自称聖者のクズくてニューゲーム【改正中】

御丹斬リ丸

キャラメイキングをしよう!side 神峰







ひたすら下に落下しながら幾何学模様や謎の文字が散らばる空間が続いていく。
赤、黄、青といった色で作られた魔法陣が無限に散らばり続ける宇宙を抜け、何重にも重なりあいは馴れ合う並列世界の海を抜け、ミラーハウスのように何処までも同じ世界が続く多重次元を超え深く深く落ちて行く。永遠にもひと時にも感じるその時間はついに終わりを告げた。


いきなり叩きつけられたような感覚を覚え、目を思いっきり開けるとそこには巨大な女性と男性と何人かの人がいた。
何か話しているようだったが水の中にいるような感覚で、聞き取れずただただふわふわとしている間に自然に瞼が下がり寝てしまった。






それから、しばらくして再び目を覚ますと、やはり隣には巨大な女性と男性がいた。
こんな巨人に近づかれたら本当なら逃げたくなるはずだが、不思議とならない。
巨大な女性は薄緑色の髪に青い眼をしており、まるで聖母のような美しさ、そして巨大な男性は煌めく金髪にこれまた神々しい白色の眼をしている。


それを遠巻きに見守る何人かの人間。ただ、転生の副作用なのかうまくピントが合わない。
声も出せない。あーとかうーとかは言えていると思う。ただ声が聞こえないだからわからないものはわからない。


ん?転生……そうか、そうか!
巨人ではなく転生した俺が赤ん坊だからなのか!
特に意識をしたわけではなかったが、口から自然に笑い声を発しており、巨人の男性が微笑ましげにこちらをみていた。
子供だからかな?感情がもろにでるようだ。


既に何度か寝起きを繰り返しているが如何やら転生は成功したようだ。
女神に見送られたあと、おかしな空間を落ちていった時は如何なるかとヒヤヒヤしたが、なんとかなったようだ。
やはり、女神ってか神のシステムで作った転生体というべきか、普通の子供に比べて覚醒率が高いな。
本来なら赤ん坊にこんなに難しいことを考えることはできないはずだから、やはり現地の人間と違うのだろうな…


ただ許せないのは、なぜ赤ん坊から一からやり直さないといけないのだということだ。
ほぼ生まれたばかりなのに覚醒しているせいで、漏らすわ、言葉が通じないわ、無意識に喚き散らすわ、いいとし (精神的に) にもなって女性から乳を吸うわ、全くこの痴プレイをなんとかして欲しいぜ。


「うぁぁぁぁぁぁ!やぁぁぁぁああ」
   (オラァ!早よミルク寄越せやぁぁ)
















なんだかんだ赤ん坊という生に悟りを開き過ごすことしばらく、もう今日で1年が過ぎた。
一年も時間を無駄にしたとか、転生したならなんか出来るだろうとか思ったかもしれないが無理、赤ん坊の体では出来ない。身体を動かそうとすると全身に筋肉痛を負ってるような痛みが走る。
よくあるラノベの主人公みたいに赤ん坊が歩けたりするわけねぇだろうがアホか?


まぁ、運動が嫌いって訳もあってほとんど動かず寝てばっかいたせいか、ハイハイと横にゴロゴロ転がることしか出来なかった。
だからと言ってなんだということもない。
え?移動出来るなら本を読めって?


する訳ないだろ、俺が…。


俺は勉強が大大、大っ嫌いなんたよ。
例え魔法が使えようと、言葉を話せるようになろうと本は読まん。自主的には絶対やるつもりはないな。
そもそも天才コースは望んでないのだよ。


俺が生まれた家はなんかすげー広い。もしかしなくとも金持ちだ。
廊下にまで出たのは一回だけだが、ふかふかの絨毯に窓から覗く何処までも続く庭園、重厚な木の扉に、さらには美しい天井画、おそらく神話をモチーフにしたもの。
屋敷自体が日本のように燃えやすい木ではなく頑丈な石で出来ているところを見ると世界観は中世から近代にかけての西洋だろう。
以前テレビで西洋建築の特集を見たことあるが、庶民の家は同じ石でも、汚くて大きさもまばらなただの石に木の屋根を乗せたような物だったが、重要文化財に指定されるような屋敷…いや宮殿かな。は、大きな石の柱に大理石の床というような感じだった。まさにこの家がそうだ。


そこに住める俺は、豪商か、貴族かの子供になるだろう。


前世というか転生する前は、足繁く美術館や博物館に通っていたくらいだったので、この屋敷の凄さがわかる。
そして二人の巨人つまり赤ん坊目線での両親と思われる男女は服装もさることながら身につけているアクセサリーも一線を画すような美しさを持っている。


ここで俺が思ったことは一つ、


(うっわ、めんどくせえのキタァー!)


