liquid

じゃぐち

蛇女

ゴゴゴという回旋する機械音が聞こえた。それを錆びた室外機か換気扇によるものだと想像していた。何故、私が自分の目で確かめようとしなかったのか。それは、確かめられる状況ではなかったのだ。

  椅子に座らされ、手足を背もたれ部分や脚部に括り付けられていた。顔には薄い布生地の様な物で目を覆われ、口には猿轡さるぐつわをされているという監禁状態だった為である。

  犯人は、この手の事を何度か経験しているのだろうと思った。薄い布の為、対象者は人影、物影しかとらえる事が出来ない。人は普段、視覚的情報に頼っている為、見えない部分を補おうとする。その作用を利用して、絶望を与える方法がある事を私は知っていた。しかし素人には、まず思い付かない。

  また、私の様な平均的な男性の体を簡単に運び出した事だ。相手が抵抗する場合が多い為、特別な理由が無ければ、力のある様な男性を襲う事は無い。その上で私の体には、抵抗した際に発生する爪の違和感、傷の痛みも無い事から、私は無抵抗だった事が伺える。これは、筋弛緩剤等の薬剤の利用が考えられる。これもまた、素人は簡単に用意出来ない。

  また、私の運び出されたという記憶も、犯人を見たという記憶も無い。則ち、記憶操作まで出来る点だ。勿論、素人には出来ない。それら全てを加味した判断だ。

 首を回し、辺りを確認する。風鳴り音が聞こえれば、カーテンをしていても窓が存在する事が分かる。しかし、聞こえる事は無く、天井部のみ明かりが灯っている為、地下室の様な部屋だと分かった。その様な閉鎖的空間に気は滅入り、現実世界という外向的思考から、内的な思考へ、つまり過去へと思考は移行する。

 犯人に全く身に覚えが無い訳では無い。私や家族に起きた事が、この出来事へ関連するのではないだろうか。


―― 私の妹は、不思議な現象に遭っていた。時は1年前。高校2年生の私は、普段通り、美術部の練習を終え、家路を急いだ。期末テストが有る事で、夕方5時頃に帰れたはずだ。今と同じ8月のこの時期は、まだ日が明るく、その日は夕焼けが綺麗だった。明日は晴れだ。なんて浮かれていた。学校と家との距離は、然程さほどの距離が無く、部活に入っていない妹は、テスト終わると直ぐに帰宅した。真面目な妹だ。寄り道はしなかっただろう。

 妹は、両親の代わりに約5年程、保護者を務めてくれた老夫婦の死去後、晩飯を作る役割が有った。当時15歳の妹は、気丈に振る舞っていた。

  待たせてはいけない。そう思い、いつも以上に速く走った。

 ようやく家に到着する。何故か玄関門の施錠が解除され、玄関口は半開きだった。妹とは異なる靴跡を発見し、淡い不安感を感じる。

《セールスお断り、番犬注意、警察巡回マーク等を家の前に貼り付けていた。最近、物騒な世の中で、手口が不明な犯罪が多種多様横行していた為だ。妹と帰りの時間を合わせたい気持ちは有ったが、気を遣うのは止めて欲しいという頼みから、部活に没頭する自分がいた》

 淡い不安感が確信に変わったのは、玄関を開けてなお、靴跡は存在し、その大きな靴跡は、上りかまちを超え、廊下に続き、居間へと連なる事からだ。

 自分の家だというのに、息を潜め、足音を立てずに足を摺る様にして忍び寄った。自然と口を塞いでいた為か、空気は行き場を失い、鼓動は加速していた。

 居間の扉をギギギィとゆっくりと引き、相手の正体を確認しようとした。しかし、そこに人影は無い。妹の姿さえも。

 ヌルリ、ヒシャリと足元が湿る。蛇口が捻られた形跡も、雨が降った様子も無い。私は感触のする足元へ、ゆっくりと視点を移動させ、正体を確認しようとする。足元のソレは、水銀の様な形、色をしているが、感触は、水分の多いスライムの様だった。銀色のソレを思わず手に取ってしまう。恐る恐るという訳では無く、力強く掴む。危険への察知力が欠如けつじょしていた。私の心に有ったものは、純粋な好奇心だった。

