《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする
122話~黒い粘液~
「どうやって無力化すればいいんだ。これ!」
セイはそう叫んだ。
槍で突いても粘液であるからマッタク意味がない。剣で斬ると切断はできるようだが、粘液はどんどんあふれ出ている。しかも、チカラもある。粘液は冒険者ギルドの壁を壊して、机を放り投げて、乱雑に置かれた食器をひっくり返した。
「あれは不死身です。〝完全印〟のチカラを手に入れると、命の尽きない完全な存在になると」
「あ、あれが完全な存在だって?」
あんな姿になるぐらいなら、まだ人であるほうが良い――と思う。もっとも人の価値観はそれぞれだが。
「まさかあんな禍々しいチカラだとは、タギールやシルベ教の者たちも思っていなかったのだと思うのです」
「無力化する方法は?」
「〝封印〟があれば、文字通り封印できるか――と」
「3つとも取られちゃってるよ」
黒い粘液がセイの頭めがけて跳びかかってきた。セイはシドを抱えて、身をかがめた。セイの頭上を粘液が通過していった。セイの後ろにいた《愛を求めるもの》の女たちが、粘液にからみつかれていた。
「いやッ」
と、短く悲鳴をあげただけだ。
女たちは粘液に呑み込まれてしまった。
「な、なんだ? 人を食ったのか?」
このバケモノ、モンスターと一緒で人を食べちゃうみたいね――とフォルモルが言った。食べられないように注意しなければならない。
槍を構えて間合いをはかる。
間合いがわからない。
粘液は急に伸びてくることもあれば、縮こまってしまうこともある。ザンザ、テルデルン、《愛を求めるもの》の女たち。各々が武器を持って戦闘態勢に入っている。
でも、誰もこちらから攻撃を仕掛けようとはしない。
「本体を攻撃するというのは、効果あると思います?」
セイはすぐ隣にいたフォルモルに問うた。
「ダメね。ハルバードで何度も攻撃したけど、開いた傷口から血のかわりに、黒い粘液が出てくるだけよ」
「万事休す――ですかね」
封印がない以上、こいつらを倒すことは出来ないわけだ。イチバンの解決方法は、逃げる、ということだ。都市を包囲されているため、それもできない。
「そう言えばシド」
「なんでしょうか?」
シドもダガーを構えている。
「シドは他人に変装する能力を持っていたが、あれで〝封印〟を再現できないものだろうか?」
「ムリです」
即答だ。
「ダメか」
「私の変装は、変装した相手の特性などをコピーすることができます。ですが、印のチカラまではコピーすることは出来ません」
「それもそうか」
変装して他人のチカラまで使えたら、英雄印とほぼ同じ働きだ。
誰も打開策を思いつかないまま、黒い粘液と対峙していた。そのとき、さらに悪いことが起こった。
もう1人、黒い粘液が現われたのだ。
しかも、もう1人はキリアとロロナのことを掴んでいた。
「キリア――ッ」
と、セイは叫んだ。
気絶でもしているのか、キリアからの反応はない。死んでいることはないと願いたい。どうしてあの暗殺者まで、ここにいるのか考えるのは後回しだ。
「フォルモルはみんなを連れて、この場を離れてください」
「どうするつもり?」
「オレがドラゴンになって、キリアを取り返します」
「他に打開策もないし、それに賭けてみましょうか」
「はい。お願いします」
無茶しちゃダメよ――とフォルモルはセイのひたいにキスをした。フォルモルの熱い感触にセイの心臓がドキンと跳躍した。いまさらキスごときで緊張する、自分の精神がすこし面白かった。
冒険者ギルドは骨組は残っているが、もはや壁は穴だらけだった。セイを残して他の者たちは、そこから抜け出して行った。
セイはそう叫んだ。
槍で突いても粘液であるからマッタク意味がない。剣で斬ると切断はできるようだが、粘液はどんどんあふれ出ている。しかも、チカラもある。粘液は冒険者ギルドの壁を壊して、机を放り投げて、乱雑に置かれた食器をひっくり返した。
「あれは不死身です。〝完全印〟のチカラを手に入れると、命の尽きない完全な存在になると」
「あ、あれが完全な存在だって?」
あんな姿になるぐらいなら、まだ人であるほうが良い――と思う。もっとも人の価値観はそれぞれだが。
「まさかあんな禍々しいチカラだとは、タギールやシルベ教の者たちも思っていなかったのだと思うのです」
「無力化する方法は?」
「〝封印〟があれば、文字通り封印できるか――と」
「3つとも取られちゃってるよ」
黒い粘液がセイの頭めがけて跳びかかってきた。セイはシドを抱えて、身をかがめた。セイの頭上を粘液が通過していった。セイの後ろにいた《愛を求めるもの》の女たちが、粘液にからみつかれていた。
「いやッ」
と、短く悲鳴をあげただけだ。
女たちは粘液に呑み込まれてしまった。
「な、なんだ? 人を食ったのか?」
このバケモノ、モンスターと一緒で人を食べちゃうみたいね――とフォルモルが言った。食べられないように注意しなければならない。
槍を構えて間合いをはかる。
間合いがわからない。
粘液は急に伸びてくることもあれば、縮こまってしまうこともある。ザンザ、テルデルン、《愛を求めるもの》の女たち。各々が武器を持って戦闘態勢に入っている。
でも、誰もこちらから攻撃を仕掛けようとはしない。
「本体を攻撃するというのは、効果あると思います?」
セイはすぐ隣にいたフォルモルに問うた。
「ダメね。ハルバードで何度も攻撃したけど、開いた傷口から血のかわりに、黒い粘液が出てくるだけよ」
「万事休す――ですかね」
封印がない以上、こいつらを倒すことは出来ないわけだ。イチバンの解決方法は、逃げる、ということだ。都市を包囲されているため、それもできない。
「そう言えばシド」
「なんでしょうか?」
シドもダガーを構えている。
「シドは他人に変装する能力を持っていたが、あれで〝封印〟を再現できないものだろうか?」
「ムリです」
即答だ。
「ダメか」
「私の変装は、変装した相手の特性などをコピーすることができます。ですが、印のチカラまではコピーすることは出来ません」
「それもそうか」
変装して他人のチカラまで使えたら、英雄印とほぼ同じ働きだ。
誰も打開策を思いつかないまま、黒い粘液と対峙していた。そのとき、さらに悪いことが起こった。
もう1人、黒い粘液が現われたのだ。
しかも、もう1人はキリアとロロナのことを掴んでいた。
「キリア――ッ」
と、セイは叫んだ。
気絶でもしているのか、キリアからの反応はない。死んでいることはないと願いたい。どうしてあの暗殺者まで、ここにいるのか考えるのは後回しだ。
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