適当に強そうなスキルを選んで転生したけれど、8000年も生きる間にすっかり忘れてしまったので無自覚チートでスローライフを送ります

御丹斬リ丸

第10話 料理下手な奴が作るとうなり声が聞こえるというシーンがあるがあれはマジ




苔の繁殖が遅い。
そう思ったのは数年前。
この世界に降り立って4年からは数えてない。何ごとも続けられない性格でして、ハハハ。


それよりも苔だ。
苔なんか食べたくないし、石だって…石は食べ物じゃないや。
苔はこの世のものとは思えないほど不味い。
前世の苔だってこんなには不味くはないはずだ。
だが、人間の第三欲求は恐ろしいもので不味くても一つの味では満足出来ないのさ。
それで昨日は石コロと青紫色の塗料をかけた苔のサラダなんかを作って食べた。
石の皿に新鮮な苔を乗せて毒々しい色をした塗料をドレッシングのようにかける。
この世界は石と水と木と苔しかないから苔は洗わずに食えるし、苔に住み着くという羽虫はいないから安心だ。
死なないからという理由と単なる好奇心から塗料を口にして見たのだが思いもよらぬ発見をしてしまった。
舌がピリピリする。


やった!
毒かどうかはともかく香辛料に変わるものを発見したぞ!ってね。
この発見のおかげで食ったら吐き気が止まらないし、食えたものではない食べ物から、吐き気が止まらないけど食べて食べられないことは無いような気もするくらいまでランクアップした。
一応、文化を忘れないように石の皿とか
石の箸とかを作って食べているのだが、洗うのが面倒なので最終的にはバリバリと咀嚼して終わりだ。


子供の頃駄菓子屋に行くときびだんごのお菓子ってあっただろ。
半透明の紙みたいなのに包まれているやつな。
あれと同じだよ。
手が汚れないようにとか袋にくっつかないように包まれているけど、あれ自体も食べられる。
そんな理論で俺も皿と箸を食べている。
石を食べるってどうなんだ。そう思うかもしれないが、苔だろうが塗料だろうが不味いものは不味いからお口直しに食べているのもある。
俺が発見した中で、一番石が味がマシだった。
なんたる皮肉か。


以前、石の鍋を作って火を使って苔と木を茹でて見たのだが、魔女の鍋如く怪し気な光を発し出し、おぞましい音と凄まじい煙を出して大爆発をしたので、驚いた。
火薬になれば儲けものだと何度もやったが、毎回違う結果になり変な……いやおぞましい物体が発生したので地下深くに封印してきた。
臓物で出来たスライム的な物体で青紫色色の光を発しながら『ヴォオオオォォ…』なんていうから怖くなって鍋に押し込めて何十にも石の箱に入れて封印したんだが、あれはなんだったのだろうか。



あとは水に火をつけて炒め物にも挑戦したが、いきなり食材が『ボッ』と燃え上がって灰になったのを見てああ、これ俺が料理出来ないように呪いでもかけてんだな。
って納得した。



えーと、なんだったっけ。
だいぶ脱線しちゃったけど、そう。そうだ、苔だ。
苔が繁殖力が悪くて全然増えない。
この前では1000年ほどで苔を食い尽くしほんとうにこの星は死の惑星になってしまうだろう。
だから、苔を食べるのを制限して一週間に一回だけ苔を食べることにした。
俺は健康思考だから、なるべくヘルシーなものを食べたいんだけどな。
いや苔なんか食べたり石を噛み砕いてる時点で健康もクソもないか。
まぁよい。
苔がなくなったら、俺しか生物がいなくなっちゃうし。


「ふっはっはっ!苔どもよ!我は寛大だからな貴様らが生きることを許してやる」


苔は無言で俺の話に耳を傾けている。


「ふん、我に感謝するがよいぞ!はーはっはっはー!」


苔は無言で俺の話に…
寂しさがMAXになった俺の最近の趣味がこれ。
苔に話しかける。



悲しかな。

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