 触れた瞬間、声がした。妹の声だ。録音された音声という訳では無く、かと言って聞き取り易い声という訳でも無い。篭った声だ。その声の主が、銀色の液体で、妹である事は消去法で分かったのだが、理解するのには苦労した。

 妹が、あの姿になってしまってからは、人には見せられない為に、学校を2人して辞め、老夫婦の遺した山小屋に、身を潜めるのだった。それは結果として、妹を自然という檻に閉じ込め、山小屋という鎖で自由を絶ち、孤独と戦わせるという選択になる事を、私は理解していなかった。――


 今回の犯人が、あの日、私の妹をあの様な姿に変えた人間だとしたら、私も同じ目に遭うのだろうか。


 足音がコツコツと聞こえ、思考は完全に現実世界へと向けられる。音の発生源は、革靴だろうか。人間は失われた感覚があると、その他の感覚が鋭くなると言われているが、まさしく、その状態に自分は陥っていた。普段、足音がどんな音か? なんて気にして、生きている人はいないだろう。

 そして、また無意味な考察が続く。足音は非常に狭い感覚であり、そこから犯人が、歩幅の狭い人間である事が分かる。すなわち、背の低い人間だという事、大凡の場合、靴が小さいという事にも繋がる。 

  これは、自分にとって意外な情報であった。前述した通り犯人が、妹をあの様な姿にした同一人物ならば、現場に有った靴跡から判断して、靴は大きく無ければならないだろう。大柄な人間を想像していた。同一犯で、複数犯だと考えられもしないが、犯行時、複数人では、人目に付き易い上、殺しの美学を持っていそうな人間は、単独犯だと相場は決まっている。

 私は、犯人の鼓動が近づいた事に気が付く。それに呼応するかの様に、私の鼓動が大きくなる。終には、犯人の吐息を肌で感じ取れる距離となった。そして、少しの沈黙が過ぎ去り、私はゴクリと喉を鳴らす。時間にしては短い時間だが、私にはまるで永遠の様な、時が止まった様な感覚だった。

「私の髪を舐め洗いなさい。」

"ポカン"という音が私を襲う。その音は鈍器的で、グラリと私の頭をねじらせた。私だけが常識の世界から、寝ている間に離されてしまったのかと、まず私を疑った。変声されていないであろう声の主は、女声で震えの無さから冗談には取れずに慌てる。捻れた頭を、ビデオデッキの様に急速に逆回転させ、彼女の言葉を頭の中でもう一度再生する。私の基準では、彼女は異常である。

「なーんてね。ジョーダン」

微笑交じりのその言葉に、先程までの冷たい雰囲気との違いに困惑する。また、この言葉の意味がNBAの伝説的選手では無い事は確かだろう。

 しかし、彼女は私の反応が無い為か、胸ぐら掴んで耳元で囁く。

「何か言いなさい」

 無茶苦茶である。自分で付けた猿轡と布の事を忘れているのかと。私は、ン゛ン゛と音を立てて知らせる。また微笑し、目に覆われた布と猿轡に手を掛けて、ゆっくりと外していく。彼女が犯人では無いのか、案外アッサリとした対応に驚く。ついでに手足の縄も外してくれと頼んだが、聞く耳を持ちそうに無いと却下された。

 布や猿轡を外す其の手は非常に赤く、熱かった。猿轡を外す瞬間に、何処からともなく2匹の蛇が突然現れる。幻覚では無いだろう。確かに感じ取れる。

 また私は、この出来事にあまり反応を示さなかった。本来、蛇が独断好きで無ければ、いや、好きだとしても蛇という生き物を見れば驚くなり、喜ぶなり反応を示す。異常とも取れる行動には理由がある。記憶に存在していた為だ。


