中古店でやばい物買ってしまった件

ノベルバユーザー247036

変化

 メインストリート外れのやや小汚い細道を急いで帰っている。


 が、俺の体力ではそんなに持つはずがなく、 途中で見つけた椅子にすると、ここぞと言わんばかりにリズが話しかけてきた。


『マスター。今よろしいでしょうか?』


 こいつは今度は何が要望なのか……


 右手に装着してある腕輪を見て
「何だ?」


 リズもこちらを見るように、腕輪の中の緑色の光をこちらに向けて
『マスターは先程買った物についてご存知ですか?』


 しばらく考えてみたが、やっぱり思い付かなくて
「いや、全く知らない……」


 リズは呆れるように
『ですよね……』


「おい待て、今馬鹿とか思っただろ!」


 リズは首を振るように、光を左右に振ると
『いえ、そんな事は思ってもいませんよ?先程の件で予想はしてましたので』


 探るように俺は
「つまりは俺が馬鹿なことも予想の内か?」


『えぇ……まぁ、そうですね……』


 はぁ……


 もう、突っ込むのはやめにしよう……俺が虚しくなる……


 気を取り直して、もう一度リズを見て
「んで?これらは何?」


 するとリズは先程とは違うテンションで
『はい。まず、本機能の基礎であり、中核を担う装置、CCAについて説明させて頂きます。』


 俺は首をかしげて
「CCA?何?それ?」


『はい。その腰にまいてあるベルト見たいのが、CCA 正式名称 compact combat ARMA つまるところ鎧に当たる部分です。もっともその機能は鎧に留まりませんが。』


「鎧に留まらない……他にもあるのか?」 


 このどっから見てもポーチ付きベルトにしか見えない、しかも鎧と言われてもせいぜい腹回りが守れる程度にしか見えない。


 他の用途が全然思いつかないでいると、リズは


『はい。CCAは鎧としての機能が基本ですが、ナノプラントを使用した物質の構成、又は返還が可能です。それにより、本機は現地で適切な装備を迅速に転換する事が可能です。』


「はぁ……」
 そう言われたが、何がなんだが俺にはよく理解出来なかった。


 すると、リズはこんな俺にも分かりやすい方法を模作してくれて
『そうですね、マスター。この機能にはフルオートモード、オートモード、マニュアルモードがある事をご存知ですか?』


「いや」


『では、そこからの解説致しますね。まず、フルオートモードはマスターが考えた事を読み取り、私がそれに沿った物を構築するモードです。』


 やはり、理解が出来ない……


読み取る?俺の考え?


 腕を組み、一生懸命捻ったが、やはり分からなかった
「それは、どうやってやるの?」


『では、実践する前に1つ、お願いがあります。』
 

「ん?何だ?買う系意外ならいいけど」


 流石にもう金の余裕が無いので、買うのは勘弁してくれと思っていると


『では、失礼します。』


 途端に視界が歪み、体全体に何がメリメリと入り込む感覚に襲われて、吐き気、頭痛、痙攣などが襲いかかってきて、今にも倒れそうだ。


 しばらくすると、ようやく落ち着いて
「ッ……なんだよ……いきなり……」


 目を開けてみるとある変化に気づく。


 別に、体がミュータント化した訳でも、幽霊が見えた訳でもない。


 ただ、視界の左下に謎の言語とゲージが表示してあったのだ。


「おい、リズこれは?」


『はい。今現在のCCAナノプラント残存量と、現在実行プログラムです。』


 ん?また訳がわからん事を……


『まあ、理解しなくても大丈夫ですよ!』


 俺はムッとして
「おい、馬鹿だからて、放置は良くないなぁ……」


『大丈夫ですよ!後から分かるようにしときますので!』


 その言葉がよく分からなかったが、まあそう言ってるんならそうなのだろう。


『では、フルオートモードを実践させて頂きますね。では、まずその荷物を見てマスターて下さい。』


 そう言われて荷物を見ると


ああ、このクソ重たいのを、また後で運ばなくては……


 そう考えていると、途端にベルト CCAから緑色の光の玉が出てきて辺り一面飛び交うと、その光は俺の体にまとわりついて、何かを構築していく。


 しばらくすると、光は消えたが自分の体にCCAとかと一体化した、骨組みだらけの装置が着いていた。


「おい、リズ!これはなんだ!?」
 あまりにも唐突な出来事に俺はパニックおこしていたが、リズが


『マスター。落ち着いてください。それが、フルオートモードですよ。試しにその荷物を持ってください。』


 未だに納得出来ないが、害はなさそうだから試しに持ってみると


!!!


 軽い!


 まるで羽毛のような軽さだ!さっきまでとは全然違う!


