第17話恐るべき敵。奴は苔喰いの化け物

(三人称視点)

古代から。
この世界が創世された時に生まれた彼らは長い間、仲良く慎ましく暮らしていた。
天敵は愚か彼ら以外の生物は存在しない環境だったため多いに繁栄を遂げた。
湿岩歴780年ごろ、突如として降り注ぎ始めた高濃度の魔力により高度な知的生命体として目覚めた苔たちは、混乱していた。
今までは繁殖することだけを苔として行っていたのに突如として思考レベルが人間レベルまで引き上げられたのだ。
混乱しないわけがない。
頭が良くなっても苔は苔であり移動することが出来なかった為、目覚めた者同士で情報のやり取りを始めた。
苔という生き物は根が繋がっており繁殖した個体が別の株から出ることはない。
何を言いたいかと言うとこの星の苔は一つの株が長い年月とファンタジーなパワーにより大繁殖し岩石に少量の水しかなかったこの星を緑の惑星に変えたのだ。
元は一つの苔だったごともあり、高速で情報をやり取りしていた。
時間とともに目覚める苔も増え湿岩歴2602年には600億もの苔たちが高度な社会を築き上げていた。
目覚め始めてから1900年程の間に支配階級や国が誕生したが元は一つの苔だったことが幸いし反乱や国の崩壊、犯罪などは発生しなかった。
まぁ最もたる要因は彼らが苔であり動けなかったからであろう。
動けない苔に道具は使えず、せいぜい嫌がらせで栄養の供給をしない程度である。
苔の社会はとても興味深く、一般市民から支配階級まで光合成をすることと魔力を取り込むという義務がある。
支配階級の苔は基本的に初期に目覚めた者たちであるが中には優れた知能を持つという理由で成り上がったものもいる。
ここで苔の社会の役割りのあり方を説明しようと思う。

一般の苔、彼らは支配階級の考えた物事を共有しながら話し合いより具体的な答えを出したり知識を共有して保存しておくのが仕事だ。
わかりやすく言えば、コンピュータを沢山繋げて高速で計算させたり、メモリにデータを保存したりコピーしてバックアップしたりすることに似ている。

支配階級の苔は様々な物事に関してものを述べるのが仕事だ。
それから一般の苔たちの指揮をとることも行っている。

彼ら、苔の社会は単純であるが理想的な社会だ。
敵もいない、病気もならない、戦争も起こらない、嗜好品など必要せず、欲望は薄く平和だ。
ただ人間が彼ら苔に転生するのはおススメ出来ない。
なぜなら暇過ぎるからだ。

◇◆

さて、本題に入ろう。

ーーー湿岩歴2712年

あれから100年程たち現在。
苔はもはや飽和状態となり一部の超重力地域以外は侵食し終わっていた。
苔は何故我々は生まれたのかという知的生命体最大の謎に答えをだし、また動けない体で他の星に存在するかもしれない知的生命体と更新する方法を模索していた。
あれはよく晴れた朝方のことだった。
普段地表に降り注ぐ魔力の70倍ものエネルギーを発する球体を観測したのは。
苔はや耳を持たない代わりに空間のありとあらゆるものを感じるセンサーを持っていた。
すぐに異変を感じ対策を練ろうと動き始めた苔たちを無慈悲にも何者かが押しつぶした。
突如として情報が取れなくなった苔たちは波紋のように混乱が広がり情報が麻痺した。
何が起こったのか、自分はどうなってしまうのか、苔たちは怯えて必死にこの状況から抜け出す方法を模索した。
そして彼らは気づいた。
気づいてしまった。
苔は移動出来ないことに。
そしてどこからともなく聞こえてくる断末魔。
震え上がる苔たち。

日没までに8000もの苔が死亡した。

そして命からがら脱出した苔は伝えた。
「かの化け物は我々に気づいていない。そして、我々を食べる。」

苔喰いの化け物。
なんと恐ろしいことだろうか。
今すぐにでも逃げたい。
だが苔だ。
動けるはずもない。

動けないことで起こらなかった争いに動けないことに感謝していたが、今は誰もが呪いたい気分だった。

ーーー

ちょっとシリアスな感じでしたが如何でしたか？
補足あります。
湿岩歴とは、苔の中でも学者にあたる者達が推測した最初の苔が生まれた日を湿岩歴0年としている。
たったの2700年ぽっちで苔が大繁殖出来たのは魔力によって遺伝子が変化した結果です。
この世界の魔力は地球でいう放射線に近く、耐性のないものが長時間当たり続けると病気になり死んでしまいます。
その辺の詳しい内容は次くらいの章でわかると思います。
それから苔達の考えている1年と地球の一年は全くの別物です。

補足+脱線はこのくらいにして……次回は邪神(主人公曰くクソジジイ)視点に戻ります。
誤字や脱字系は読み直しても気づけないことが多いので指摘して頂けるととありがたいです。
何かあればコメントお願いします(´∀｀)>