ーー  どのくらいの時間、眠りについていたかは定かでは無いが、記憶のある時から数えて3日前、バス停で事件が発生していた。事件と言う程の事では無い。と私は思ったが、被害に遭った女子生徒や周りの人からすれば、それは誇張一切無しだろう。端的に言えば"ジャージが、ずり落ちた"のだ。

「以上回想終了」

と言いたいところだが、謎と言われている事がある。まずは事件名から。この事件の名前は、『女子高生パンツ事件』では無く『蛇女事件』というパンツ要素が皆無なのだ。この事件の一部始終を眺めていた私には、その名称が付けられた理由が分かる。彼女のジャージの中から1匹の蛇が現れたのだ。

  しかし、それだけでは収まらず、彼女の頭から大量の蛇が次々と現れたのだ。あの時も同じく、反応を示さず淡々と現場を見ていた。妹と何処と無く似た事件の雰囲気に、蛇自体もパンツも眼中には無く、謎を解こうとしていた。

 被害者の女子生徒とは、目の前にいる彼女の事である。彼女の名前は、東条とうじょうあかり。前に通っていた高校の1つ上の生徒である。

彼女の特徴を挙げるならば、先ずは、其の長い黒色の髪の毛である。背中まで伸びた艶やかな髪は、肩のところで束ねられ、髪留めには紫色のゴムが使われている。今では、既に絶滅したかもしれない、大和撫子を思わせる上品さだ。次に、鋭い眼光に、女性にしては長身である事だ。眼差しを向けられれば、身が引き締まる。正に”蛇に睨まれた蛙”の状態だ。

 しかし、彼女の身の回りには、いつでも人が集まる。所謂、ムードメーカーであり、彼女の話が、学年の違う私にまで届く程、学校では目立つ人だった。
 余談ではあるが、東条という苗字に、かの有名な東条グループを想起する。

《東条グループとは、この時代に聳える、言わずと知れた由緒ある組織で、主に医療機器を取り扱っている。政界に口を出すことが出来るのも、この国の繁栄を支えてきた為だ。今回の拉致・監禁も、グループの人間を動かしたという事なのだろうか》

 ここで謎の点とは何か、という事について言及しておく。それは、何処に蛇を隠し持っていたのかという事だ。ジャージの中や頭の中に蛇を飼っている女子生徒は、いないとは一概には言えないだろう。しかし、そんな変わった人がいれば、一躍有名人になっている為、その線は消された。

 謎を彼女に伝えると、その表情から明るさが消え、真剣な表情へと一変する。

「あなたの妹さんと同じ様なモノです」

彼女は、妹と同じ様に、されてしまったのだ。同じ様な被害に遭った人間を私は知らず、妹は、このままの孤独を抱えて過ごしてしまうのではないかと考えていた。仲間がいると分かれば心強い。良き理解者となるかもしれない。

 しかし、その様な情報をどうやって手に入れたのかを突き止めなければならない。情報の仕入れ方、事情次第では、彼女は完全な敵になる。出来れば、そうであって欲しくは無い。

「蛇にも、パンツにも反応しないから、不思議に思ったの。何か秘密を抱えているってね。で、密偵に依頼したら、知る事が出来たって訳」

彼女の挑戦的な心と、変人的思考により、妹の正体を突き止められてしまった。他に、私達について知っている事はないかと尋ねてみる。

「では名前から、貴方の名前は、坂月満サカヅキミチル。妹は、レイ年齢は……」

その後も、つらつらと私達の個人的な情報を述べていた。世の中に探偵がいるとしたら、それの数倍は、調べ上げていた。しかし、調べられていたのは”最新のモノ”という意味なのか、1年以前の情報は1つも無かった。

 ここまで沢山調べてみたり、私を監禁したかは別として、監禁場所に来ていたりと、法律に触れてまで、したかった事が不明瞭である。動機の部分を彼女に聞いてみる。

「相手が能力者だと分かった瞬間に、どの様な行動をとるのかを探ってみたかったの。信用に足りるかを」

要するに、彼女自身が拉致、監禁をしたと自白したのだ。

 もし、私が、"妹の能力"に頼っていたら、彼女は危険だっただろう。しかし彼女は、私を信用出来る方に賭けていた。万が一、私が危険な行動を取ったとしても、体を縛っているというアドバンテージを生かし、対処していたとの事。抜かりは無いようだ。