 あまりにも軽すぎる事実に興奮して、ついはしゃぎまくってくると


『マスター。ちょと子供ポイですよ?』


 その言葉に我に返った。


「ああ、悪い」


 すると、リズは次の説明をし始めた。
「では次はオートモード、マスターがイメージした事をできるだけ忠実に再現し、それに沿った形、機構などを搭載する機能です。なお、比較的に機能が優先されるため、形はイメージとは違った形になる時があります。」


 興奮気味な俺は、息を荒くして
「それは、俺が炎の剣を想像すれば出てくるていうこと?」


『はい。』


 よしー!炎の剣、炎の剣、炎の剣……


  すると、また緑色の光が出てきて、俺の手に集まると、それは、多少異なるがイメージそっくりの短剣が握られていた。


 俺は目を輝かして
「おおお!!!」


 試しにその場で振ってみると驚く程にちょうど良かった。振り回されるわけでも、軽い訳でもない、俺のポテンシャルを最大限引き出す形になっていたのだ。


「すげぇぇえ!!」


 そして、肝心の炎は念じて見たら、剣の刃の部分が多少変形し


ボッ!
 

 燃えた!


 俺はさらに興奮して!


 「リズ!これすげぇぇ!!!」


『お気に召してなりよりです。』


 そして、最後のマニュアルモードが気になって


「リズ!最後のやつ!」


『分かりました。』


 俺はその場で短剣を手放すと、緑色の光を発して消失し、その光はCCAと戻って行った。


 俺はそれを見て、またもやビックリし


「リズ!これは!!」


『はい。これは返還と言われる工程です。自分が構築した物を元に戻す工程になります。なお、返還はナノプラントが不足した場合、他の物質に踏め込むことで、補充が出来ます。ただし、他のCCAの物は受け付けません』


 が、俺は半分も聞いてなかった。


 そして、辺り一面がさっきよりもだいぶ暗い事には気づいて


「あっ!やべぇ!リズ!もう帰らないと!」


『分かりました。では生成物を全て返還します。』


 すると、骨組みだらけの装置も返還されていき、なんでも見ても不思議なもんだった。


 返還が終わると荷物をもって、急ぎ家に向かって歩いて行く。


◇◇◇◇◇◇◇◇


  やや風化した石畳の道が続く道を歩く。
 辺り一面はすっかりと、暗くなり、街灯の光がポツポツと照らしている。


 しばらくして、ようやく家に着いたが何かがおかしい。


 玄関が開けっ放しなのだ。


 俺は出る時にしっかりと閉めた覚えがあるし、何よりも、母は開けっ放しにしても閉めちゃう人だ。


 だが、今はそれが空いてる……


 忘れてるのかなと思いつつ覗いてみると、さらに異常な事になっていた。
 それは、玄関の先から荒らされていた。俺はまさかと思いつつ荷物をその場に置いて、そっと中に入って確認をした。


