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翼を灼かれたイカロス

Amenbo

1話 出撃

   〜帝都デュークノア郊外 空軍基地〜

  「貴様ら!覚悟はいいな!この戦いは、我ら帝都空軍の誇りをかけて、必ず勝利を勝ち取らねばならん!!」

「はっ!!!」

「戦場では《オーラ》だけではどうにもならん!冷静な判断力、そして覚悟が必要だ!敵機を見定め、確実に撃ち落とせ!」

「はっ!!!」

「それでは!君たちの武勲を願う!必ず生きて帰ってこい!!」

「はっ!!!ありがとうございました!!!リークエンス隊長殿!」


〜空軍基地 談話室〜


「…ふぅ〜、やっと終わったぜ毎回恒例のハゲ隊長の激励ッ!よくもまぁ毎度毎度あんなに怒鳴り散らせるよな…」

そう言って金髪の短髪の青年はため息混じりにつぶやく。

「でも、なんだかんだ優しいじゃないか?根はいい人なんだよ。きっと。」

藍色の髪をした青年は、外の景色から目もそらさず飄々と答える。

「レインはいちいちあのハゲの肩を持つよなぁ〜?お前、あれか?ごますりか?ごますりなのか?え?」

「は?なわけないだろー?そういうエリックこそ、いつも隊長の前じゃあへこへこしてんじゃないか」

「んだと!俺がいつあいつにビビったってんだこのやろう!」

「ビビってるとまでは言ってないけど、ね?弱虫エリックくん?」


「二人とも!うるさいですよ!出撃前だってのに落ち着きがないったらありゃしないんですから!」

翠色の髪の黒縁メガネをかけた青年は眉間にしわを寄せて二人を睨んでいる。

「おー!エドモンド!聞いてくれよ!レインのやつ、俺のことを弱虫だっていうんだぜ!?この部隊随一の射撃の実力を持つ『孤高の荒鷹』様をよぉ!」

「ぷっ…!こ、孤高の?なに?よく聞こえなかったよ、エリック……!ほ、ほんと、よくそんな恥ずかしいことが言えるよな…!!」

レインは肩をプルプルと震わせながら必死に笑いをこらえている。

「レイン!なに笑ってやがる!いいじゃんか!かっこいいじゃんか!孤高だぜ!?孤高ってかっこいいだろ!な!お前もそう思うだろ!?エドモ…ン、ド、さん?」

バンッ! エドモンドは机に手をついて立ち上がった。

「……もう、いいです!先に行ってますからね!そのくだらない話を、どーーぞ国を背負う自覚もないままに続けてください!どうぞどうぞ!」

そう言うとエドモンドはズカズカと足音を立てて部屋の外へ行ってしまった。

「よくわかんねぇけど、怒らせちまったな…」

「彼も意外と短気だからね。
あとでちゃんと謝ろう…。」

「そーだな…。」

そうして二人もそそくさとエドモンドを追うようにして機体の元へと向かった。


彼ら3人が所属しているのは精鋭18名で構成された、《オーラ》を用いて操縦する飛空挺の部隊である。
 
一部からは「鉄の鳥」と称される、いわゆる超小型の飛行艇は従来の軍隊で運用されている戦車等と比べて、桁違いに莫大なオーラを必要とするため、軍用化は非常に難しいとされてきた。

しかし、帝国と政府の方針で、国内において各国民のオーラの測定を行い、その中で値がずば抜けていたエリートたちを軍人として帝都に招集したのだ。その中からまたさらに選りすぐりの能力を持つものとして選ばれたのが彼ら18人である。

そのため、平均年齢20歳にも満たない彼らにも、この若さで一人一機の特殊な飛空挺が与えられ、特別部隊として活躍することを許されたのだ。

彼らは帝国にとっては最終兵器であり希望の星だった。
燃費こそ悪いが一機で敵部隊を楽々壊滅させる可能性を持っていた。
破壊力、機動力、そしてオーラによる障壁で防御力にも優れており、各国に恐れられていた彼らは、今日の戦場の空でも悠々と駆けるであろう、そう思われていた。


出撃準備はすでに整っていた。


この戦闘が終わったらエドモンドのお気に入りの菓子店のうまいクッキーでもくれてやろう。

甘党のエドモンドはどうせすぐ機嫌を直すからね。

簡単なことだ。いつも通りやってれば、またすぐに帰ってこれる。

エリックもレインも、エドモンドでさえ、心の底では油断していた。

「「「いつも通りだ」」」

そして、全機体のエンジンにオーラが満たされた。


「全機!発進!」


合図とともに音速を超えた速さで、次々と機体がカンと晴れた青空に吸い込まれてゆく。その目的地は、戦場のど真ん中、このアダマンテ帝国と敵国ハーデルファムとを隔てる国境である。

しかし、その日はいつもと何かが違っていた。

けれども、経験も浅く年若い彼らは気づかなかった。北方の空の片隅の空に、なぜか、大きな『ヒビ』が入っていることを。






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