激補助のショートリリック
トリニティ:Delicious and Refreshing(おいしさと、さわやかさ)
spoon配信者『つちのこ』さんよりのリクエスト
お題:コーラ、ピザ、旅行
ジャンル:ライフスタイル
昼過ぎに乗った電車の窓から見えるのは、いつもとは反対方向に続く街並みだった。
仕事の疲れが押し寄せ、転職に悩み、生活への圧迫感が混み上がる…
気付いた時に私が握っていたのは、いつぞやの誰かに教えられた宛先を縛られないひとつの紙切れ。
『青春18切符』と、書かれていた。
何も考えず、何も思いつかず…
いつもとは違うプラットフォームにとりあえずで降りてみては、聞きなれない終着地を選ぶ。
その時カバンの中に入っていたのは、いつも心の頼りにしていた赤と黒がトレードマークのドリンクだった。
チャポン…プシュッ
『コーラ』を1口、また1口。
電車に乗り、色々なものから『1度離れる』
思えば就職、…大学、進学。
部活。…恋愛に友達、家族。
いつも、人生においてこの飲み物が私を支えてくれた。
コーラを1口。
…また1口。
そう言えば、食事も済ませて来なかった。電車に乗る前にもう少し余裕があったなら、何か買うなりして来ただろう。カバンにコーラをしまい込むと、またしばらく窓の外を眺めていた。
「…ピザ、食べます?」
「えっ?」
気付かなかったが、電車が駅を出発し、数駅進むうちに隣に人が座っていた。
外国の…男性の方だった。髭は生えて居るものの、目は幼い感じがする。一体何歳ぐらい年上なのだろうか。
「ジャポネのピッツァ、美味しい。でも少し大きい」
外国の方は多分注文の仕方を間違ったのだろう。1人で食べるにしては少し大き過ぎるピザを持っていて、それを持て余していた。
「どうです?」
「あの…はい。」
その屈託のない笑顔に、思わず受け取ってしまった。
1口かじる。チーズの味、トマトの酸味、バジルと香辛料。
思わずこちらの顔も綻ぶ。
「ありが…とう、ございます。えと…旅行ですか?」
「いえ、ビジネスです。もう何年もです。」
「そう…なんですね」
外国の方は窓から見える景色を見ながら、ピザを頬張る。
「でも、何年経っても、故郷の味、恋しいです。」
そう言ってその方はまたニコッと笑った。
「あなたはどうです?」
「えっ!?」
突然聞き返されて、何の事か分からず戸惑う。
「旅行してますか?」
「あ…あぁ、そう言う事。えーっと」
そう言って少し返事を考える。
「旅行…そんな感じです。たぶん、してます」
「それは良い!素敵な出会い!きっとあります!」
「そう…ですかね?」
そう言いながらピザを食べ進めると、その男性はオーバーなリアクションでカバンを漁りだした。
「ごめんなさい!ピザ食べるのに飲み物用意しなかった!ウッカリ!」
「あ、いえ、自分のありますんで!…むしろ別でもう一本あるんでどうです?…コーヒーですけど。」
「ありがとうですいただきます。」
たまたま間違って購入した缶コーヒーが役に経つ時が来た。
いつ買ったかも忘れた、ぬるくなったコーヒーを差し出すと嬉しそうに飲んでいた。
それから色々と悩んでいたが、その人と他愛も無い事を話して行くうちに少しずつ気が楽になってきた。
そのうち、電車はある駅で止まる。
「あ、ここ、降ります!」
「そうなんですか?ピザありがとうございました。」
「…元気、でた?」
「え?」
ニコリと笑うと、その外国の方は荷物をまとめる。
「最初見た時、泣いてる思った。だからピザ上げた。」
「えっ!そうだったんですか?」
「泣いてる人助けるって、故郷のママに教えられた。だから…」
「えっあっちょっ!!」
男性は残りの分のピザを箱ごと私に無理やり持たせた。
「だから、今度は、アナタが誰かに『ピザ』渡して。旅行もエンジョイしてね!!」
「あっ!」
─プシュン
電車の扉は締まり、その男性は笑顔で手を振って視界から消えていった。まともにお礼も言う事が出来なかったのだが、もうこの人とは会えないと言う事だけは何となくで分かった。
名前も知らない初めてあった人に優しくされるなんて機会、そうそうない。
「旅行…旅行じゃないけど…でもいっか。これから旅行にしよっか。」
とりあえず、宛も無いけど次の大きな駅で止まって降りてみよう。
最初この電車に乗る時の彼女の顔は暗かった。でも今はどうだろうか。自分の表情なのでそれを窺い知る事は出来ない。
でも、そんな彼女の横には…
『ピザ』の箱と、『コーラ』のボトルが置いてあった。
END
<あとがき>
どうも、補助席です。
私は最近spoonというアプリでラジオ番組を配信しています。
今回はそこで知り合った方からのリクエストでした。久しぶりにトリニティが書けて私も満足しています。
さて、今回のトリニティについては『コーラ、ピザ、旅行』と言うリクエストで書かせて貰いました。
小説のタイトルは『Delicious and Refreshing』(おいしさとさわやかさ)
これ、コカ・コーラ社で最も長く使われたキャッチコピーのひとつになります。
主人公が見知らぬ人に優しくされて、その後に気分を一新して前を向く。
その様にちなんで付けました。
つちのこさん。リクエストありがとう(   ¯꒳¯ )b✧
spoon配信者の方でこれを読んでくれた方!これからもどんどんリクエストお答えしますんでどうかよろしくお願いします!
