《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする
124話~決戦~
屋根からおりた。
依然として気絶しているロロナのことは、キリアが背負っていた。
「聞こえますか」
と、セイは念話でレフィール伯爵に連絡をとっていた。
しかし、落ちついて話をしている暇はない。すぐ前の前には2匹の黒い粘液がうごめいている。眼前の2匹だけならまだ良い。
入道雲のような巨大な黒い粘液が、都市サファリアの城壁によりかかっている。城壁の一部がそれによって崩されようとしていた。
『どうかしましたか?』
「〝封印〟を入手することができましたよ」
『お手柄です! どうやって手に入れたのですか?』
「説明している暇はなさそうです」
『そうですか』
「〝封印〟を手に入れたは良いんですけど、目の前に黒い粘液がいまして、どうすれば良いのかわからないんですよね」
被害が広がらないように、イティカとセイで抑え込んでいるが、いつまで抑えられるかわからない。
『おそらく〝完全印〟を与えられた者でしょう。触れれば良いのです。それで無力化できるはずです』
「ありがとうございます」
ムリしないでください――というレフィール伯爵の心配そうな声が、セイの心の耳朶を打った。
「こいつをどうにかする方法はわかったか?」
と、イティカが尋ねてくる。
「ええ」
左右には住居が建ち並んでいる。ストリートが伸びていて、黒い粘液たちはおぼつかない足取りで、にじり寄ってくる。黒い粘液の奔流。セイとイティカを呑み込もうと襲いかかってくる。
(封印のチカラがホンモノならば……)
避ける必要はない。
セイは手を前方に差し出した。粘液がセイの手に触れた。ヌメリとしている。厭な感触だった。
呑み込まれるかと危惧した。問題なかった。セイの手に触れた粘液は、その場に凍りつくことになった。タギールとマッシュだったものは、カチンコチンにかたまっていた。
「やったか?」
と、イティカが尋ねてくる。
「死なないみたいですから、殺すことはできないみたいですけどね」
だから、封印するしかないのだろう。
ノックするように叩いてみた。
コチンコチンと音がした。
「問題は、あれだな」
と、イティカは崩れかかっている城壁のほうを、フランベルジュの剣先で指差した。入道雲のような巨大な黒い粘液。はたしてあの大きさのものを、凍りつかせることができるのか。
正直、行くのが怖い。
けれど、臆してはいられない。
セイは振り返った。
フォルモル、キリア、シラティウスの3人がいた。薬師のカール・セルヴィルと物書きのクロニル・セルヴィルがいた。ザンザとテルデルンがいた。ゴウス・エインと他の女たちがいた。
キュリンジを旅立ったとき、レフィール伯爵から受けた命令は、「女たちを守れ」ということだった。今こそ、その命令を果たすときだ。
「無事に戻って来い」
と、イティカが言った。
「もちろん」
「その……。あなたがいなければ、魔王を封印しても、人類は滅亡することになるのだから」
セイは苦笑した。
魔王よりも、そっちのほうが怖ろしい。
依然として気絶しているロロナのことは、キリアが背負っていた。
「聞こえますか」
と、セイは念話でレフィール伯爵に連絡をとっていた。
しかし、落ちついて話をしている暇はない。すぐ前の前には2匹の黒い粘液がうごめいている。眼前の2匹だけならまだ良い。
入道雲のような巨大な黒い粘液が、都市サファリアの城壁によりかかっている。城壁の一部がそれによって崩されようとしていた。
『どうかしましたか?』
「〝封印〟を入手することができましたよ」
『お手柄です! どうやって手に入れたのですか?』
「説明している暇はなさそうです」
『そうですか』
「〝封印〟を手に入れたは良いんですけど、目の前に黒い粘液がいまして、どうすれば良いのかわからないんですよね」
被害が広がらないように、イティカとセイで抑え込んでいるが、いつまで抑えられるかわからない。
『おそらく〝完全印〟を与えられた者でしょう。触れれば良いのです。それで無力化できるはずです』
「ありがとうございます」
ムリしないでください――というレフィール伯爵の心配そうな声が、セイの心の耳朶を打った。
「こいつをどうにかする方法はわかったか?」
と、イティカが尋ねてくる。
「ええ」
左右には住居が建ち並んでいる。ストリートが伸びていて、黒い粘液たちはおぼつかない足取りで、にじり寄ってくる。黒い粘液の奔流。セイとイティカを呑み込もうと襲いかかってくる。
(封印のチカラがホンモノならば……)
避ける必要はない。
セイは手を前方に差し出した。粘液がセイの手に触れた。ヌメリとしている。厭な感触だった。
呑み込まれるかと危惧した。問題なかった。セイの手に触れた粘液は、その場に凍りつくことになった。タギールとマッシュだったものは、カチンコチンにかたまっていた。
「やったか?」
と、イティカが尋ねてくる。
「死なないみたいですから、殺すことはできないみたいですけどね」
だから、封印するしかないのだろう。
ノックするように叩いてみた。
コチンコチンと音がした。
「問題は、あれだな」
と、イティカは崩れかかっている城壁のほうを、フランベルジュの剣先で指差した。入道雲のような巨大な黒い粘液。はたしてあの大きさのものを、凍りつかせることができるのか。
正直、行くのが怖い。
けれど、臆してはいられない。
セイは振り返った。
フォルモル、キリア、シラティウスの3人がいた。薬師のカール・セルヴィルと物書きのクロニル・セルヴィルがいた。ザンザとテルデルンがいた。ゴウス・エインと他の女たちがいた。
キュリンジを旅立ったとき、レフィール伯爵から受けた命令は、「女たちを守れ」ということだった。今こそ、その命令を果たすときだ。
「無事に戻って来い」
と、イティカが言った。
「もちろん」
「その……。あなたがいなければ、魔王を封印しても、人類は滅亡することになるのだから」
セイは苦笑した。
魔王よりも、そっちのほうが怖ろしい。
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