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剣と魔法の輪廻譚

にぃずな

ヘルリウル

「ほらほらぁ、避けてないで攻撃してきなよぉ~」
「うるさいな、こっちにはこっちのやり方があるんだよ」
「そうなんだぁ~。でもその台詞、逃げにしか聞こえないよ?」
「逃げなわけないでしょ……喰らえ、ヘルリウル《閉ざす深淵シャドウ=クロウズ》」
黒い霧が相手を包む。
「クロト、戻って」
『…承知した』
小声で指示をし、クロトには私の中に戻ってもらった。
「あは、どんな効果の魔法なんだろう~?」
ルチットは嬉々として魔法に飲まれている。
そして、先程自棄な感じで逃げを否定していたが、正直図星である。
(やばい…相性が……)
正面から斬りかかってきたり、大勢の一斉攻撃、防御しながらの攻撃ならば、得意分野なのだが。
(速度型の、短剣での小刻みの攻撃と、中距離射撃型の貫通系の魔法。厄介な要素ばかりが揃ってる……)
恐らく、ヘルリウルの《閉ざす深淵》の、視界を奪い、じわじわと命を削る魔法も、大した効果を成さないだろう。
「あははっ!チクチクちょっぴり痛いねぇ!大した痛みでもないけどぉ、まだ手ぇ抜いてる~?」
ルチットはニタニタと気味悪い笑みを浮かべ、舌を出している。
質問にも返答せず、間髪いれずに魔法を放つ。
「爆ぜろ、そして誘え………ヘルリウル《重擊連射バーストスプラッシュ》《墮獄の断末魔デスサイドドロップ》」
切っ先から魔法陣が展開され、【冥界門扉ハデスゲート】が出現する。
不定形の魔物が、腕を伸ばし、ルチットを捕らえる。
「捕まれちゃったぁ、けど、弱いねぇ…ん?」
闇色の弾幕が嵐のように押し寄せ、砂塵が舞う。
「あっはぁ!良いねぇ、良いね良いねぇ!!痛いよぉ血が吹き出るよぉ!」
ルチットの太股や腹部、胸部付近から血が止めどなく吹き出ているが、全く動じていない。
むしろ、嬉しそうにしている。
「さっきからずっと笑ってて、気持ち悪いなぁ……!」
口調が荒くなる。
苛立ちが、集中力を狂わせる。
(落ち着け、自分、大丈夫……)
こんな奴に、負けはしないと、言い聞かせる。
狂者に負けるわけにはいかないと、心に誓う。
「もっと来なよ~!あたしを、楽しませてよっ!!」
《ツインブースト》
《リードアクセル》
息を深く吸い、こう言い放つ。
「………望み通り、そうしてあげるさ!」
《フォースブレイド》
《ダークスパーダ》
《ヴェノムスラッシュ》
多色無数の斬擊が宙を飛翔する。
「反撃しちゃうねぇ、《幻影の仮面舞踏ファントム=マスカレイド》っ!」
ルチットが10人に分身する。
「受けてみなよぉ!《深紅の首断剣ヴィヘード=ブラット》~!」
10人に増えたルチットが一斉に、私の首を取ろうと迫ってくる。
10人が手に握っている短剣が赤黒い光を放つ。
狂喜的な笑み浮かべ、突き刺すような眼光を放ちながら眼前にまで迫って来ている。
が、しかし、先程言った通りだ。
『正面から斬りかかってきたり、大勢の一斉攻撃、防御しながらの攻撃ならば、得意分野____』
口角を吊り上げる。
地が海になるほど血を出させてしまえ。
少しも動けなくなるほどに畳み掛けてしまえ。
半殺しにしてしまえ。
(ここからは……)




「________私の独壇場だ」


「《鮫牙絶刃シャークバイト=ブレイド》」
まだ私が騎士だったころ、神鮫を討伐したときにヘルリウルが吸収した獣技だ。
神鮫の牙は、地を抉り、竜や神をも喰いちぎった。
蒼いオーラが剣に纏わりつき、オーラが鮫の形になる。
蒼鮫が大きく口を開く。
10人のルチットに喰い付き、分身は消え、本体にも深刻なダメージが入った。
「あっはぁ!良いねぇ!もっと、来なよぉ!」
現状、ルチットの体の色々な箇所にぽっかりと穴が空いている。
それでもルチットは、口から血を吐きながら、満面の笑みを浮かべている。
返答する時間すらも惜しい。
間髪いれずに魔法を叩き込む。
「《ソニックファイア》《エアロインパクト》《ソニックアクア》」
3色の魔法が溶け合い、周囲を彩りながら爆ぜていく。
爆風に砂塵が混ざり、煙幕のようになる。
剣を突き刺すように構え、突っ込む。
剣が通ったところには黒紫の軌道が描かれる。
剣擊は見事に溝尾に直撃し、貫通する。
眼前にルチットの血だらけに顔が迫る。
「良いねぇ、その顔~、可愛らしくない、こわぁい笑み、はははっ」
「はっ、どうでもいいよ、そんなこと」
けなされる事ぐらい、とうの昔に慣れてしまった。
「今は、あんたを殺す、それ意外脳にはないよ」
「怖いねぇ、まるで獣みたい」
「勝手に言ってな、よっ!!」
刺さっていた剣を思いっきり横に振り抜く。
脇腹を切り裂き、腸などの臓器が飛ぶ。
「かはっ、はっ、ははっ」
「まだ笑っていられるんだ、凄いね。暗殺者って」
容赦なく蹴りをいれる。
「げほっ!」
脚に血がかかるが、気にしない。
「とっとと、終わらせよう。《フォースブレイド》」
「流石にやばい、かなぁ!《幻影の仮面舞踏ファントム=マスカレイド》!」
ルチットは思いっきり地を蹴り、飛び上がる。
ルチットの死に物狂いの、収束の甘い分身魔法。
(本体が分かりやすい)
「はぁっ!!」
短い気合いと共に、下から斬り上げるように斬擊を放つ。
(普通なら横薙ぎなんだろうけど)
本体はもう明白だ。
それなら、正確に狙って、綺麗に真っ二つにしてしまえばいい。
「《深紅の首断剣ヴィヘード=ブラット》!!」
同時に首を取りに来る。
けれど、もう遅い。
「チェックメイト」
「っあ」
短剣もろとも、ルチットの胴体が縦に斬れた。
「このままだと、痕跡が残る。ヘルリウル《墮獄の断末魔デスサイドドロップ》」
冥界門扉ハデスゲート】で全てを呑み込む。
血肉はこれで一切残らない。
しかし、自分の中には少しもやもやとしたものが残っている。
(……っ………御人好しとは、この事かな……)
「………はぁ、後味悪いなぁ……ヘルリウル……《再生の禁忌タブーリザレクション》」
《再生の禁忌》は、名前の通り他者を復活させれるが、人が使うと体が裂けてしまうことから封じられた魔法。
しかし、すり抜ける方法は簡単で、自分から直接でなければ良いだけ。
(杖とか剣からだったら、大丈夫なんだよね)
しかし、これは姫様を失ってから気付いた。
もっと早く気付いていれば、失なわなかっただろう。
「しばらくは【冥界門扉】の中にいてもらうから、そのうち話を聞く」
日が半分以上沈み始めているため、早めに部屋に戻らなければ。
《ストレージ》にヘルリウルを仕舞う。
「…………今日は、早く寝よう……」
体力も魔力は大して減っていないが、精神的に凄くすり減った。
休む為にも、今日は早々に目を閉じた。

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