『理外の無才者』〜不利すぎる状況でおれは強くなる〜
勇者編 第二十一話 フタナリヴァルキリー
勇者編 第二十一話 フタナリヴァルキリー
「ん。はぁ〜。よく寝た……。……は! 私は一体……!」
ヴァルキリーが起き上がってきた。オークはまだ横になっている。
「おはよお! ヴァルキリー、お昼ご飯はどうするの?」
「え! なぜ私はオークと一緒に寝てたのだ!?」
「そこのオークに不意打ちされたらしいよ? それでお昼ご飯は?」
「不意打ち……! なるほど。しかもこいつは、魔物ではないな……。カテゴリー的には亜人だ。」
「他のオークと違ってそいつだけ魂が、あるもんね。それでお昼ご飯は?」
「魂……だと? なるほど、魔物が亜人になった場合、魂を得て真の生き物になっているのか。おそらくは秘匿事項だろうに、知ってしまった……。」
「へえ、これって隠されてたんだ。それで、お腹空いたんだけど?」
「だとすると、おそらくはこの辺りに大量発生していたオークもこいつが関係あるに違いない。」
「我が配下って言ってたよ、なんかあんまり大事そうではなかったけど。それで、もうお昼の時間だと思うんだけど?」
「オークを狩って食料を得ようとしていたからな……。昼食はこれから調達しなければならん。」
「は? まじで? じゃあ、このオークに配下とやらを呼び寄せてもらおうぜ!」
「そういや、ラインハルト、君が助けてくれたのか? 感謝する。」
感謝されたよ。お昼ご飯のために戦っただけなのに……。
「実はなぁ、私にも呪いのギフトがあるのだ。名前は『女騎士の宿命』というんだ……。」
まじか。でもあんま驚かないようにしとこ。
「宿命? 変なギフトだな。宿命を与えられるなんて。」
「このギフトの効果は『オークあるいは触手系のモンスターを相手にすると、自分が弱体化する』、という効果なんだ。」
は?
「まるで、エロゲーみたいじゃねえか。」
「えろげー? よくわからんが、このギフトのせいで、雑魚ならまだしも、同格相手には負けてしまうんだ……。」
「な、なんて危険なギフトだ……。そんなにも見たいのか? 現実の女騎士の負けテンプレが……!」
そのギフトを与えたやつ、だいぶやべえな。
「でも、君が……助けてくれた! ありがとう、ラインハルト!」
「どういたしまして。さて、このオーク、実はおれの支配下においたんだけどどうしよう?」
このまま放置というのもあれだしなぁ。
ヴァルキリーを不意打ちしたとはいえ、殺してないし。
まあ、冒険者は死んでも蘇るけどさぁ。
「そのオークは、正確には、魔物ではなく亜人に変化している。冒険者ギルドで冒険者登録させればいいだろう。」
「オークでもできんのか!?」
「ああ、魔物系統のやつらは、登録のときに、『人化』スキルを強制的に覚えさせられるが、私もあったことはある。」
「へえ、人外ぎみたやつも、『人化』スキルで解決しちまうのね……。」
「城にも何人か、オークやオーガ、ドラゴンが使用人をしてるしな。見た目では判断つかないのだが。」
「へえ、ヴァルキリーは物知りだなぁ。助かったよ!」
「うぇっ!……あ、ありがとう……。なんか、照れる……。」
なんか頬を染めて、顔をそらした。照れてるな。まさか……。
「助けてもらったから、おれのことを好きになったってことは………………。」
「は、はぁ!?」
「ありそうだな。反応がわかりやすいな。」
そういうと、ヴァルキリーは顔を深刻そうにして近づいてきた。
近い近い!凛々しい顔を近づけないで、こっちも照れるわ!
「実はな……私は……両性具有……つまり、ふたなりなのだ。」
こいつはなにを言っているのだろうか。
「それでなのか、私はレズ気質っぽいのだ。」
「はあ?」
「だけど、君なら! ラインハルトなら! オッケーなんだ!」
「お、おう。」
「女装させれば似合うと思うこともあるから……。」
なにを言ってるのか、理解したくなくなってきた。
「だから! 女装を前提に付き合ってください!」
「断るよ!」
「なんでだ? 君は呪いのギフトで男性器を使えないそうじゃないか。」
「なんで知ってるんだ、そうだけど!」
「男の子にも、女の子になれるスイッチがあるんだぞ?」
「ちょ! おま! なんでそんなこと知ってる!」
「勘違いするなよ? 本で得た知識だ! それに……君こそ慌てて、知ってるようだな?」
「な、なにを企んでる!?」
「なあに、ラインハルトが女の子になって、私が男性役をすればいいんではないか?」
「嫌!」
「なぜだ? ギフトのせいで、性欲も持て余してるのではないのか?」
「そのギフトが問題なんだよ!」
まずい、丸め込まないと大変なことになりそうだ。
「ほう、ギフトのどこが問題なんだ? むしろ、ギフトによるデメリットを解消する提案だと思うぞ?」
「おれのギフトによって、男性器の機能はなくなった。でもそれは、肉体的なものだ。では、精神的なものはなんだと思う?」
「精神的なもの? 男性らしいとかか?それなら提案を呑みそうだが。」
「肉体的な子供を作る能力を失ったんだ。精神的には、恋愛感情を失ってるんだ。」
「なら、私のことは女性ではなく、男性と見ればどうだ?」
「だめだ。男でも男に惚れることはあるが、そもそもの感情の根源をおれは失ってるんだ。女性以外でも感情はわかない。」
よし、いい流れだ。事実しか喋ってないから、嘘を見破るスキルがあっても問題ない!