それでは、ばいちゃ
〜(´ε` )
お題:コーラ、ピザ、旅行
ジャンル:ライフスタイル
昼過ぎに乗った電車の窓から見えるのは、いつもとは反対方向に続く街並みだった。
仕事の疲れが押し寄せ、転職に悩み、生活への圧迫感が混み上がる…
気付いた時に私が握っていたのは、いつぞやの誰かに教えられた宛先を縛られないひとつの紙切れ。
『青春18切符』と、書かれていた。
何も考えず、何も思いつかず…
いつもとは違うプラットフォームにとりあえずで降りてみては、聞きなれない終着地を選ぶ。
その時カバンの中に入っていたのは、いつも心の頼りにしていた赤と黒がトレードマークのドリンクだった。
チャポン…プシュッ
『コーラ』を1口、また1口。
電車に乗り、色々なものから『1度離れる』
思えば就職、…大学、進学。
部活。…恋愛に友達、家族。
いつも、人生においてこの飲み物が私を支えてくれた。
コーラを1口。
…また1口。
そう言えば、食事も済ませて来なかった。電車に乗る前にもう少し余裕があったなら、何か買うなりして来ただろう。カバンにコーラをしまい込むと、またしばらく窓の外を眺めていた。
「…ピザ、食べます?」
「えっ?」
気付かなかったが、電車が駅を出発し、数駅進むうちに隣に人が座っていた。
外国の…男性の方だった。髭は生えて居るものの、目は幼い感じがする。一体何歳ぐらい年上なのだろうか。
「ジャポネのピッツァ、美味しい。でも少し大きい」
外国の方は多分注文の仕方を間違ったのだろう。1人で食べるにしては少し大き過ぎるピザを持っていて、それを持て余していた。
「どうです?」
「あの…はい。」
その屈託のない笑顔に、思わず受け取ってしまった。
1口かじる。チーズの味、トマトの酸味、バジルと香辛料。
思わずこちらの顔も綻ぶ。
「ありが…とう、ございます。えと…旅行ですか?」
「いえ、ビジネスです。もう何年もです。」
「そう…なんですね」
外国の方は窓から見える景色を見ながら、ピザを頬張る。
「でも、何年経っても、故郷の味、恋しいです。」
そう言ってその方はまたニコッと笑った。
「あなたはどうです?」
「えっ!?」
突然聞き返されて、何の事か分からず戸惑う。
「旅行してますか?」
「あ…あぁ、そう言う事。えーっと」
そう言って少し返事を考える。
「旅行…そんな感じです。たぶん、してます」
「それは良い!素敵な出会い!きっとあります!」
「そう…ですかね?」
そう言いながらピザを食べ進めると、その男性はオーバーなリアクションでカバンを漁りだした。
「ごめんなさい!ピザ食べるのに飲み物用意しなかった!ウッカリ!」
「あ、いえ、自分のありますんで!…むしろ別でもう一本あるんでどうです?…コーヒーですけど。」
「ありがとうですいただきます。」
たまたま間違って購入した缶コーヒーが役に経つ時が来た。
いつ買ったかも忘れた、ぬるくなったコーヒーを差し出すと嬉しそうに飲んでいた。
それから色々と悩んでいたが、その人と他愛も無い事を話して行くうちに少しずつ気が楽になってきた。
そのうち、電車はある駅で止まる。
「あ、ここ、降ります!」
「そうなんですか?ピザありがとうございました。」
「…元気、でた?」
「え?」
ニコリと笑うと、その外国の方は荷物をまとめる。
「最初見た時、泣いてる思った。だからピザ上げた。」
「えっ!そうだったんですか?」
「泣いてる人助けるって、故郷のママに教えられた。だから…」
「えっあっちょっ!!」
男性は残りの分のピザを箱ごと私に無理やり持たせた。
「だから、今度は、アナタが誰かに『ピザ』渡して。旅行もエンジョイしてね!!」
「あっ!」
─プシュン
電車の扉は締まり、その男性は笑顔で手を振って視界から消えていった。まともにお礼も言う事が出来なかったのだが、もうこの人とは会えないと言う事だけは何となくで分かった。
名前も知らない初めてあった人に優しくされるなんて機会、そうそうない。
「旅行…旅行じゃないけど…でもいっか。これから旅行にしよっか。」
とりあえず、宛も無いけど次の大きな駅で止まって降りてみよう。
最初この電車に乗る時の彼女の顔は暗かった。でも今はどうだろうか。自分の表情なのでそれを窺い知る事は出来ない。
でも、そんな彼女の横には…
『ピザ』の箱と、『コーラ』のボトルが置いてあった。
END
<あとがき>
どうも、補助席です。
私は最近spoonというアプリでラジオ番組を配信しています。
今回はそこで知り合った方からのリクエストでした。久しぶりにトリニティが書けて私も満足しています。
さて、今回のトリニティについては『コーラ、ピザ、旅行』と言うリクエストで書かせて貰いました。
小説のタイトルは『Delicious and Refreshing』(おいしさとさわやかさ)
これ、コカ・コーラ社で最も長く使われたキャッチコピーのひとつになります。
主人公が見知らぬ人に優しくされて、その後に気分を一新して前を向く。
その様にちなんで付けました。
つちのこさん。リクエストありがとう(   ¯꒳¯ )b✧
spoon配信者の方でこれを読んでくれた方!これからもどんどんリクエストお答えしますんでどうかよろしくお願いします!
それでは、ばいちゃ
〜(´ε` )
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コメント
つちのこ
補助さん!!
すっごく良かった!「青春18きっぷ」ってこの間話題になってたのですよね?読んでて笑っちゃいましたww
外国の方から貰ったピザ、補助さんにも1つだけ!分けてあげるね♡
ありがとうございます(๑˙❥˙๑)♡