金持ちとか権力者って大概争い事に巻き込まれるし跡を継がないといけないし、礼儀正しくしないといけないし、勉強しないといけないし、人脈作らないといけないし、冒険に行っちゃいけないし……うわぁぁぁぁ!いやダァ!










おほん…落ち着きました。
あの後、感情のストッパーが外れたみたいで泣き散らしたあと母 (仮)にあやして貰いました…


両親はそれほどでもないが、普段世話をしてくれるメイドさんらしき人が一歳にもなって言葉をまるっきし理解していないことに危機感を感じているようで、起きている時はやたらと絵本を読んでくれる。
勉強嫌いな俺でも絵本の時間は好きで、流石、金持ちというべきか、魔法が込められた本で、すげー面白い。
本当にファンタジーなんだなって思ったけど、魔法が込められている絵本は分かりやすく言うとホログラムみたいな感じだ。


聞いている言語も本に書いある文字も全く理解出来ないがホログラムによって俺のように教養のない子供でも楽しめるように工夫されている。
一番のお気に入りは、闇の陣営に堕ちた魔法使いが次々と悪徳貴族を締め上げる物語で、最初はこんなの子供に聞かせる内容かよ。とか思ったが、虜になっていた。




絶対に自分から勉強はしないと誓っていた俺だがその固い誓いは半年で裏切ることになる。
赤ん坊に転生してから早一年半、どうしょもなく暇なのだ。
鏡もなければ窓もない、無駄に広い部屋に一人きり、ベッドや本、それから魔法的なエネルギーを感じるランプ、そこに偶に世話役のメイドさんが来るだけ、暇だ…。


よし、文字がわかる程度には、勉強しよう


半年前の自分から”裏切り者めぇ!”と聞こえた気がしたが幻聴だ。
いつも寝ているベッドの隣に置いてある子供でも手が届くように作られた本棚から適当に本を取り出し読んでみる。
なになに?初心者魔法使いのための基礎、へぇ。




読んでみる。




読んで…みてるよ。




読んで……ぐーーzzZ














はっ!ヤバ…寝てた。
高校生のとき、英語の教科書読んでた時もこんな感じだったな。


あい きゃーん すぴーく いんぐりっしゅ。
あい すぴーく じゃあぱにーず。




言ってて恥ずかしくなるな。
文字はとりあえず保留で徐々に覚えて行こう。
何をやるかって?ずばり、スキルを鍛えるのだ。


魔法系は文字が読めないから後回しだが、キャラクターデータを引き継ぎして一人葬りさった後、まるっきし身体を動かしていない。
これでは腕が鈍ってしまうと言う訳で少し早い気がするがスキルの練習することにした。


クソ雑魚な斥候が最初から持ってるスキルである影魔法だが、最初は影にものを収納できる便利機能くらいでしかないが俺のようにレベル100越えをすると、壁や天井に張り付いたり、影と影を移動したり、影をまとわせて身体強化をしたりと色々できるようになる。


今回は身体強化もどきを使って無理矢理立ってみることにした。
そのまま壁まで歩いて壁に張り付いて見たがなんの問題もなかった。


そして壁から飛び降りた俺は右手を広げ床に叩きつけーー口寄せの術!……とはならないが、スキル《地形把握》を使用した。
スキル《地形把握》は、斥候の隠しクエストで発見できるもので大変重宝している。


皆にもわかりやすく説明すると、よくあるMMO系のゲームとかで右上に表示されているマップを頭の中に出せるスキルなのだ。
床に叩きつけた俺の右手から波状に魔力が広がり徐々にマップを完成させつつあった。


ん?地下に見ちゃいけなさそうなヤバそうな部屋を見つけてしまったが黙っておこう。


マップで確認したところ、メイドさんがこちらに向かってきていたのでスキル練習は終了し、ベッドにいつも通り潜り混んだ俺は回復魔法で癒し寝たフリをした。




そういえば、死体どうなったんだろ…。
腐ってそうだし、入れときたくないから夜廊下に出て窓から捨てておくか。














◇◆




屋敷の者が寝静まった後、廊下を歩く者がいた。


こんな夜中に明かりもない中、コソコソと行動する奴はなにか疚しいことがある者がだろう。
重厚な木の扉を少し開けてするっと廊下に出た陰はまるで明かりのある場所を進むかのように早々と歩きだし、窓に手をかけた。
その陰から生える影がもぞもぞと生き物のように動き出すと、窓からなにか巨大な生臭い物を落とした。
3階から落とされたそれは地面に叩きつけられることにより、ぐしゃぐしゃに潰れてドス黒い赤い花を咲かせた。


その花から臭うあまりの悪臭に吐き気を催した陰はその場をそそくさと逃げたし、ベッドに潜り何事もなかったように眠りについた。










後日、密かにアンデット化していた彼が浄化されたのだった。





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