『理外の無才者』〜不利すぎる状況でおれは強くなる〜

アルエスくん@DeusVtuber

勇者編 第二十八話 デュエルブレイバー

勇者編 第二十八話 デュエルブレイバー
 
 
 
「おーい、気づけ、ヴァルキリー!」
 
「は! すまない、少し動揺していた……」
 
 そりゃあ無理もないだろ。突然赤の他人が自分の祖先なんて言われたらなぁ。
 
「まぁ、ブラックカーテンが事実を言ってるかどうかは知らんから、あんま考えないほうがいいだろう」
 
「だが、気になることもある。すまないが、私は先に城へ戻って、図書室へ行こうと思う」
 
「あぁ、行ってらっしゃい」
 
 ヴァルキリーは走り去った……速いな!
 
 エルフくんを見ると……おれの足にもたれかかって寝ていた。
 
「はぁ、おれもさっさと城に帰りますか!」
 
 エルフくんは軽かった。少女みたいだったしなぁ……。
 
ーーーーーーーーーー
 
 城壁の内部まで入ったところで一人のクラスメイトと遭遇した。
 
「ちょっと待て! そこのお前ぇ!」
 
「あ? なんだ、金髪不良か」
 
「なんだと!? おれの名前を覚えてないのか!?」
 
「覚える意味ある?」
 
「いいか、よぉく覚えとけ! おれの名前は『セイギ』だ!」
 
「不良のくせに正義かよ、ブフッ!」
 
「なに笑ってんだぁ!」
 
 こいつ金髪に染めていて、それがイケメンの顔に似合ってるところが不良っぽくないんだのなぁ。
 
 まぁ、おれをいじめていたわけだけど。なんか勘違いしてるっぽいんだよなぁ。
 
「それ、その子についている首輪はなんだ!」
 
「なにって……、奴隷の首輪だけど?」
 
「奴隷だと!? 貴様奴隷を買ったのか! やはりクズだなてめぇ!」
 
「おれをいじめたりしてたあんたのほうがよっぽど悪だと思うけど? 不良だし」
 
「なんだと! お前らがおれの子分をいじめてたから仕返ししただけじゃねえか!」
 
 は? おれがいじめた? なにそれ。
 
「おれはお前の子分をいじめてなんかねえぞ」
 
 むしろこっちでも訓練中に襲ってきたし。
 
「嘘をつくんじゃねぇ! とりあえずその子を解放しろ!」
 
「え、嫌だけど、今更正義気取りか?」
 
「正義気取りか、だと? あぁ、そうだよ!」
 
「え? まじで不良のくせに正義気取りなの? 笑える」
 
 金髪染めてボタン外して、子分に騙されておれをいじめて、なにが正義なんだか。
 
「おまえが不良を笑うなぁ! 不良ってのはなぁ! 友情に熱く! 仲間やライバルとの絆があり! 人知れず誰かを助ける! 大人に屈しない!」
 
「漫画かよ……」
 
 まじで漫画みたいな不良を目指してるのか。
 
「それがぁ! おれの目指した不良なんだぁ! それをてめぇごときが笑うんじゃねえ!」
 
「そもそもだ、この子を解放させたあとどうするつもりだ?」
 
「家族のもとに返すに決まってるだろ!」
 
「その子の事情も知らないのに? 家族がいるのかもわからないのに?」
 
「なに……でも、奴隷はだめだ! それに、てめぇみたいなやつに預けられるわけがねぇ! 問答無用だ! 『神の正義』!」
 
『発動『ギフト『神の正義』』』
 
 金髪不良から黄金のオーラが柱のように溢れ出す。
 
 あ、やばくね? これ。
 
 そうして、金髪不良の突き出した、『黄金のオーラを纏った拳』を……。
 
「城の近くで争いはやめたまえ」
 
 ヴァルキリーが『なんにも纏ってない手のひら』で受けとめた。
 
「冒険者ギルドに登録してるんだ。争いごとはギルドの決闘場で決闘にて決めたまえ。今日はもう遅いから、明日にな」
 
 ヴァルキリーが提案を出すが、乗らなくてもいいだろう。
 
「いいぜ! 受けてやる!勝ったらてめぇの奴隷を解放してもらうからなぁ!」
 
 金髪不良が勝手に乗りやがった。しかも、すぐに城に去っていった。
 
 これじゃあ断われなくね?
 
「ラインハルトよ、相手は勇者だ。強敵だが頑張れよ!」
 
「あんたが提案したせいでややこしいことになったんですけどぉ! っていねえ!」
 
 ヴァルキリーはいつの間にかいなくなってた。
 
 …………はぁ、とりあえず部屋に戻ろう……。
 
 
 

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