剣と魔法の輪廻譚
妹が増えた!?
ミフユside
いつも通り、聞き覚えしかない授業が終わって、私とテルトは宿舎に戻ってきた。
扉を開けると、何とも悩ましそうな、何か言いづらそうな表情をして立っていた。
「あ、おかえり。ミフユ、テルト」
「どうしたんだ、主のお姉さん」
「ちょっと、二人に、特にミフユに関係ある話なんだけど、この後大丈夫?」
申し訳なさそうにそう言うお姉ちゃん、無論私に断る理由も用事もない。
「全然大丈夫だけど、どうしたの?」
「えっと、ね。ビックリしても良いから聞いて。実は………」
「「実は……っ?」」
「………………妹に、なりたいと言ってくる子がいまして……、受け入れても良いかなぁ…って言うことなんだけど…………良いかな?」
私は、その発表に一瞬脳停止した。隣にいるテルトは目を見開いている。
(……ん?いもうと、妹?え、妹ぉ!?)
「「妹ぉ!?!?」」
「あはは、すごいビックリしてる。私自身も、正直何で受け入れたのかわかんない。けど」
お姉ちゃんは眉を寄せて軽く笑った後に、少し俯きながらぼそりと呟いた。
「なんと言うか、同情、しちゃってさ……。ほら、おいで、ルチット」
「う、うん……っ」
お姉ちゃんの机の下から出てきたのは、アホ毛を生やした、橙の髪色の、可愛らしい女の子だ。
でも、恐らくだけど、このタイミングで来たと言うことは。
「………襲撃者の面子の一人かな?」
「だとは、思ったけど、良いのか?」
テルトは少し疑わしそうな表情を浮かべて、そう言ってくる。
勿論、その心配もわかる。いつ殺ろうとしてくるか、手の平を返してくるか、わかったものではない。
お姉ちゃんの決断だ、尊重したい気持ちが勝る。でも、今までの経験上本当なら、スパッと『ダメ』と言うべきなのだろうが。
「うん、良いよ。でも、いざとなったら、容赦なく斬るからね」
「わ、わかった!あり、がとう!」
ルチットと呼ばれた子は、吃りながらも、元気良く返事をして、嬉しそうに笑った。
シュナside
時間は遡る。
「待って……っ!」
縋るような声で私を止めてきたルチット。
私は、漸くかと思いながら振り替える。
「言う気になったの?」
ルチットは、弱々しく、泣きそうな表情で頷く。
只の命乞いであったら殺すかもしれないが、取り敢えずは話を聞こう。
「……………言っても、怒らない……?」
子供のような、純粋な口ぶりに、私は少しだけ戸惑う。
でも、こう言う時の対応は、『怒らないよ』で、良いのだろうか。
このタイミングで、『絶対怒るじゃん』と言うような返事が出来るとは思えないし。
「………怒らないから、言って良いよ」
柔らかい、笑みにも近い表情でそう言ってあげると、ルチットは恐る恐る口を開いた。
「あた、しを…………『かぞく』にいれて、ほしくて……っ。とんでもないお願いだって、わかってるけど、だけど……っ」
涙をボロボロと流しながら、ルチットは途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
私は、今の言葉の後に続く言葉に、身を固くする。
「………っ『寂しい』のは、嫌で、こわくて……お願い、します……っ、私を………っ」
ルチットは、最後の言葉を絞り出すように、吐き出す。
「独りに、しないでぇ……っ」
「………………」
私自身、ルチットの過去を知ってる訳じゃない、けど。
でも、どうしてだろうか。
『寂しい』、この言葉が、ずっと刺さってくるのだ。理由は、何となくわかってしまった。
私も、あの時に、姫様に拾われてなかったら、どうなっていただろうか。
確かに、我武者羅に戦って、生き残れはしたかもしれない、それでも。
_______10歳の私は、あの時、凄く寂しかったんだ。
心の支えはなく、戻れるかもわからなくて、教えてもらっていた素人同然の剣術で戦わなければいけない不安と、孤独の寂しさ。
私は、その感情を嫌と言うほど知っている。
無意識の内に、私はルチットを抱き寄せてしまっていた。
私を殺そうとした、恐れるべき相手だとは思うけど。
ルチットは、私が思っていた以上に、幼かったんだ。
きっと、ルチットは、独りでいる時間は、他の二人を待つ時間で、三人の時間は、凄く満たされていたんだろう。
「うぅ、あああああぁぁぁぁぁぁぁぁああ…………っ」
腕の中で大号泣するルチットの背をさする。
ルチットのあの元気も、なけなしのものであったんだろうと、後々気付いた。
ルチットside
久々に触れた温もりは、とても暖かかった。
それも、涙が止まらなくなるほどに、声の抑えが効かなくなるほどに。
どうして受け入れてくれたんだろう、そんな疑問は後に湧く疑問となった。
今は只、この温もりを手放したくなくて。
そして、あたしは、ふと過去の、小さい頃の日常を思い出した。
『ルチット、ただいま。今日は早く帰ってこ来れたから、一緒に晩御飯食べましょう?』
(やったぁ!今日ね、掃除頑張ったの!褒めて褒めて!!)