 すると、リビングが盛大に荒らされていて、その部屋に3人の短剣を持った男いて、その1人は刃先に血がついていた。


 俺は恐怖のあまりに倒れてしまって、物音を立ててしまい、男達がそれに気づく。


 そして、目線が低くなって、母が血の池に寝ているのを目にした。


 ヤバい……殺される……


 男達は1歩、また1歩と近づいてくる。


 俺は後すざりしながら男達から距離ととるが、いつの間にか部屋の隅にいた。


 すると、母を刺した男が俺の目の前に来ると。


「よぉ、坊主……運が悪かったな」


 男は冷たい目線でそう言うと、後ろの2人が


「おい!早くしろ!テラスの野郎が帰ってくるぞ」
「そんなガキ、一捻りにしてしまえ!」


 と急かしてくる、すると男は少し面倒くさそうに
「ああ、分かってるよ……今やる」


 その短剣を振り上げて、脳天をかち割る勢いで振りかざしてきた。


 咄嗟に左腕で防ごうと前に出すが、到底受け止めきれそうになかった。


 ああ……俺死ぬのかな


 そう思いつつ、俺は心のどこかで死にたくないと思っていた。


 短剣が俺の左腕を切り落とそうとする瞬間


『……臨時戦闘モードに移行、フルオートに移行、緊急防御機構展開、生成開始』


 その瞬間、とてつもない量の緑色の光の玉と強烈な衝撃波が発生し、男達がよろけると、その光は俺の体を包みだし、視界が緑色の光で塞がって殻のような物を形成していた。


 それと同時に体に何かが入り込んだり、出て行ったり、まとわりつくのが分かった。


 そして、約2秒過ぎた辺りで殻が弾け飛んだ。


 視界が開けて最初に見えたのは空中に無数にある数字と文字。


 そして自分の手足を見てみると、それはまるでドラゴンのような手や腕になっていた。


 なんだ……これは……


 よく見てると、それは有機的なドラゴンと言うより、ドラゴンを模した鎧。


 ふと、目線を上げると、驚いている男だちがいて、俺は込み上げてくる怒りに身を任せて1歩踏み出すと


「ちっ近づくなぁ!!!」
 男は、その短剣を突いてきた。すると


『回避プロセス移行。アクセル(意識加速)』


 周りがどんどん遅くなっていき、最終的に動いてるかどうか分からないぐらい敵の動きが遅かった。


 軽く避けて、そのまま顔面に向かって殴ると


 男の顔が弾け飛んだ、それも細かい破片になるほどに。その時加速が終わり、強烈な疲労感と頭痛が襲った。


 その見るも無残な男が、膝を着いて倒れると。


 残りの奴らが我先にと逃げ出していく。


 無論逃がすはずもなく、追撃のために足に力を入れて地面を蹴ると、猛烈なスピードで飛びあまりにも凄まじい勢いのため、若干左にそれたがそのまま殴った。


 すると、左腕に直撃し付け根から複雑にもげた。


「ツッッ!!!」


 泣きながら、男はもげた左腕を抑えながら急いで玄関に走っていった。


 俺もその勢いで玄関に出ると、既に男は既に20mは離れていた。


 いくらなんでもこの距離は飛んでは行けないし、何よりも今にも意識が飛びそうなぐらいもうろうとしていた。


 くそぉ……


 『……神経シナプス接続。ブレード出力93%』


 途端にいつの間にかぶら下げてあった先程の剣の柄を握っており、薙ぎ払うと光の刃が出てきて、その長さ約25m。それが、男を一刀両断にし、切り口は炭化していた。


 そして、もう1人の男は既にいなかった。


 俺はもうろうとしてる中、母の状態が心配になり、リビングに向かうと、先ほどよりも血が出ており、呼吸が細々しかった。


 何とかしようと考えていると、リズが


『マスター。今なら蘇生プロセスを行えば助かります。』


 俺はすがる思いで
「ああ!助かるなら何でもいい!やってくれ!」


『了解。では両手を対象に近づけてください。』


 言わるままに、俺は近づけると、腕のプレートの隙間かま空いて、そのから無数の針が母の体を刺した。


『状態確認……完了。修復開始。』


 すると、みるみるうちに傷口が塞がり、血の気が良くなり呼吸も元に戻って行った。


 約30分近くそうしていると
『……蘇生完了。自己回復可能な所まで回復を確認。』
 刺さってる針をしまうと、母は落ちるように寝た。そんな母を抱き上げて、リビングのソファに寝かせると


「母さん、少し待ってて今終わらせるから」


 俺は玄関から出ると


 闇雲でもいいからあの男を見つけ出して殺してやる!


 すると
『マスター。本機能には追跡機能が備わっています。』


「分かるのか!?」


『はい。約97%の確率で捜索可能です。』


 「頼む!」


 すると、視界色が反転し、モヤみたいなものがハッキリと見えた。


 この先にさっきの奴が……


 俺は1秒でも早く蹴りをつけるため、全力でそっちに向かって走り出す。


◇◇◇◇◇◇


 どこまで走ったのだろうか……
 検討がつかなくなるほど別の場所にいる。


 まだ3分程度しか走ってはないが、それでも3分で走ってこれるような距離ではなかった。


 『チューニング78%……危険領域突入……肉体限界まで後32分……』


 がそんな事俺には届いていなかった。


  5分ぐらい走っていくとそこから途絶えていた。それは、ボロボロ出会ったが、しっかりとした屋敷だった。
 改めて周りを確認してみると、そこはスラム街のだいぶ奥地にある所らしい……


