『理外の無才者』〜不利すぎる状況でおれは強くなる〜

アルエスくん@DeusVtuber

勇者編 第三十三話 ブレインマッスル

勇者編 第三十三話 ブレインマッスル
 
 
 
 しばらく立つと、扉がノックされた。
 
 たぶんヴァルキリーだ。
 
「ラインハルト〜、私だ。開けてくれ」
 
 ふふふ。
 
「誰かね? 名前を名乗りたまえ」
 
「な……! 私だぞ! ヴァルキリーだ!」
 
「そうはいってもねえ、もしかしたら、決闘相手が声を変えておれを襲おうとしてるかもしれないしぃ〜」
 
「なるほど、ならこうすればいいか。『不敗』! 『ウィンドスラッシュ』!」
 
『発動『スキル『不敗』』』
 
『発動『スキル『剣技『ウィンドスラッシュ』』』』
 
「は、てめっ! 扉ぶっ壊すつもりかよ! 『シールド』!」
 
『発動『イメージ式魔法『シールド』』』
 
 おれの前に透明の盾が現れたと同時に扉がふっとばされて、シールドにぶつかった。
 
「扉壊すことはないだろ!」
 
「安心しろ、修理費は経費で出されるから問題ない!」
 
「ありありだよ! おれたちにぶつかってたらどうする!」
 
「魔法で回復させるつもりだったから問題ない」
 
「え? もしかして脳筋なの? 脳筋ヴァルキリーなの?」
 
「ふ、人は私のことを、戦闘狂ヴァルキリーと呼ぶ!」
 
「それ褒め言葉じゃないからね!?」
 
 なんだろう、すごい残念な印象がヴァルキリーについてしまった。
 
「さて、決闘のことだが、冒険者ギルドの闘技場でやることになった。というか私が決めた。今日だ!」
 
「唐突だなぁ!」
 
「というわけで転移するぞ。そこのエルフを巡って決闘するんだ。その子にもついてきてもらう」
 
「あ、そう。いついくんだ?」
 
「いまからだ! 『転移』!」
 
「え! 急すぎる!」
 
『発動『スキル『転移』』』
 
 目の前の景色が変わった。
 
 ブラックカーテンが使ってたようなエフェクトとかはなく、一瞬でつくスキルなのか。
 
 今いるのは部屋だった。
 
「なにこの部屋」
 
「なにって、闘技場の選手の待機部屋だな。闘技場の四方に入場口があるから、ここは『北』の待機部屋だ。」
 
「だからって、ファンタジーの世界じゃないか! なんで芸能人の楽屋みたいなんだよ!」
 
 今いる部屋は、まじでテレビで見るような楽屋だった。
 
「何言ってるのか知らんが、それと、そこのエルフは決闘の景品となるわけだから、連れてくぞ。
 
「あぁ、はいはいわかったよ」
 
「奴隷の首輪で隷属されてるから、命令してついてくるよう言ってくれ。」
 
「首輪は機能だけ壊してあるから、勝手に連れてっていいけど?」
 
「は? え? 壊したのか? まったく壊れてるように見えないし、大問題だぞ!」
 
「だったら、黙っててくれ」
 
「わかった」
 
「大問題とやらを簡単に黙っちゃうおまえもおまえだと思うんだけど!?」
 
 ところで、アルヴが喋らないな。
 
 あ、立ったまま気絶してる。
 
 うん、ヴァルキリーが扉壊したり、転移したりしたせいだな、きっと。
 
「それで? 開始はいつだ?」
 
「あ、あぁ、今から30分後、午前8時からだ。係員が呼びに来ると思う」
 
「ところで……闘技場の予定とか空いてたのか? なんでも翌日に決闘に使うとか急すぎないか?」
 
「君も驚いてないようだが?」
 
 そりゃあもう。
 
「慣れた。この世界が濃密すぎて……」
 
「この世界は別にこんな濃密じゃないぞ!? 君の周りがおかしいだけだ!」
 
「じゃあ、おれの周りにいる、騎士団長ヴァルキリーもおかしいことになるな」
 
「私は別におかしくないぞ! あと、闘技場は私の権力で借りた!」
 
「権力で借りるところがもう既に頭おかしい気がするんだけどぉ〜! っていねえー」
 
 もう既に、ヴァルキリーとアルヴの姿が消えていた。
 
「いやだ、もう疲れるぅ〜……はぁ……慣れって怖いな」
 
 簡単に扉を破壊されることにも慣れていくんだろうか……
 
 
 

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