転生悪魔は、ユグドラシルでエルフ名乗ってます

御丹斬リ丸

第6話 僕と契約して殺戮少女になってとは言わないがとりま契約しろや



【アーツハンドオンライン】には契約というシステムが存在する。


悪魔はレベル1からどの種族に比べても圧倒的に強く俊敏で防御力も高い面から使い勝手の良さそうだと思われがちだが、実は不遇種族として知られていた。
それは悪魔の戦闘時の制限の多さからである。
悪魔はHPが6割以上で人型形態に固定されており本来のステータスの10分の1ほどしか力を出すことができない。
3割以下で部分悪魔化、1割以下で完全悪魔化が可能でHPが5%以下まで下がった時に覚醒と呼ばれる最終形態に変化することができる。
非常にHP管理が難しく、覚醒までしてしまうと仲間まで殺してしまう為、人気は低く滅多に見ない珍獣的な扱いだった。
それでもロールプレイをする人には人気で、獣系の悪魔で人狼ロールプレイをしていたプレイヤーや、火山地帯に存在した廃城を占領し魔王として君臨したPKプレイヤーなんかもいた。
エルフとしてロールプレイをしていた俺もその中に当て嵌まるだろう。


そして、エルフをロールプレイする上で弓メインの『弓狩師』というこれまた不遇職を選択することで強さや使い勝手、などは犠牲した。


不遇職+不遇武器+努力=最強
この式が通用したのは俺だけだが。
弓は魔法弓と呼ばれ、実際には弓の形をした銃だと思ってくれてもいい。
弦はないが弓を引く動作をすることにより球が発射され、敵を撃つのだが、自動ロックとか追尾などと言うものはなく、ファンタジー系のゲームなのにFPSをやっている気分になるのが弓系の職業だった。
しかしFPSが得意だった上にHP管理がとか楽勝だった俺にはこれ以上ないほどに最高の組み合わせでいつのまにか最強の座についていた。


話を戻すが、契約とは何かという話をしよう。
契約とは悪魔のみに使えるスキルで、契約を依頼者と結ぶことにより本来HPをギリギリまで削らなければ使えない悪魔化をその制限を取っ払いって使えるようにする神スキルだ。
しかし、相手が担保にする代償が大きければ大きいほど制限とハブが上昇するというもので、プレイヤー時代悪魔系プレイヤーと契約を結ぶような人はいなかった。
何か代償にするなら自分でやるからいいやといった感じで。


だが、この世界にきてからはどうだろうか。
プレイヤーの存在はなく、ゲーム世界と違って凄いヤバ目な存在に人々は生活を脅かされているにも関わらずあまり強そうな奴はいない。
だからこそ、よくわからない存在にでも縋らなくてはいけないし、命を掛けてでも復讐をしたいと考えたのだろう。
この様子ならばきっと問題は解決する。


彼らが本気ならば代償にするものも大きくなるはずだし、勇者だろうが機巧種だろうがなんとかなるだろう。



俺は悪魔だが心はエルフだ。
ずっとずっとゲームといえど7年もの間付き合い、会社であった嫌なことも過去も何もかも忘れて『シダン』になりきって生まれ変わって、歩んで来たんだ。
だからこそ、夢かもしれないけれどせっかくこの姿になれたのだからこんなところで死にたくない。
だが、悪魔のプライドというものか、逃げたくない。それに世界最強の弓職【弓神】の称号を持つものとして皆に強いと言わせる世界の敵とやらに挑戦したくもなった。


だから、協力する。



いや、契約してやろう。


「手を貸すのに値しない雑魚である貴様ら人間共……。我との契約は代償が非ではないがそれでもいいか?」


「……もしも契約を結ばなかったらどうなりますか?」



「死だ。皆殺しにして元の場所に帰るだけだ。貴様はタイミングを間違えた。
本当は殺してやりたいところだが勇者には興味がある。
力を貸してやってもいいぞ。」



「は、はい。お願いします!契約をさせてください!代償は幾らでも払います!だからっ!奴らを潰す力を!


力を貸して下さいっ!!」




「言質はとったぞ。では"契約成立"だ」




          

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