VRMMO生活は思ってたよりもおもしろい
78.叔母さんのお店へ
「いや、本当凄かったですよ、龍さん!」
「ふつうあんな至近距離で面を打たれたら抜き胴なんてできないんだけどな……」
そう言ってきたのは復活したお義兄さんだった。
お義兄さんの言葉に、先生がこう続けた。
「確かにな……。竹刀の振るスピードが尋常じゃなかったからできるんであって、普通の人ならあのまま面打たれて終わってたな」
先生の言う通り、たぶん普通の人ではできないと思う。
できるとしたら、僕と同じ境遇の人ぐらいだろう。
その後、僕と龍二くんの試合を見て興奮した無心道場の門下生達が試合をしたいと言ってきたので、順番に一人ずつ全員を相手にすることになった。
◆◇◆◇◆
全員との試合が終わると、ちょうど昼になったので稽古終了となった。
稽古は、また午後3時に再開することになっているそうなので、昼休憩と言っても過言ではない。
ちなみに、試合の結果は全試合僕が勝利した。
門下生達との試合が終わったら、今度は先生が試合をしたいと言ってきて相手することになって吃驚(ビックリ)したけど。
着替えを終え、昼食をどうするか速人達に聞いてみると、龍二くんが居るんだから叔母さんのお店一択、と即答された。
そこへ、叔母さんが龍二くんを迎えに来た。
「あら? 龍くん達、来てたの?」
そっか、龍二くんが暴走ぎみになってたこと知らないのか。
そう思った僕は、ここへ来た理由を話した。
ついでに僕と試合をしたことも話しておいた。
「龍二! なにやってるの!」
事情を聞いた叔母さんが龍二に怒鳴る。
龍二は、少し怯えている様子だ。
可哀想だと思って庇おうと口を開こうとしたその時、叔母さんがこう言った。
「龍くんに勝たなきゃ通ってる意味ないでしょ! だから無理やり連れてきたのに!」
それを聞いた僕と龍二くんと速人達4人。
あっ、そういう魂胆だったんだ……。
「で、でも叔母さん? 道場の人達に迷惑をかけたんですけど……?」
「なに当たり前のこと言ってるの? それも見越して連れてきたんだから、当然でしょ?」
「そ、そうですか……」
あっさりと道場の人達の犠牲は計画の内だったと言ってのける叔母さん。
それでいいのか……。
そこへ、タイミングを見計らっていたのか、速人が叔母さんに話し掛けた。
「あの、昼をお店で食べたいんですけどいいですか?」
「うちで?」
「はい」
「いいわよ。まだ席空いてるし」
叔母さんの返事を聞いた速人達は大喜びだった。
叔母さんのお店に着き中へ入ると、人気なのと昼時なのが重なって、ほとんど満席だった。
都合よく5人座れる席が空いていたので、そこへ座った。
席順は、速人と楓季と輝美が気を使って3人で座ったので、僕と桃香の2人で座ることになった。
それから各々自分が食べたいものを注文し、来るのを待った。
しばらくして、注文したものが運ばれてきてテーブルに並べられた。
僕はもちろんオムライスだ。
そこへ、龍二くんがやってきて、一緒に食べたいと言ってきた。
了承して僕の隣へ座ってもらい、オムライスを食べようとすると、スプーンが無かった。
おかしいな……オムライスと一緒に来てたはずだけど……。
ん? しかも、一口分無くなってる!?
そう思っていると、桃香に話し掛けられた。
「龍さん、龍さん。龍さんのオムライスはここですよ」
「へっ? むぐっ……!?」
桃香の方へ顔を向けた瞬間に何かを口に押し込められた。
いや、正確に言えば、向いた時にスプーンに乗せられた一口分のオムライスが待ち構えていて、反射的に口が開いてスプーンを咥えてしまったの方が正しいけど。
桃香によってスプーンが抜かれ、僕は口に入ったオムライスを咀嚼して飲み込んだ。
「ちょっ、桃香っ、スプーンを不意打ちで口の中へ入れるのは危ないんだよ!?」
「龍さんなら大丈夫ですよ。現にスプーンが奥まで入らないように咄嗟に咥えてましたし」
「その信頼は、どこから来るの……?」
「まあまあ、お詫びに全部私が食べさせてあげるので許してください」
あ、これ、絶対計算ずくだったな。
桃香の顔が、そう物語ってる。
結構人の目があるけど、桃香は気にしていない様子だったので、僕は食べさせてもらうことにした。
その後、速人達からは呆れられ、叔母さんにはニマニマとした顔で観察され、龍二くんは僕に食べさせてほしいと言ってくるのだけど、それはまた別の話。
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