「恋愛感情がないとしても、性欲はあるんだろう? その性欲を私の両性具有の男性器で解消するために付き合うではだめなのか?」
「そうか、おそらくはこの『近未来型なんちゃってヨーロッパ』の世界は、政略結婚があるんじゃないのか?」
「おお、よくわかったな! あるぞ! 私は例外で、公爵令嬢だが、才能で騎士になったがな!」
公爵令嬢だと!? そんな高い身分だったのかよ。ステータスがある世界はやはりどこか力を優先するのかな?
「ともかくだ! おれがいた地球の世界は、政略結婚はない! 恋愛結婚だけだ! だから、恋愛感情がないのに付き合うなんて選択肢をおれは選ばない!」
「恋愛結婚に憧れてるのか? 憧れは理解から最も遠い感情だよ。」
「そうだとしても、おれは決めてるんだ! それを甘いとは言わせない!」
「そうか、なら……。とりあえずは置いておこう。諦めたわけじゃないから……。」
「むしろ、女っぽいところがあったのかと驚きだぜ……。」
さてと、森にとりあえず帰るか。
「「そこのオーク、寝たフリはバレバレだぞ!」」
「う、バレておったか……。なんかやばい話をしておったから……。ところでラインハルトじゃったか? 隣の白いそいつは誰じゃ?」
確かにハモってたな。おれの隣で。おれと同じ声で。
「ブラックカーテン……なんでここにいるんだ……帰ったんじゃなかったのか。」
「君の危機の運命を感じたんだが、別に危なくはない危機だったからな。」
「「では、帰ろうか。」」
…………。
「ハモるのは楽しいか?」
「ただの偶然さ。さぁ、帰ろう!」
そうして、おれたちは草原から去った。ダメージで動けず、倒れているオークを引きずって。
「ん。はぁ〜。よく寝た……。……は! 私は一体……!」
ヴァルキリーが起き上がってきた。オークはまだ横になっている。
「おはよお! ヴァルキリー、お昼ご飯はどうするの?」
「え! なぜ私はオークと一緒に寝てたのだ!?」
「そこのオークに不意打ちされたらしいよ? それでお昼ご飯は?」
「不意打ち……! なるほど。しかもこいつは、魔物ではないな……。カテゴリー的には亜人だ。」
「他のオークと違ってそいつだけ魂が、あるもんね。それでお昼ご飯は?」
「魂……だと? なるほど、魔物が亜人になった場合、魂を得て真の生き物になっているのか。おそらくは秘匿事項だろうに、知ってしまった……。」
「へえ、これって隠されてたんだ。それで、お腹空いたんだけど?」
「だとすると、おそらくはこの辺りに大量発生していたオークもこいつが関係あるに違いない。」
「我が配下って言ってたよ、なんかあんまり大事そうではなかったけど。それで、もうお昼の時間だと思うんだけど?」
「オークを狩って食料を得ようとしていたからな……。昼食はこれから調達しなければならん。」
「は? まじで? じゃあ、このオークに配下とやらを呼び寄せてもらおうぜ!」
「そういや、ラインハルト、君が助けてくれたのか? 感謝する。」
感謝されたよ。お昼ご飯のために戦っただけなのに……。
「実はなぁ、私にも呪いのギフトがあるのだ。名前は『女騎士の宿命』というんだ……。」
まじか。でもあんま驚かないようにしとこ。
「宿命? 変なギフトだな。宿命を与えられるなんて。」
「このギフトの効果は『オークあるいは触手系のモンスターを相手にすると、自分が弱体化する』、という効果なんだ。」
は?
