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翼を灼かれたイカロス

Amenbo

5話 酒場

    金髪の美少女に、子供くらいの背丈の厚着の男、そして死装束の元軍人の青年…

その奇妙な3人組は、青年の探す[セイレーン]という酒場に向かっていた。

「それにしても、この街は賑わってるなぁ、なんでこんなに人が多いんだろ?」

レインは小人に尋ねた。

「そりゃぁ、貿易が盛んだからいろんな奴が出入りするってのもあるけどよ、とりわけ今日は終戦記念日だろう?祭りが開かれるんだよ。だから、国中の人がこの街に大集合ってわけさ。」

小人は当たり前だよなぁ、とため息交じりに言った。

「終戦記念日?」

そういえば、と言った風にレインは尋ねた。


「あ!?あんた終戦記念日のことも忘れてんのか?」

二人にはレインは記憶喪失になっている、と話していた。ここ数年の記憶が吹き飛んでいるのだと話すと、二人は同情して様々な話を聞かせてくれた。

「終戦記念日ってのは…いまから12年前・・・・に…ここアダマンテ帝国とハーデルファム王国っていう国がどんぱちやってな?多数の犠牲者を出した戦争の終戦を祝ったものだ。」

小人は記憶の意図を手繰り寄せるように語り始める。

「何年も戦争状態は続くし、兵士は戦場へ駆り出されるが、両者は特殊な兵器やら武装やらでガチガチで、にっちもさっちもいかなくてな?だが12年前の今日、空から不思議な光が降り注いで、所謂、全時代のパワーってのを消しちまったのさ。結局のところ、すべての兵器や機械は意味をなくして、戦争どころじゃなくなったってわけだな。」

(光が、炎が、降り注いで…まるでソドムと…ゴモラみたいだな…
まてよ、なんだったっけ、ソドムとゴモラって。)


「そっからは大変だったんだぜ?みんな大パニックよ。どこへいけばいい、どう生きればいいって、その力に頼り切ってたんだろうな、みんな。そんな時にみんなの前に立って動いたのが、その“力を使えなかった人”たちだ。その人たちはその力なしでも生きるすべを知っていたんだ。今まで虐げられてきたのに、そいつらが今のこの国の基礎を改めて作ってくれたのさ。そしていまのアダマンテ帝国や、ハーデルファム王国があるってわけよ。」

「虐げられてきたのに、か?彼らはきっと差別も受けてきたはずだ…。」




「奴らにとっちゃ、そんなことは関係なかったのさ。元を辿れば、人間も、伝説の巨人族も、今や数が減った亜人も、同じルーツだ。奴らの中には復讐の感情なんてなかったんだ。当たり前が、もっと当たり前になるだけだったんだから。ゼロはゼロのままだったんだからな」

(12年か…色々あったんだな俺が眠ってる間にも。12年ね、あー、うん、えっととと、あれれれれ12年ん?んんん?ーとん?)

「嘘だろ!そんなに経っていたのか!!!嘘だ嘘だ!信じられない!なんで!」

「どど、どうしたよ青年?」

「な、なんでもないよ。少し、あれだよ、歩き疲れただけさ…」

(冷静になれ!たしかにあの女は何年の間僕が眠ってた?かなんて教えちゃくれなかった…でも、もう少し早く起こしてくれてもええやんけ…なんてこった、今日は驚きの連続だ…本当に退屈しないな。)






「ついたわ。ここがお探しの酒場[セイレーン]よ。」

年季を感じる木造の二階建ての建物だ。壁は潮風によって侵食されいい味を出している。この街の建物は基本みんな白いのだが、ここは他とはちがう、なんとなく、歴史を感じる。

「実は、私たちもここの二階に用があったの。」

「…探してた酒場の二階があんたらの目的地なんて、こんな偶然あるんだね…?」


「あー…そうね。私は、あんたがてっきり…嫌…なんでもないわ」


「ん?でも、とりあえずありがとう。色々面白い話も聞けたし、本当に世話になったよ。」


そんなレインに対して、二人は黙って、いいよと手を振り二階へ続く外の階段を上っていった。

「また縁があったら会おうぜ小僧!何かわかればいいな!」


「おう!」



(不思議な二人だったなぁ…犬猿の仲というか…でも喧嘩するほど仲がいいともいうし、案外なかなかいいコンビなのかもな…)


「あの二人、もしかして、恋人同士なのかな…嫌、そりゃないか…どっちかというと、鬼コンビ?風神雷神みたいな…」

そんなことを考えながら、レインは酒場の入り口の扉を開け、中に入った。  

店内はうす暗く明かりが灯され、ピカピカに磨かれたバーカウンターと奥の棚に並ぶ無数の酒の群れ、そしていくつかのテーブルがあり、こじんまりとしながらも、不思議と広さを感じる空間だった。

