セブンスソード
12
あれ、驚いている? でもどうしてだろう。以前、どこかで会ったことでもあっただろうか。
彼女はずっと俺を見つめている。俺は左右を確認する。それから後ろにも振り返るが誰でもない。やっぱり俺を見つめている。
ただならない雰囲気にみんなも何事かざわざわしている。けれどいったいなんなのかなんて俺にも分からない。
しばらくすると彼女はちょっと嬉しそうに笑い俺から視線を切った。
「それじゃみんな、沙城さんと仲良くしてやれよ」
いつもと違うホームルームは彼女の華々しい登場と謎を残して終わっていった。
それから一限目が始まるまでの僅かな間、転校生である沙城さんの周りにはすでに女子たちが芸能人に群がるマスコミのように囲っていた。あれこれと質問を受けている。たいした人気ぶりだ。
「おい」
と、そんな様子を机に座りながら遠目に見ている俺にも声がかけられる。
誰だか分かる。案の定振り返ればそこには星都がいた。
「がっかりだ。がっっっかりだよ聖治!」
「なにがだよ……」
脈絡(みゃくらく)もなく落胆するなよ、俺がなにをしたというんだ。
「どういうことなんだ」
「お前がどういうことなんだ」
こいつは今不審な行動をしているという自覚があるのか?
「どうもこうもない! さっきのあれはなんなんだよ!」
星都は大声で言う。なんか必死だ。
さっきのあれというのは転校生が俺の顔を見て驚いていたことか? 星都は転校生にずいぶん期待していたからな、もしかしたら妬いているのかもしれん。そうでなくてもあんなのは誰だって気になる。俺だってそうだ。
「知らないよ。俺だってどういうことか聞きたいくらいだ」
「知らないわけないだろ、ユニバーサルスタジオでミッキーに出会ったような驚きようだったんだぞ? んだよ、顔か? けっきょく顔なのか!?」
「それこそ知るか」
なんだか勝手にボルテージを燃やしている。頼むから俺のところまで延焼しないでくれよ?
「俺お前のことちょっと嫌いになったぜ」
「なんでだよ!」
言いがかりだろ、それにしてもひどいぞ。
「ったく、不公平だよなー」
星都はそうぼやきつつ自分の席に戻っていった。その都度俺を睨むように振り返ってきたのが心外だが。
とはいえ星都が去ったあとで俺はもう一度彼女のことを見てみた。
沙城香織。今も女子たちに囲まれ話をしている時期はずれの転校生。どうして俺を見て驚いていたのか、けっきょくその真相を聞くことはできなかった。
今日も一日が終わっていく。帰るか。机の中身を鞄にしまい立ち上がる。
「あの!」
「え?」
そこで声をかけられた。
その声は、沙城さんだった。
「えっと」
彼女は一人で立っている。今までいた取り巻きはいない。いったいどうしたんだろうと彼女の背後を見てみるとなんだかこちらを見ながらひそひそと話している。きっと俺と話をするために断ってきたみたいだ。
でもどうして?