 私は、少しおどけた様にして彼女に是非を求める。

「で、信用に足り得ましたか?」
「ええ、勿論。そして、今回の非礼を詫びる意味を込めて、貴方達が知り得ていないであろう情報を開示します」

彼女は意外にも、律儀な人である事を知り、少々驚く。普段、彼女に人が集まる理由が分かった。人は、自分にとって害でしかないモノには近寄らないのだ。それだけに人は臆病で、利己的である。

 密偵の成果から、私達の情報は、彼女に筒抜けだ。そんな私達に何を告げるのだろうか。

「私達の様な人間を取り込む事で、元の姿に戻れるのです」

彼女は他にも、同じような被害に遭っている人がいる事を知っていた。その中の1人が行動を起こし、成果を上げたという。この話を聞き、恐怖する。自分の為ならば、何を犠牲にしても構わないと思う人がいるのだと。

  しかし、それと同時に、何も知らない人に重要な情報を与え、無知な相手に攻撃してこない辺り、彼女は信用に値する。

「レイ。そろそろ出てきてくれ。彼女には見られても平気そうだ」

妹も彼女を信用しているらしい。私に囁く。

「会いたい、姿を見せたい」

 妹を呼び出す。彼女から見れば、それは"異常"とも言える光景だろう。妹を呼んだ人の目から、銀色の涙を零しているのだから。しかし彼女も、私が蛇を驚かなかった様に、反応を示さずに、じっくりと見ていた。もしかしたら、彼女が私を拉致・監禁した目的は、自分の目で妹の能力を見る事だったのかもしれないと思う程だった。

 体から溢れ出た銀色の涙の正体は、妹である。人に見られない様にする為に、普段から自分の体に収めているのだ。妹は犯人によって質量、重量ともに減らされている。その為、体に収めるのは都合が良い。こういったハプニングにも対応できるからだ。

 私は妹に指示を出す。

「縄を切ってくれ」

すると、銀色の液体達は、私の手足ごと切っていった。激痛が走り、よろめくが、椅子を頼りに立て直す。どうやら、自分の手で導かないと精度が落ちるようだ。

 しかし、丁度良い。手足からしたたる血を、銀色の液体がい寄り、飲み込み、巨大化した。そのままの勢いでソレは、右の手の指先へ到着し、纏わせたまま、少女の絵を描く。それは妹の絵だ。表面を描くと肉付けされていく。その間1、2秒。

 妹には、異変が起きていた。1つ目は、銀色の液体になった事。そして、もう1つ異変と呼べるだけの特徴がある。それは、妹である銀液にイメージを抱き、触れる事で、別の姿へと変化させる事が可能というモノだ。この現象に気がつく事が出来たのは、非常に幸運と言える。妹の姿を元に近づける事が出来る為だ。しかし一旦、イメージを流し込む事による、自律制御効果は30分程度。手を離せるのは、その時間だけである。

「早速で悪いんだが、レイ。話は何となく聞いていただろう。話の区切りの良いところで、彼女の髪を洗ってくれ」

妹は、ウンと頷いた。

 妹は、身体の殆どを犯人に奪われたのだった。命は皮肉にも、そいつの力によって保たれている。犯人は体のパーツを集めるのが趣味なのだろう。その引き換えに、能力を与えるのだと考察した。名刺代わりという事なのだろうか。彼女の手が赤かったのは、手の皮膚を奪われたことによるものだと、今になって思う。

