《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

執筆用bot E-021番 

124話~決戦~

 屋根からおりた。
 依然として気絶しているロロナのことは、キリアが背負っていた。



「聞こえますか」
 と、セイは念話でレフィール伯爵に連絡をとっていた。



 しかし、落ちついて話をしている暇はない。すぐ前の前には2匹の黒い粘液がうごめいている。眼前の2匹だけならまだ良い。



 入道雲のような巨大な黒い粘液が、都市サファリアの城壁によりかかっている。城壁の一部がそれによって崩されようとしていた。



『どうかしましたか?』



「〝封印〟を入手することができましたよ」



『お手柄です! どうやって手に入れたのですか?』



「説明している暇はなさそうです」



『そうですか』



「〝封印〟を手に入れたは良いんですけど、目の前に黒い粘液がいまして、どうすれば良いのかわからないんですよね」



 被害が広がらないように、イティカとセイで抑え込んでいるが、いつまで抑えられるかわからない。



『おそらく〝完全印〟を与えられた者でしょう。触れれば良いのです。それで無力化できるはずです』



「ありがとうございます」



 ムリしないでください――というレフィール伯爵の心配そうな声が、セイの心の耳朶を打った。



「こいつをどうにかする方法はわかったか?」
 と、イティカが尋ねてくる。



「ええ」



 左右には住居が建ち並んでいる。ストリートが伸びていて、黒い粘液たちはおぼつかない足取りで、にじり寄ってくる。黒い粘液の奔流。セイとイティカを呑み込もうと襲いかかってくる。



(封印のチカラがホンモノならば……)
 避ける必要はない。



 セイは手を前方に差し出した。粘液がセイの手に触れた。ヌメリとしている。厭な感触だった。



 呑み込まれるかと危惧した。問題なかった。セイの手に触れた粘液は、その場に凍りつくことになった。タギールとマッシュだったものは、カチンコチンにかたまっていた。



「やったか?」
 と、イティカが尋ねてくる。



「死なないみたいですから、殺すことはできないみたいですけどね」



 だから、封印するしかないのだろう。
 ノックするように叩いてみた。
 コチンコチンと音がした。



「問題は、あれだな」
 と、イティカは崩れかかっている城壁のほうを、フランベルジュの剣先で指差した。入道雲のような巨大な黒い粘液。はたしてあの大きさのものを、凍りつかせることができるのか。




 正直、行くのが怖い。
 けれど、臆してはいられない。



 セイは振り返った。



 フォルモル、キリア、シラティウスの3人がいた。薬師のカール・セルヴィルと物書きのクロニル・セルヴィルがいた。ザンザとテルデルンがいた。ゴウス・エインと他の女たちがいた。



 キュリンジを旅立ったとき、レフィール伯爵から受けた命令は、「女たちを守れ」ということだった。今こそ、その命令を果たすときだ。



「無事に戻って来い」
 と、イティカが言った。



「もちろん」



「その……。あなたがいなければ、魔王を封印しても、人類は滅亡することになるのだから」



 セイは苦笑した。
 魔王よりも、そっちのほうが怖ろしい。

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