって発動するんだ? そもそもどうやって調べればいいのか」
「スパーダを出した時みたいに今度は能力を発動しようと念じてみればいいよ。それでできるはずだから」
「そういうものか」

 そういうことならやってみるしかない。

「じゃあ俺からやるぜ」

 星都が水色をした剣を両手で握り顔の前に持ってくる。そこには真剣な星都がいた。

「光帝剣、エンデゥラス」

 その名を呼ぶ、自分自身でもあるもう一つの名前。
 瞬間星都の姿がとてつもない速さで動き俺と力也の横を通り過ぎていった。

「うお!」 

 まるで特急電車が通ったような強烈な風圧に体が押される。
 振り返れば俺たちから離れた場所に星都が立ち尽くしていた。

「今のは」
「これが皆森君の能力だよ」

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