VRMMO生活は思ってたよりもおもしろい
74.合同でクエスト 7
シアンのカッコいいところを見れたのはいいけど、動けないことに変わりはない。
『バーサーカーコング』は、自分のパンチが止められたことに怒り、今度は両手を頭上で組んでシアン目掛けて振り下ろしてした。
それに対しシアンは、頭突きで振り下ろされてくる組まれた両手を突き上げた。
結構思いっきり突き上げたので、『バーサーカーコング』の組まれた両手が逆再生のように戻っていき、最終的に地面に仰向けに伏した。
逆再生と言っても、振り下ろされた時の速度の倍くらい速かったけど……。
そんな速度なため、『バーサーカーコング』は地面に物凄い勢いで頭をぶつけた。
頭をぶつけた際の構図は、まるでブリッジをしているかのようだ。
シアンは、ブリッジ状態になった『バーサーカーコング』の真上まで行くと、土手っ腹に頭突きをかました。
すると、ブリッジ状態だった『バーサーカーコング』の体が、今度は海老反り状態になった。
よ、容赦ないな……シアン。ブレスを使って一瞬で終わらせないところを考えると、『バーサーカーコング』をいたぶってるんじゃないかと思う。
理由はわからないけど。
当のシアンは、さっきからずっと『バーサーカーコング』に何度も頭突きをかましていた。
『バーサーカーコング』のHPはと言うと、減りは速いが一気に0になることはない。
これは……完全に加減してるな。やっぱりいたぶってたわ。
そして、止めとばかりに最後にブレスを喰らわせて『バーサーカーコング』を倒し、それと同時に動けるようになった。
「キュ!」
「うおっと」
倒し終えたシアンが僕の胸に飛び込んできたので、驚きつつも受け止める。
そこで、なんでいたぶっていたのかを聞いてみたところ、“僕を動けなくした上で攻撃しようとしたから”だそうだ。
ええ子や……! めっちゃええ子や!
あっ、またエセ関西弁が出てしまった……。
しかし、そう思ったのは一瞬のことで、すぐに嬉しさのあまりシアンを撫で回したり顔を擦り合わせたりしまくった。
そこへ、モモがやって来てこう言った。
「リュウさんっ、シアンばかりズルいです。私も撫でてください!」
「えっ?」
「私というものがありながら、リュウジくんとかリュウジくんとかリュウジくんとか、あと自称トッププレイヤーさんとかと話してばかりじゃないですか! もっと私を構ってください!」
ヤバッ、失念してた……。
というか、何気にマクロのことをディスっていくモモさん。
いや、今はそれどころじゃない。
「ご、ごめん……」
「悪いと思っているなら撫でてください! さあ!」
撫でてもらうための口実だったのではと思うくらいに撫でてほしいオーラを出すモモ。
喜んでもらえるならとモモの頭を撫でてやると、嬉しそうにした後こう言った。
「現実でも撫でてくださいね」
「あ、はい……」
そりゃそうだよね……ここゲームの中だし、撫でられてる感触だけじゃ満足しないよね。
モモとのやり取りをしている間、他のみんなの間ではこんなやり取りが繰り広げられていた。
「リュウの彼女って、大胆だな」
「だよな。俺らの前で堂々とあんなこと言えるんだもんな……」
「というか、何気に俺のことディスってたよな?」
「さすがリュウ君の彼女さん。マクロの扱いをよくわかってる」
「そりゃそうですよ。モモさんの頭の良さは学年トップですからね」
「全教科満点だしな」
「家事はできないけれどね」
「リュウもリュウで大胆だよな……」
「俺らのこと忘れてるんじゃね?」
「完全に二人だけの世界に入ってるよな」
そんなやり取りが繰り広げられていることなど露知らず、僕はモモの頭を撫でてあげていた。
そこへ、いつの間に探しにいっていたのか、リュウジくんが「モンスターみつけたよ!」と叫ぶ声が聞こえてきた。
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