「リズ……ここに居るのか?」


 確かめるよう聞くと
『はい。間違いありません。生命パターンが一致する人物がいます。』


 俺がその屋敷に踏み込もうとすると、
『待ってください。ここにはその他に、約150体の生命反応が確認されています。今のマスターでは危険です。』


 俺は殺らなければ母がまたあんな目に会うかもしれない……


「リズ……今やらないとダメなんだ……」


 『分かりました。しかしマスター。無茶はしないでください。』


 「ああ、分かってるよ!」


 そして、屋敷内に入って行く。






 やや大きめな中庭を通り過ぎた辺りで急に人が増えた。


「おい!見ろよ!命知らずの馬鹿がきだぞ!」
「マジかよ!俺にやらせろ!」


 どうやら、ここが溜まり場らしい……


 そして、そこのたまり場には男達が約100人近く居て、囲むように動いている。


 その中に一際大きい大男が目の前にたった。すると、そいつは見下すように
「どうした坊やぁ?迷子か?それともご飯でも恵んて欲しいのか?」


 周りの奴らはそれを聞いて笑っている。


 かなりイラついていた俺は
「邪魔だ……退け」


 すると、その大男血管むき出しに
「ああ!?テメェ!今なんった?」


 俺は言い返すように
「邪魔だ!」


 大男は腰にある片手斧を取り出して
「てめぇ……俺を知っていて言ってるのか?」


「いーや!知らねーな!」


 すると大き振りかぶり
「じゃあ!覚えとけ!このガーランド様を!」
 全体重を乗せて振りかざして来た。


 が、俺はその場で回し蹴りをして、斧を粉砕ふると、体制が大きく崩れた大男に、勢いでもう片方の足で回し蹴りを左肩から食らわすと


「!!!!」


 大男の肩はありえない凹み方をし、蹴り終わる頃には宙に舞っていて、肩部が無くなっていた。


 周りはその光景をみて、襲ってくるどころか逃げ出すやつまで居た。


 が、こいつらも奴の仲間なら、逃がす理由も無く


「リズ!!一掃しろ!」


『受諾しました。ナノプラント使用率46%形成開始します。』


 緑の光が空間に充満腕には大型の6本の銃身に、肩には大型の大砲、さらに色々と追加されていき、視界の左下にはよく分からん沢山の項目の数字が並んでいた。


『マルチロックオン開始。』


 視界に人を囲うようにカッコが一人一人に付くと


『全砲門射撃開始。』


 異様な轟音と閃光と噴煙が走り、左下の沢山の項目の数字が勢いよく減っていき、辺り一面を薙ぎ払う。


 あちこちから、火花や血しぶきなどが飛び散りる。


 俺はその状態で徐々に回転していき、撃ち終わる頃にはもう10人程度しか残っていなかった。


 そいつらはもう、戦う意思は残っておらず、逃げ出す奴以外残ってはいなかった。


 そいつらも殺るために、弾切れの装置を全て分離させ、背中からさらに大型のノズルが生成、展開されると、そこから強烈な青い炎が出てきて、その推進力で驚異的なスピードで殲滅していく。


 そして、気づけばそこは燃え上がる瓦礫に無数の弾痕、硝煙と肉が焼ける匂い、そして無数の原型すら止めていない死体の山。


 ふと、目線を上げてみれば屋敷の2階から覗いているやつが居た。


 そいつはふと姿を消した。


 あと何人残ってる……


 するとリズが
『マスター。あとこの屋敷に2人存在します。』


 あと二人……


 俺は屋敷に向かって歩き始めた。


◇◇◇◇◇◇◇


 屋敷に入ってみて分かるのは、ここも中庭程では無いが、かなり無残な状態だった。


 中には子供が裸で手足を切られている者もいる。


 こんな……こんなことって……


 俺はその光景にますます怒りが込み上げてきて、曲がり角にある階段を上がっていく


「ヒィィ!!」


 かなり腑抜けた声がしたので見てみると、そこには、先程襲ってきた男が居た。そいつは涙目でおもらしをしており、後すざりしている。


「てめぇは!」
 そいつの首根っこを捕まえて壁に叩きつけると、壁にヒビが入って男は血反吐をはいた。


「お前は……お前だけは……」
 俺はだんだんと首を締めていき、男がそれを取ろうともがくが


パキィ


 硬いものが折れるような音がして男は脱力した。


 そいつを叩きつけるように捨てると、首がもげて転がって行った。


 そして、もう1人の生き残りが居ると思わしき部屋に足を踏み入こんだ。




 破壊されている大きめな扉を潜ると、そこには先程のガーランドとと言う大男よりも一回り小さかったが、とんでもない殺気を出している。
 

 そいつは、口に煙草をくわえて、2本の大剣を片手で構えて、そして、後ろからは何やら凄まじい魔力がだだ漏れていた。


 そして、その現象を俺は知っている。
「オーバードライブ……」
 そう呟くと、男は


 「ほう、知っているのか……この武技を」


 オーバードライブ……武闘家系の肉体強化系で主に魔力防御に使われるが、その副作用の肉体強化はどの魔力強化にも会得できないほどに大きい。ただし、見た目通りに魔力消費も半端じゃない。


 男はこちらを睨みつけるように見て
「俺の名はラッフル……まあ、戦士の嗜みていうやつだな。お前も名乗んな」


 こんな奴が戦士だと?ふざけるな!


 俺も睨み返すように
「オレはナオ・テラスお前を殺しに来た!!」


 俺は全力で地面を蹴ってラッフルに立ち向かって行く。


 それに答えるように、ラッフルもその大剣を振り回してきた。


 こうして、ラッフルVS俺の戦いが始まった。

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