『ふふ、偉いわね。ほら、おいで、抱き締めてあげるわ』
(良いのぉ!えへへ~っ!!)
スピカと話した、いつかの夕方の会話、ぎゅ~ってされるのが、久々で嬉しかった。
思い出すだけで、頬が緩む。
『なぁ、ルチット。今度の休みは何処に行きたいとかあるか?』
(おねーちゃん達となら何処でも良いよぉ?)
『もっと欲張っても良いんだぞ?何せ、忙しくてあまり遊べてないんだからな』
(じゃあ、動物園行きたい!飛竜とか、にゃんにゃこま見たい!)
『あぁ良いぞ、そうしようか』
アレクと話した、休日の予定の話。
ちょっぴり目付きが悪いアレクが、優しく笑いながら話してくれたことが、凄く目に鮮やかに焼き付く。
『ルチット、今日は三人一緒に寝ましょう?』
『私も賛成だ、ルチットはどうだ?』
(うん!勿論だよ~っ!!)
三人で一緒に寝た日。
一つのベッドで三人は少し狭いけど、凄く満たされた。
どれも、あたしにとっては大切な記憶で。
帝国騎士団のした依頼せいで、崩れた日常だった。
でも、受けてしまった依頼は依頼だ、あたし達は、責めることができないんだ。
心の隙間を埋めるように、『かぞく』になりたいなんて、どっちにも失礼だとは思う、けど。
それでも、縋らなきゃ、生きていけないなんて、二人に怒られちゃうかなぁ?
いつも通り、聞き覚えしかない授業が終わって、私とテルトは宿舎に戻ってきた。
扉を開けると、何とも悩ましそうな、何か言いづらそうな表情をして立っていた。
「あ、おかえり。ミフユ、テルト」
「どうしたんだ、主のお姉さん」
「ちょっと、二人に、特にミフユに関係ある話なんだけど、この後大丈夫?」
申し訳なさそうにそう言うお姉ちゃん、無論私に断る理由も用事もない。
「全然大丈夫だけど、どうしたの?」
「えっと、ね。ビックリしても良いから聞いて。実は………」
「「実は……っ?」」
「………………妹に、なりたいと言ってくる子がいまして……、受け入れても良いかなぁ…って言うことなんだけど…………良いかな?」
私は、その発表に一瞬脳停止した。隣にいるテルトは目を見開いている。
(……ん?いもうと、妹?え、妹ぉ!?)