カウンターには立派な船の模型が置いてある。なんて名前の船だろうか。

「…あいにく、準備中だよ。まずなぁ、こんな朝っぱらから出せる酒はねぇぞ?」


剃りあげた頭に口髭。店主らしき人物はグラスを拭きながら言った。


(隊長にそっくりだな…主に…頭とか…)


「すまない。酒を飲みに来たんじゃないんだ。レインというものだ。人の紹介で来たんだが…」


店主はグラスを拭く手を止め、初めてレインを見た。


「……なんだ、まだけつの青い小僧じゃねぇか。冷やかしなら帰ってくれ。こっちは夜通し働いて疲れてんだ。」


店主はあくびをしながら言った。


「ここにくれば知りたいことってのがわかるって聞いたんだ。あんた、知らないか?腰まで銀髪を伸ばした美人の女。あの見た目ならきっと見覚えがあるはずだ。」






「……しらねぇな。紹介だとか、知りたいことだとか言ってるけどよ、こんな酒場で、一体何がわかるってんだ…?」


店主は少しだけ笑って答えた。



「そうか…ならいいんだ。…朝早くに迷惑かけた。また出直すことにするよ。」


(やはり、あの女のいうことはでまかせだったのかな…しかし、たしかに[セイレーン]と…)




「…おい、兄ちゃん待ちな…まーあれだ、何か知りたい、調べて欲しいってんだったら、上の奴らを頼ってみたらどうだい?案外腕はいいし、この街のやつにも信頼されてるしな。」


「上の奴ら?」


(ん?なんだか嫌な予感がするぞ)


「ああ、そうさ。きっと知りたいことってのも調べてくれるぜ?それに、ほら、ちょうど“所長”様がお目覚めになられたようだ。」


店主がそう言った次の瞬間、酒場の扉が勢いよく開いた。


(バン!!!!!!)


「ほはぁぁ。おはよう、マスター。わたしは腹が減ったぞ。お腹と背中が今にもくっつく勢いだ。オムライスを!オムライスを大盛りで。」


酒場に入ってきたのは一人の女性だった。


彼女はレインの隣を通り過ぎ、店主の正面のカウンターの椅子に座った。


「だから、営業時間外だってのによ…まぁいいや、じゃあ、ミカエラ。飯つくってる間にそのにいちゃん、レオン?ってやつの話を聞いてやっててくれねぇかな?あんたに依頼があるそうだぜ?」


店主はレインを指差しながら言った。 








「えーと、それで記憶喪失になって目覚めた君は、とりあえず自分のことを知りたいからとその美人に相談したところ、この酒場を紹介されたと…いうことで間違いないね?」

オムライスを口いっぱいに詰め込んで、ミカエラこと、所長はレインの目をまっすぐに見つめて聞いた。


レインはとりあえず記憶喪失という体で話を進めた。最初から説明してもきっと信じてもらえないと思ったからだ。

「ええそうです。でも、その人はなんで[セイレーン]って言ったんだろう…。こんな酒場、たしかになにがわかるっていうのか…」


レインは疑問に思っていた。


「多分、先代の利用者だったんだろう。先代はこの店、セイレーンで依頼を受けて活動していたんだ。今は二階に事務所があるがな。で、要件はなにかな?」


大きなオムライスの乗っていた皿は綺麗になにもなくなっていた。

僕のオムライスは…


「モグモグモグモグモグモグ…」


僕のも、あ、僕のも食べるんだ、この人…


「え、えっと。知りたいことがあるんです。まずは、12年前の、降り注いだ光について。調べて欲しいんです。その後何が起こったのか。」



「うーん。長い眠りから覚めた眠り姫様は自分のことより歴史を知りたがるのか、変わってるなぁ。まぁ、でも依頼は依頼だ!この“探偵事務所ARGO”が、必ずや君の期待に答えてみせよう!」


「ありがとうございます!」



…どうやら調べてもらえそうだ。この世界のことをもっと知らなきゃいけない。でなきゃ、僕の使命は、復讐は果たせない。

「ところで自己紹介が遅れたな。君は、えっとレチン…くん、でよかったっけ?」

「レインです!レイン・スタフォード!」

「あぁすまない!レインくんだな!では、私も自己紹介を。探偵事務所の三代目所長を務めさせてもらってるものだ。ミカエラ・レッドラインだ。よろしくなレインくん!」

「よろしくお願いします所長さん!」


「ミカエラでいいぞ。私もその方が実は好きだったりするんだ。よし、続きは事務所で話そうか。私の仲間を紹介しよう!」


「は、はい」

(あぁ、またあの二人と会うことになるとはな…運命なのかな…悪くない運命かもな…)













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