Regulus
Warm blue
『志輝、デートしよう』
突然慶からそんなメールが送られてきた。
今日慶は雑誌取材で、いつ終わるか分からないと言ってたのに。
『うん、わかった。どこ行けばいい?』
『○○駅で待ち合わせよう』
『わかった、また後で』
慶からのデートの誘いなんて珍しい、大体どこか行く時は僕が誘って慶はついてきてくれるっていう感じだから。
だからなのか、初めてのデートみたいにわくわくして鼻歌なんか歌ったりしながら準備をした。
夕方になり、待ち合わせの駅に着くとマスクをつけて壁に寄りかかる慶が待っていた。
「慶、お待たせ」
「いや、俺も来たばっかだ」
そう答えて慶が歩き出す。
「慶、今日はどこ行くの?」
「内緒だ、ついてくればわかる」
歩きながら答えた慶は、どこか楽しそうだった。
まるで悪戯を仕掛けて楽しんでる子どもみたいに。
それで僕も少し楽しくなって、慶に任せることにした。
「ついた、ここだ。
今日は俺にとことん付き合ってもらうから」
「ここって…」
着いた場所は、一本入った路地裏の隠れ家BAR。
「一度一人で来たんだ、そしたら雰囲気が落ち着いて。志輝も好きそうだと思って。ソフトドリンクもある、行こう」
慶が僕の手を取って中に入る。
中は薄暗くて、確かに心地いい。
「マスター、スコッチをステアせずにシェークして。志輝は?」
「僕は…カルーアミルクで」
注文をしてから席につく。
お酒が来て、僕達は静かに乾杯した。
「今日もお疲れ様、慶」
「志輝もお疲れ。今日一日作曲してたんだろ?」
「うん、まあね」
プロシュートやチーズを食べながら他愛ない会話をしていると、時間が流れるのが速い。
お酒の力と照明の暗さで心が緩む。
次のお酒を頼んでみようか、と思ってマスターを呼ぼうとしたら慶に止められた。
「志輝、もうやめとけ」
「え…?」
「マスター、水くれ」
すぐに水が僕の前に置かれた。
「これ以上飲むと歩けなくなるから」
「んー…」
一口水を飲むと、ライムの爽やかな香りが広がった。
慶がカクテルをぐっと煽ってから会計をさっと済ませた。
「志輝、立てるか?」
「…うん、大丈夫…」
ふらっと立つと慶が支えてくれた。
タクシーを慶が呼んだところまでは覚えてる、気づくと僕は家のベッドに横になっていた。
傍に慶が座って作詞をしていた。
少し酒も抜けたみたいだ。
その背中に抱きつくと、慶が振り向く。
「起きたのか」
「うん、ここまで運ばせちゃってごめんね」
「気にするな」
譜を置いて慶が僕の頬にキスをする。
僕もキスを返すと、慶は向かい合って唇にキスしてくれた。
「…志輝、明日空いてたっけか」
「明日…?空いてると思うけど」
「じゃあ遠慮はいらないな」
そう言って慶は僕の肩を押して笑うのだった-
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