「「妹ぉ!?!?」」
「あはは、すごいビックリしてる。私自身も、正直何で受け入れたのかわかんない。けど」
お姉ちゃんは眉を寄せて軽く笑った後に、少し俯きながらぼそりと呟いた。
「なんと言うか、同情、しちゃってさ……。ほら、おいで、ルチット」
「う、うん……っ」
お姉ちゃんの机の下から出てきたのは、アホ毛を生やした、橙の髪色の、可愛らしい女の子だ。
でも、恐らくだけど、このタイミングで来たと言うことは。
「………襲撃者の面子の一人かな?」
「だとは、思ったけど、良いのか?」
テルトは少し疑わしそうな表情を浮かべて、そう言ってくる。
勿論、その心配もわかる。いつ殺ろうとしてくるか、手の平を返してくるか、わかったものではない。
お姉ちゃんの決断だ、尊重したい気持ちが勝る。でも、今までの経験上本当なら、スパッと『ダメ』と言うべきなのだろうが。
「うん、良いよ。でも、いざとなったら、容赦なく斬るからね」
「わ、わかった!あり、がとう!」
ルチットと呼ばれた子は、吃りながらも、元気良く返事をして、嬉しそうに笑った。
シュナside
時間は遡る。
「待って……っ!」
縋るような声で私を止めてきたルチット。
私は、漸くかと思いながら振り替える。
「言う気になったの?」
ルチットは、弱々しく、泣きそうな表情で頷く。
只の命乞いであったら殺すかもしれないが、取り敢えずは話を聞こう。
「……………言っても、怒らない……?」
子供のような、純粋な口ぶりに、私は少しだけ戸惑う。
でも、こう言う時の対応は、『怒らないよ』で、良いのだろうか。
このタイミングで、『絶対怒るじゃん』と言うような返事が出来るとは思えないし。
「………怒らないから、言って良いよ」
柔らかい、笑みにも近い表情でそう言ってあげると、ルチットは恐る恐る口を開いた。
「あた、しを…………『かぞく』にいれて、ほしくて……っ。とんでもないお願いだって、わかってるけど、だけど……っ」
涙をボロボロと流しながら、ルチットは途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
私は、今の言葉の後に続く言葉に、身を固くする。
「………っ『寂しい』のは、嫌で、こわくて……お願い、します……っ、私を………っ」
ルチットは、最後の言葉を絞り出すように、吐き出す。
「独りに、しないでぇ……っ」
「………………」
私自身、ルチットの過去を知ってる訳じゃない、けど。
でも、どうしてだろうか。
『寂しい』、この言葉が、ずっと刺さってくるのだ。理由は、何となくわかってしまった。
私も、あの時に、姫様に拾われてなかったら、どうなっていただろうか。
確かに、我武者羅に戦って、生き残れはしたかもしれない、それでも。
_______10歳の私は、あの時、凄く寂しかったんだ。
心の支えはなく、戻れるかもわからなくて、教えてもらっていた素人同然の剣術で戦わなければいけない不安と、孤独の寂しさ。
私は、その感情を嫌と言うほど知っている。
無意識の内に、私はルチットを抱き寄せてしまっていた。
私を殺そうとした、恐れるべき相手だとは思うけど。
ルチットは、私が思っていた以上に、幼かったんだ。
きっと、ルチットは、独りでいる時間は、他の二人を待つ時間で、三人の時間は、凄く満たされていたんだろう。
「うぅ、あああああぁぁぁぁぁぁぁぁああ…………っ」
腕の中で大号泣するルチットの背をさする。
ルチットのあの元気も、なけなしのものであったんだろうと、後々気付いた。
ルチットside
久々に触れた温もりは、とても暖かかった。
それも、涙が止まらなくなるほどに、声の抑えが効かなくなるほどに。
どうして受け入れてくれたんだろう、そんな疑問は後に湧く疑問となった。
今は只、この温もりを手放したくなくて。
そして、あたしは、ふと過去の、小さい頃の日常を思い出した。
『ルチット、ただいま。今日は早く帰ってこ来れたから、一緒に晩御飯食べましょう?』
(やったぁ!今日ね、掃除頑張ったの!褒めて褒めて!!)
『ふふ、偉いわね。ほら、おいで、抱き締めてあげるわ』
(良いのぉ!えへへ~っ!!)
スピカと話した、いつかの夕方の会話、ぎゅ~ってされるのが、久々で嬉しかった。
思い出すだけで、頬が緩む。
『なぁ、ルチット。今度の休みは何処に行きたいとかあるか?』
(おねーちゃん達となら何処でも良いよぉ?)
『もっと欲張っても良いんだぞ?何せ、忙しくてあまり遊べてないんだからな』
(じゃあ、動物園行きたい!飛竜とか、にゃんにゃこま見たい!)
『あぁ良いぞ、そうしようか』
アレクと話した、休日の予定の話。
ちょっぴり目付きが悪いアレクが、優しく笑いながら話してくれたことが、凄く目に鮮やかに焼き付く。
『ルチット、今日は三人一緒に寝ましょう?』
『私も賛成だ、ルチットはどうだ?』
(うん!勿論だよ~っ!!)
三人で一緒に寝た日。
一つのベッドで三人は少し狭いけど、凄く満たされた。
どれも、あたしにとっては大切な記憶で。
帝国騎士団のした依頼せいで、崩れた日常だった。
でも、受けてしまった依頼は依頼だ、あたし達は、責めることができないんだ。
心の隙間を埋めるように、『かぞく』になりたいなんて、どっちにも失礼だとは思う、けど。
それでも、縋らなきゃ、生きていけないなんて、二人に怒られちゃうかなぁ?
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