異界の英雄王~最強の英雄を創るスキルで異世界無双~

猫丸88

第1話 授かったスキルは




「真田陸さん、あなたはお亡くなりになられました」

 どこまでも続くような白い部屋。
 目の前には目も眩むような美女。
 そんな彼女の言葉を俺―――真田陸はどこか他人事のように聞いていた。

 学校からの帰り道で乗用車が突っ込んできたところまでは覚えている。
 そこから先は記憶がない。
 思い出せないけどロクな記憶でもなさそうだし考えるのは止そう。

 俺はそれまでの人生を思い返す。
 
 母さんは俺が小学生になる前に亡くなった。
 父親はそれが原因で酒に溺れるようになっていった。
 会社でクビになったりと色々な不幸が重なったらしい。
 まあ、だからと言って酔った勢いで暴力振るわれちゃいい迷惑だ。

 こっちから話しかけることはなかった。
 どうせ殴られるのが目に見えてたからな。
 傷が増えたせいで不良だと誤解されたりしたせいで友達もできなかった。
 そんなロクでもない人生。
 
 なので今思えば特に未練もない。

 死ぬならそれでもいいかもって思ったくらいだ。
 まあしいて言うなら読みかけの小説の続きが気になるけどな。

「ちなみに今この空間は精神を安定させる力が作用しています」

「ああ、だからこんなに落ち着いてるんですね」

 確かに普段通りなら混乱しまくって話にならないかもしれないしな。
 しかし、ここは死後の世界というやつだろうか。
 自分の体を見てみると何もなかった。
 光の玉? がふわふわ浮かんでる状態みたいな。
 となると俺はこれから天国か地獄に行くのか?

「あなたにはこれから元いた場所とは違う世界へ行ってもらいます」

「ん? 異世界ってことですか?」

「そうです。真田さんの読まれていたファンタジー小説というものによく出てくる展開を想像してもらえれば分かりやすいかと」

「………」
 
 さすがに驚いた。
 死後の世界まではまだ分かるが、まさかこんな展開が現実に存在するとは。
 それでもやはりこれだけ精神が安定しているのは彼女の言う力のせいだろうか。

「その世界に行くことはもう決定事項なんですか?」

「そうですね。申し訳ありませんがもう決められたことなので……地球の人口が増えすぎたので魂の量を調整するために地球でお亡くなりになった魂をほかの世界へと送っているのです」

「えーと、ほかにもいくつか質問いいですか?」

「構いませんよ」

 俺は彼女に―――仮に女神様とするとしよう。
 女神様に色々なことを聞いた。

 別の世界に行く魂はいくつあるのか―――答えられない。ただし俺がこれから行く世界に送られる魂は俺だけ。

 転生と言う形になるのか―――これについては選べるらしい。転生では記憶がリセットされる。

 何か特別な力などは貰えるのか―――その世界に合ったものが貰える。ただし力はその人間の持つ魂の才能に左右されるため選ぶことは出来ないらしい。

 使命や義務などは発生するのか―――しない。その世界に行ったらどう生きようと自由。

「ほかに質問はありますか?」

「転移という形にしたいんですが行き先は選べるんですか?」

「選べません。完全にランダムになります。ただし転移した瞬間に突然死亡するような危険地帯は除外されます」

 ほかにもその世界のことを聞こうとする。
 しかし、女神様曰くこれから行く世界のことは教えられないらしい。
 ということは情報0ってわけか。
 
「質問は以上ですか?」 

「はい」

 もうない……よな?
 あらかた聞きたいことは聞けたはずだ。

「それでは能力を授けます」

 体が光る。
 淡い薄い赤の発光。
 
「……これは」

 そこで女神様が初めてその美貌に僅かな驚きを浮かべた。

「どうかしました?」

「……いえ、なんでもありません。失礼しました。与えられるスキルは一つになります。ご確認ください」

 ……一つか。
 役立つのだといいけどな。
 ファンタジー小説好きの俺としてはやっぱり強い能力とかに憧れるけど……
 まあ、高望みはしないようにしよう。
 生きていける程度に有用なスキルなら十分だ。

 赤い発光がやがて形をつくり、文字へと変化していく。
 ちょっとした感動を覚えながらそれを確認する。
 日本語ではない。
 見たことのない文字……だけど読める。
 俺はそこに書かれた能力名を確認した。



 真田陸様はエクストラスキル―――『英雄創造』を取得しました。










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