セブンスソード

奏せいや

30

 そうかもな、みんなの言うことは分かる。正直怖いし俺が覚悟だと思っているものなんて本当はすぐに壊れるガラクタかもしれない。見栄や伊達に命なんて使うもんじゃない。

「沙城さん、俺だって言ったはずだ」

 だけど、俺も退きたくないんだ。
 俺の胸が、心が、彼女を離すとな言っている。今も叫んでいるんだ!

「君を危険な目に遭わせられない。君にもしものことがあったら嫌なんだよ!」

 俺を見上げる瞳に俺も負けじと見つめ返す。

「分からないけど、俺だってよく分からないけど、すごくそう思うんだ!」

 思いが溢れて止まらない。彼女を守りたい。彼女を守るためなら、俺が死んでもいい。心よりも深いところ、魂が言っている。

「だから、君が戦うというのなら俺も一緒に戦う」

 それくらい思うんだ。彼女は誰よりも大切な存在で、この世界と比べたって大事な人なんだと。
 その彼女が戦うというのなら、俺の答えは決まっていた。

「君を、一人にしたりしない。約束しただろ?」
「聖治君」

 沙城さんから抗議の声は止まっていた。たとえどれだけ止めろと言われても俺は行く気だ。彼女の目が細められる。そんな彼女を俺も見つめた。
 この人のために生きる。それを、再認識した。

「約束? お前、転校生とそんな約束したのか?」
「え?」

 あれ、そういえば。なんでだろう。そんなことしたことないのに、なんでこんなこと言ってるんだ俺。

「いや、えーと」

 なにかと勘違いしたのかな。まあそんなことはいいんだ。俺は彼女のそばにいる。それはもう決めたことだ。

「ぐすん」
「え、沙城さん!?」

 と、見てみれば沙城さんが鼻をすすっていた。

「ううん、ごめんね。なんでもないの。ただ、すごく……」

 片手で目をこすっている。見れば目が少し赤くなっている。

「ありがとう、聖治君。そう言ってくれて、正直嬉しい」

 彼女は笑っている。そんな仕草が可愛い。彼女だって一人の女の子なんだ。セブンスソードは怖いだろう、葛藤だってあったはずだ。一人で心細かったに違いない。

「でもいいの? 本当に?」

 彼女からの確認に俺は大きく頷く。それを見て彼女も表情を引き締め、頷いた。

「星都、力也。悪いが俺は彼女と一緒に行動する。二人でこの町から逃げてくれ」
「ちっ、おいおい」
「んー」
「……すまないな」

 友人二人を見放すようで心苦しいが、俺なりに考えた結果なんだ。二人と離れ離れになるということだから星都や力也には本当に申し訳ないと思う。

「わーたよ」
「星都」
「おい力也、お前も同じ気持ちなんだろ?」
「うん」
「ん? なにがだ?」

 二人はアイコンタクトでなにやら意思の疎通が取れているようだが。

「確認するが、必要なのは一本だけなんだな?」
「うん」
「おい星都」

 それって、お前。

「殺し合いなんてまっぴらごめんだよ。俺は普通の生活で好きなように、自分らしく生きていければそれでよかったんだ。この日常に命を賭けるほどの不満もなかったしよ。なにより、ダチとやり合えって? ボウシット。それが一番気に入らねえ。どこの間抜けが自らそんなことするんだよ。お前に力也。友達っていうのは俺の日常にとって大事なピースだ」

 ふだんおちゃらけた星都が珍しく熱く語っている。

「聖治」

 名前を真剣な声で呼ばれる。

「お前は馬鹿だ、心底大馬鹿野郎だと思ったよ。だが、そんなお前でもそっちに付くって言うならよ、無視できるかよ。……一回だけだ。それだけ付き合ってやる」

 そうい言うと星都はそっぽを向いてしまった。俺が沙城さんを選んだことが多少気に食わないようだがこいつの気持ちは分かった。
 ほんと、いい友達だよ。

「ありがとな」
「ふん」

 こんな調子だけど、俺のことを友達だと認めてくれているんだな。

「力也も、いいのか?」
「正直言うと怖いけどね、僕も星都君と同じ気持ちなんだ。友達を置いてなんていけないよ」
「まったく」

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