 私の妹の身体について、分かっている事を付け足す。制限についてだ。

 妹を成形する為には、妹との共通認識出来るモノでなければ、ならないという事だ。その為、絵を描く場合には、絵の精度を一定値にしなければならない事や、自分しか知り得ない情報は扱えない事を意味する。また、抽象的なモノは不可能である。《ex.何でも斬れる剣》これらの条件を満たせない場合は、タダの銀液に戻ってしまうのだ。それ故に、早描きには限度があり、時間的制限が含まれる。そういった事を含めて、犯人に会う際には、前もって準備が必要となるだろう。 

 ここで、一つの疑問が発生したのではないか。何故、イメージを流し込むだけで良いのに、態々、絵を描く必要があるのかと。

 イメージを流し込むだけでも形を変容できるが、時間がある場合には、描いた方が良い。人間の記憶力は曖昧で、新たに更新された視覚的情報の方がイメージを共有しやすい。イメージを流し込むとは言っても、一方的ではない。妹と擦り合わせなければならないのだ。その時間は敵の前では惜しい。特に、人間をイメージの対象とした場合は、年齢や服装等も考慮しなければならない為に複雑で、絵を描くのは有効と言える。

《武器の場合は事前に確認しておき、決めておける為、不必要になる》

 もう一つは、妹自体の量は少なく、表現出来るモノに限りがあるという点だ。妹の身体の殆どは犯人によって奪われていた為だ。ここで、対処法として挙げられたのが、先程の様に私の血で量を補うという方法だ。この方法の欠点として、保存が効かない事や、妹だけの時よりも純度が下がり、イメージを流し込む事が難しくなる。則ち、粗悪品になりやすいという事だ。今回は、きちんと成功した様である。

 尚、これは東条には、言葉として説明しない。勿論、彼女を信用している。だからこそ実演したのだ。しかし、この問題はデリケートである。妹が主問題だという事、妹の様な被害者が、彼女の他に複数人いる場合、明確に話しすぎると利用される事だ。これと同様に彼女の能力については、自分からは聞かない事にする。疑っていると思われても仕方がないからだ。

  また、これからの行動方針として、他にも被害者がいるならば、積極的に交流して、情報収集に努めるべきだと考えた。今回、彼女からの教訓は、引きこもりで、情報アドバンテージで劣れば、死を招くというものだ。積極的な行動方針であれば、トラブルは必至である。しかし、犯人が何処にいるか。どの様な人物に注意を払うべきか。協力者はいないか。などを収集出来る。

  彼女は、私よりも多くの事を知っている。どうにかして聞き出したいと思った。

「東条あかりさんであっていますよね、お名前」
「あかりで良い。君の事をミチル、妹をレイちゃんて呼ぶから」
「情報交換したいのですが、出来れば此処ではない所で話しませんか」
「分かりました。一週間後に会いましょう。その前に予定地を連絡します」

  一週間後に会うという事で話は一区切りがついた。その時の表情はまるで、頼もしいお姉さんの様だった。

  妹に頼んでいた様に妹をあかりの元へ連れて行かせ、バスルームへと向かった。バスルームは、監禁されていた部屋の隣だ。

 あれだけ長いと、髪を洗うのに苦労するのは本当だろう。あかりは、喜んでいた。曇りガラス越しに、1人で眺めていたのだが、妹に頼んで正解だったと、見ていて思った。女2人、同じ境遇の人が2人、会話が弾んでいた。正確には、あかりの独り言が弾んでいただけなのだが、久しぶりに妹の明るい部分が見えた。

 タオルで妹が髪の毛を乾かすと、帰りの雰囲気が漂い、外へと続くであろう階段の部屋へ案内された。外へ出て行く時、確認したが、階段部屋の他に、監禁された部屋とシャワールームの2部屋が地下に存在するだけだった。階段を上がった先には、ほんの少しの廊下部分と、ビリビリと音を立て、非常口のマークが怪しく光る扉があった。扉を開け、外に出れば、そこは見慣れた繁華街で、帰り道に困る事無く、連絡先を交換し、あかりと別れた。

 1週間という暇を持て余した私は、監禁場所へと訪ねてみたが、そこには最初から、何も無かったかの様に、あの場所だけ消えていた。

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