VRMMO生活は思ってたよりもおもしろい
84.アゲハ蝶の捜索 2
やり取りもそこそこに、アゲハ蝶の捜索を再開した僕達は引き続きアゲハ蝶を見なかったかを聞きながら探し回った。
すると、一人のプレイヤーの人が耳寄りな情報を持っていた。
「アゲハ蝶かはわからないですが、蝶々がヒラヒラと西へ向かって飛んでいくのを見ましたよ」
それを聞いた僕達は、早速ここから西にかけての範囲を探すことにした。
なんか、行方不明になった猫の捜索をしている探偵の気分になってきたんだけど……。
まぁ、素人だから探偵とは程遠いけどね。
だいたい、猫と違って蝶々は小さい上に飛ぶから推理のしようがない。
猫の場合は、縄張りがどうとか習性を考慮に入れて探せば案外見つかるものだけど、如何せん相手は「あっちにふらふら、こっちにふらふら……」とあてもなく大きくさまようように飛ぶアゲハ蝶だ。
猫と違って思考力が無いから、気の赴くまま飛んでどこかに止まる、を繰り返しているに違いない。
ただ、それがわかっていたとしても、見つけられることに繋がらないんだよね。
それを考えると、探偵ってすごい職業だなと思う。
そんなことを思いつつアゲハ蝶を探すも、なかなか見つからない。
「見つからないですね……」
「そうだね……。これは見つけるの結構骨が折れるな……」
「僕のアゲハ蝶……」
僕とモモが会話をしている傍らで、ユキヤ君が遠い目をしながらそんなことを呟いた。
「大丈夫ですよ。リュウさんが必ず見つけてくれますから」
「それはさすがに買い被りにもほどが……」
「お願いしますっ! 牛若丸さん!」
「……はぁ。まぁ、頑張るけど……」
さすがにここまで探して居ないとなると、望み薄な気がしなくもない。
「本当、どこに行ったのかな……」
そう呟きながら二人より先に歩き始めると、しばらく沈黙が続いた後、後ろから二人が「あぁ!」と叫んだ。
その感じだともしかして……
「もしかしてアゲハ蝶、僕の背中にいる?」
「はい、思いっきり止まってます」
「ほら、やっぱりリュウさんが見つけてくれました! だから私はリュウさんが見つけてくれるって言ったんですよ!」
「いや、今見つけたの二人だよね? 僕じゃないよね?」
「いいんですよそんな細かいことは。細かいこと気にしてるとハゲますよ? ちなみに私は、たとえリュウさんがハゲても受け入れるので、安心してハゲてください」
「あ、そう……」
安心してハゲてくださいって……僕、まだハゲたくないんだけど。
せめておじさんくらいの歳になってから……って、違う! 今はそんなことを考えている場合じゃなかった!
背中のアゲハ蝶をなんとかしないといけないんだった!
でもこれ、自分じゃなんともできないやつだ。
だって、どこに止まってるのかもわからないから、手の伸ばしようがない。
「ユキヤ君でもモモでもいいからアゲハ蝶取ってよ」
「あ、そうでした。今取りますね」
そう返事をしたユキヤ君が近づいてきて、アゲハ蝶を僕の背中から取った。
「僕のアゲハ蝶だ……! よかった、無事で……!」
感極まった感じの声を出すユキヤ君。
正直、蝶々にここまで思い入れがあるのは理解できないけど、気持ちはわからないでもない。
なんてことを思っていると、ぐるんと向きを変えられた。
そこには、ユキヤ君が嬉しそうな表情で僕を見上げていた。
「ありがとうございました! お陰でアゲハ蝶を見つけられました! お礼にこれをどうぞ!」
そう言ってユキヤ君がアイテム欄から何かを取り出して渡してきた。
何かと思って見てみると、それは薬草らしかった。
「これは?」
「これは、“回復草(上)”と言って、上級の回復ポーションの材料になる薬草です。良ければ使ってください」
「そんな良いものを……ありがとう」
「では、僕はこれで。お会いできて嬉しかったです」
そう言って、僕とモモが挨拶を返そうとする前に行ってしまった。
取り敢えず、貰った薬草をアイテム欄に仕舞い、モモと一緒にギルドホームへ行くことにしたのだった。
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