「なにかな?」
いきなり話しかけられてちょっと緊張する。近くで見て改めて思うが沙城さんは可愛い。そんな子から話しかけられれば俺だって少しは嬉しい気持ちになったりする、というのを否定はしない。
「あ、あの、その」
彼女は両手を前で振ったり目が泳いだりと忙しく動いている。照れてるのかな? それから俺を見るとおずおずと言い出した。
「二人で話がしたい、と思うんだけど……」
その言葉に顔を左右に動かし辺りを見渡す。彼女と俺が話をしているのは教室中のみんなに見られている。それが二人きりで話をしたいと彼女から誘われたもんだからみんながさらにひそひそと話している。
「う、うん。俺はべつにいいけど」
周りが気になるけどだからといって断るのはあれだよな。
俺は沙城さんと一緒に階段の踊り場へと来ていた。たまに人が通るがここでいいだろう。俺は沙城さんと向かい合う。
「…………」
こうして間近で、しかも向かい合って見てみて思う。
なんというか、本当にかわいい子だな。目は大きいしそれに雰囲気っていうのかな、美人だからって棘があるとか下品な感じはぜんぜんしない。品があって、ほんとうに可愛らしい。
「あの」
「う、うん」
変なことを考えていたから声が上ずってしまう。
彼女はずっと俺を見つめている。俺は左右を確認する。それから後ろにも振り返るが誰でもない。やっぱり俺を見つめている。
ただならない雰囲気にみんなも何事かざわざわしている。けれどいったいなんなのかなんて俺にも分からない。
しばらくすると彼女はちょっと嬉しそうに笑い俺から視線を切った。
「それじゃみんな、沙城さんと仲良くしてやれよ」
いつもと違うホームルームは彼女の華々しい登場と謎を残して終わっていった。
それから一限目が始まるまでの僅かな間、転校生である沙城さんの周りにはすでに女子たちが芸能人に群がるマスコミのように囲っていた。あれこれと質問を受けている。たいした人気ぶりだ。
「おい」
と、そんな様子を机に座りながら遠目に見ている俺にも声がかけられる。
誰だか分かる。案の定振り返ればそこには星都がいた。
「がっかりだ。がっっっかりだよ聖治!」
「なにがだよ……」
脈絡(みゃくらく)もなく落胆するなよ、俺がなにをしたというんだ。
「どういうことなんだ」
「お前がどういうことなんだ」
こいつは今不審な行動をしているという自覚があるのか?
「どうもこうもない! さっきのあれはなんなんだよ!」
星都は大声で言う。なんか必死だ。
さっきのあれというのは転校生が俺の顔を見て驚いていたことか? 星都は転校生にずいぶん期待していたからな、もしかしたら妬いているのかもしれん。そうでなくてもあんなのは誰だって気になる。俺だってそうだ。
「知らないよ。俺だってどういうことか聞きたいくらいだ」
「知らないわけないだろ、ユニバーサルスタジオでミッキーに出会ったような驚きようだったんだぞ? んだよ、顔か? けっきょく顔なのか!?」
「それこそ知るか」
なんだか勝手にボルテージを燃やしている。頼むから俺のところまで延焼しないでくれよ?
「俺お前のことちょっと嫌いになったぜ」
「なんでだよ!」
言いがかりだろ、それにしてもひどいぞ。
「ったく、不公平だよなー」
星都はそうぼやきつつ自分の席に戻っていった。その都度俺を睨むように振り返ってきたのが心外だが。
とはいえ星都が去ったあとで俺はもう一度彼女のことを見てみた。
沙城香織。今も女子たちに囲まれ話をしている時期はずれの転校生。どうして俺を見て驚いていたのか、けっきょくその真相を聞くことはできなかった。
今日も一日が終わっていく。帰るか。机の中身を鞄にしまい立ち上がる。
「あの!」
「え?」
そこで声をかけられた。
その声は、沙城さんだった。
「えっと」
彼女は一人で立っている。今までいた取り巻きはいない。いったいどうしたんだろうと彼女の背後を見てみるとなんだかこちらを見ながらひそひそと話している。きっと俺と話をするために断ってきたみたいだ。
でもどうして?
「なにかな?」
いきなり話しかけられてちょっと緊張する。近くで見て改めて思うが沙城さんは可愛い。そんな子から話しかけられれば俺だって少しは嬉しい気持ちになったりする、というのを否定はしない。
「あ、あの、その」
彼女は両手を前で振ったり目が泳いだりと忙しく動いている。照れてるのかな? それから俺を見るとおずおずと言い出した。
「二人で話がしたい、と思うんだけど……」
その言葉に顔を左右に動かし辺りを見渡す。彼女と俺が話をしているのは教室中のみんなに見られている。それが二人きりで話をしたいと彼女から誘われたもんだからみんながさらにひそひそと話している。
「う、うん。俺はべつにいいけど」
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俺は沙城さんと一緒に階段の踊り場へと来ていた。たまに人が通るがここでいいだろう。俺は沙城さんと向かい合う。
「…………」
こうして間近で、しかも向かい合って見てみて思う。
なんというか、本当にかわいい子だな。目は大きいしそれに雰囲気っていうのかな、美人だからって棘があるとか下品な感じはぜんぜんしない。品があって、ほんとうに可愛らしい。
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変なことを考えていたから声が上ずってしまう。
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