「まるで、エロゲーみたいじゃねえか。」
「えろげー? よくわからんが、このギフトのせいで、雑魚ならまだしも、同格相手には負けてしまうんだ……。」
「な、なんて危険なギフトだ……。そんなにも見たいのか? 現実の女騎士の負けテンプレが……!」
そのギフトを与えたやつ、だいぶやべえな。
「でも、君が……助けてくれた! ありがとう、ラインハルト!」
「どういたしまして。さて、このオーク、実はおれの支配下においたんだけどどうしよう?」
このまま放置というのもあれだしなぁ。
ヴァルキリーを不意打ちしたとはいえ、殺してないし。
まあ、冒険者は死んでも蘇るけどさぁ。
「そのオークは、正確には、魔物ではなく亜人に変化している。冒険者ギルドで冒険者登録させればいいだろう。」
「オークでもできんのか!?」
「ああ、魔物系統のやつらは、登録のときに、『人化』スキルを強制的に覚えさせられるが、私もあったことはある。」
「へえ、人外ぎみたやつも、『人化』スキルで解決しちまうのね……。」
「城にも何人か、オークやオーガ、ドラゴンが使用人をしてるしな。見た目では判断つかないのだが。」
「へえ、ヴァルキリーは物知りだなぁ。助かったよ!」
「うぇっ!……あ、ありがとう……。なんか、照れる……。」
なんか頬を染めて、顔をそらした。照れてるな。まさか……。
「助けてもらったから、おれのことを好きになったってことは………………。」
「は、はぁ!?」
「ありそうだな。反応がわかりやすいな。」
そういうと、ヴァルキリーは顔を深刻そうにして近づいてきた。
近い近い!凛々しい顔を近づけないで、こっちも照れるわ!
「実はな……私は……両性具有……つまり、ふたなりなのだ。」
こいつはなにを言っているのだろうか。
「それでなのか、私はレズ気質っぽいのだ。」
「はあ?」
「だけど、君なら! ラインハルトなら! オッケーなんだ!」
「お、おう。」
「女装させれば似合うと思うこともあるから……。」
なにを言ってるのか、理解したくなくなってきた。
「だから! 女装を前提に付き合ってください!」
「断るよ!」
「なんでだ? 君は呪いのギフトで男性器を使えないそうじゃないか。」
「なんで知ってるんだ、そうだけど!」
「男の子にも、女の子になれるスイッチがあるんだぞ?」
「ちょ! おま! なんでそんなこと知ってる!」
「勘違いするなよ? 本で得た知識だ! それに……君こそ慌てて、知ってるようだな?」
「な、なにを企んでる!?」
「なあに、ラインハルトが女の子になって、私が男性役をすればいいんではないか?」
「嫌!」
「なぜだ? ギフトのせいで、性欲も持て余してるのではないのか?」
「そのギフトが問題なんだよ!」
まずい、丸め込まないと大変なことになりそうだ。
「ほう、ギフトのどこが問題なんだ? むしろ、ギフトによるデメリットを解消する提案だと思うぞ?」
「おれのギフトによって、男性器の機能はなくなった。でもそれは、肉体的なものだ。では、精神的なものはなんだと思う?」
「精神的なもの? 男性らしいとかか?それなら提案を呑みそうだが。」
「肉体的な子供を作る能力を失ったんだ。精神的には、恋愛感情を失ってるんだ。」
「なら、私のことは女性ではなく、男性と見ればどうだ?」
「だめだ。男でも男に惚れることはあるが、そもそもの感情の根源をおれは失ってるんだ。女性以外でも感情はわかない。」
よし、いい流れだ。事実しか喋ってないから、嘘を見破るスキルがあっても問題ない!
「恋愛感情がないとしても、性欲はあるんだろう? その性欲を私の両性具有の男性器で解消するために付き合うではだめなのか?」
「そうか、おそらくはこの『近未来型なんちゃってヨーロッパ』の世界は、政略結婚があるんじゃないのか?」
「おお、よくわかったな! あるぞ! 私は例外で、公爵令嬢だが、才能で騎士になったがな!」
公爵令嬢だと!? そんな高い身分だったのかよ。ステータスがある世界はやはりどこか力を優先するのかな?
「ともかくだ! おれがいた地球の世界は、政略結婚はない! 恋愛結婚だけだ! だから、恋愛感情がないのに付き合うなんて選択肢をおれは選ばない!」
「恋愛結婚に憧れてるのか? 憧れは理解から最も遠い感情だよ。」
「そうだとしても、おれは決めてるんだ! それを甘いとは言わせない!」
「そうか、なら……。とりあえずは置いておこう。諦めたわけじゃないから……。」
「むしろ、女っぽいところがあったのかと驚きだぜ……。」
さてと、森にとりあえず帰るか。
「「そこのオーク、寝たフリはバレバレだぞ!」」
「う、バレておったか……。なんかやばい話をしておったから……。ところでラインハルトじゃったか? 隣の白いそいつは誰じゃ?」
確かにハモってたな。おれの隣で。おれと同じ声で。
「ブラックカーテン……なんでここにいるんだ……帰ったんじゃなかったのか。」
「君の危機の運命を感じたんだが、別に危なくはない危機だったからな。」
「「では、帰ろうか。」」
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