剣と魔法の輪廻譚

にぃずな

怠惰な己。抹消するに足りる力。

邪神フェリオルを体に飼わなきゃいけなくなったのは、転生3回目の時だ。
その頃の私は弱かった。
邪神には、力を蓄える、簡単に言って冬眠の様なものがある。
その期間は、ざっと2000年程。
それがそろそろだったのは、わかっていた筈なのに、準備を怠った結果、お姉ちゃん達を傷付けてしまった。
償い、とは言えない。
それでも、事の後始末は、自分の手でする。
いずれかは、来る定めだったのだから。
「絶対にお姉ちゃん達には触れさせない」
「ほぅ?娘が我を殺すのか?」
「そうだよ」
(端から見たら都合のいい話だ。準備をしていればこんなことにはならなかった。自分以外の誰も傷付かなかった)
自分に怒りを覚える。
でも、この怒りが、きっと後の判断を鈍らせる。
深く息を吸い、落ち着かせる。
姿勢を低くし、走る。
《アクセル》
そして、加速。
フェリオルの近くに瞬時に迫る。
「単調な攻撃だ。通じる筈無かろう?」
そう言い、魔法を放ってくる。
《ダークアーチェリー》だ。
当たれば精神異常を引き起こし、まともに戦えなくなり、最悪の場合再起不能になる。
当たれば、の話しだが。
剣で全て弾く。
「捕らえろ《アーム》」
命令と魔法名からなる、私の固有魔法だ。
フェリオルを捕らえようと、魔力で出来た透明な腕を伸ばす。
「厄介なものだ。《ブレイク》」
「残念、そんな粗末な魔法じゃ、ずっと使ってきたこれには通じないよ?」
フェリオルの体を掴み、固定している。
「ぐ…ぬ、このぐらい…容易く…」
「本気だしなよ。お姉ちゃんにはせこい魔法使ってさ」
そう、お姉ちゃんの磨かれた剣術をあそこまで当てさせないのは、どんなに剣を極めた者でも不可能だ。
「《エアロアーマー》でしょう?」
「………」
《エアロアーマー》とは、攻撃を全て受け流す魔法だったのだ。
「まぁ、死にたければ良いけど。《デルタグレイサー》」
電気のレーザーを無数に放つ。
フェリオルに当たる直前、レーザー自体がフェリオルを避けるように流れた。
《エアロアーマー》を使った様だ。
放ちっぱなしにして、私はフェリオルに突っ込む。
(一気に全てを流すのは無理な筈…)
《ソード=ストレンジ》
剣が橙色の光を放つ。
「ならば、《アースウォール》」
フェリオルは土の壁を作り出したが、勢いに任せ壊す。
その間に強引に《アーム》から脱していた。
「ちっ」
「《オールアーチェリー》」
私が舌打ちしている時に、フェリオルは全属性の矢を放ってきた。
「《ブレード》」
《ブレード》で来る矢を弾く。
私自信も剣を振るい弾く。
「喰らいし者達よ…《デモンズイーター》
喰らいし者イーター】の二つ名をもつ魔物を召喚する。
召喚出来たのは、シャドウドラゴンとガーゴイルだ。
フェリオルに同時に飛びかからせる。
「邪魔だ!《エレキスコール》」
フェリオルが電気の雨を降らせる。
無残にも召喚獣は殺られる。
でも、召喚獣にかまけていたことにより、僅かな隙が生まれる。
(この一瞬だ…逃さない)
《シールド》
傘状に《シールド》を展開し、剣を下段に構える。
「あの者に、下すべき制裁を…《ディザスターフレア》」
厄災と唱われる業火を先行させる。
「《アクアシールド》!」
フェリオルのとった行動は、正しい。
それが、炎だけならば。
《アクセル》
高速で、フェリオルに近づく。
そして、剣を振るう。
「そのぐらいっ!」
少々焦りを見せている。
その焦りが判断を遅らせ、死へ近づける。
「《ブレード》」
《ブレード》で、邪魔を入れて、防御を遅らせる。
私の剣の間合いにフェリオルは、はいった。
剣の切っ先はフェリオルの心臓コアを目掛けている。
そして、確実に捉えた。
「がっ…」
「これで…終わり」
心臓コアに剣が突き刺さり、そこから血のように煙が吹き出す。
そして、フェリオルは煙になって消えた。
「………はぁ…」
この体では、さっきの戦闘はきつかった。
「ねぇ、終わったよ、お姉ちゃん」
お姉ちゃんに近付き、片膝をつく。
『安心してくれ、主は気絶しているだけだ』
お姉ちゃんの従魔、クロトが言ってくる。
「なら…良かった……」
安心して、体から力が抜け座り込む。
『全く、主はまだ7歳ではないか』
『なんと言うか、変なところが似たようだな』
黒い虎クロトラルグレルフが話している様子は不思議だが、気にしない。この先、これでずっとこんなこと思ってたら終わらないからね。
(今日は、早く寝よ…)
お姉ちゃんを自分をスキルで強化しながら抱え、家に運ぶのだった。

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