《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

執筆用bot E-021番 

122話~黒い粘液~

「どうやって無力化すればいいんだ。これ!」
 セイはそう叫んだ。



 槍で突いても粘液であるからマッタク意味がない。剣で斬ると切断はできるようだが、粘液はどんどんあふれ出ている。しかも、チカラもある。粘液は冒険者ギルドの壁を壊して、机を放り投げて、乱雑に置かれた食器をひっくり返した。



「あれは不死身です。〝完全印〟のチカラを手に入れると、命の尽きない完全な存在になると」



「あ、あれが完全な存在だって?」



 あんな姿になるぐらいなら、まだ人であるほうが良い――と思う。もっとも人の価値観はそれぞれだが。



「まさかあんな禍々しいチカラだとは、タギールやシルベ教の者たちも思っていなかったのだと思うのです」



「無力化する方法は?」



「〝封印〟があれば、文字通り封印できるか――と」



「3つとも取られちゃってるよ」



 黒い粘液がセイの頭めがけて跳びかかってきた。セイはシドを抱えて、身をかがめた。セイの頭上を粘液が通過していった。セイの後ろにいた《愛を求めるもの》アストランチアの女たちが、粘液にからみつかれていた。



「いやッ」
 と、短く悲鳴をあげただけだ。
 女たちは粘液に呑み込まれてしまった。



「な、なんだ? 人を食ったのか?」



 このバケモノ、モンスターと一緒で人を食べちゃうみたいね――とフォルモルが言った。食べられないように注意しなければならない。



 槍を構えて間合いをはかる。
 間合いがわからない。



 粘液は急に伸びてくることもあれば、縮こまってしまうこともある。ザンザ、テルデルン、《愛を求めるもの》アストランチアの女たち。各々が武器を持って戦闘態勢に入っている。



 でも、誰もこちらから攻撃を仕掛けようとはしない。



「本体を攻撃するというのは、効果あると思います?」
 セイはすぐ隣にいたフォルモルに問うた。



「ダメね。ハルバードで何度も攻撃したけど、開いた傷口から血のかわりに、黒い粘液が出てくるだけよ」



「万事休す――ですかね」



 封印がない以上、こいつらを倒すことは出来ないわけだ。イチバンの解決方法は、逃げる、ということだ。都市を包囲されているため、それもできない。



「そう言えばシド」
「なんでしょうか?」



 シドもダガーを構えている。



「シドは他人に変装する能力を持っていたが、あれで〝封印〟を再現できないものだろうか?」



「ムリです」
 即答だ。



「ダメか」



「私の変装は、変装した相手の特性などをコピーすることができます。ですが、印のチカラまではコピーすることは出来ません」



「それもそうか」



 変装して他人のチカラまで使えたら、英雄印とほぼ同じ働きだ。



 誰も打開策を思いつかないまま、黒い粘液と対峙していた。そのとき、さらに悪いことが起こった。


 もう1人、黒い粘液が現われたのだ。
 しかも、もう1人はキリアとロロナのことを掴んでいた。



「キリア――ッ」
 と、セイは叫んだ。



 気絶でもしているのか、キリアからの反応はない。死んでいることはないと願いたい。どうしてあの暗殺者まで、ここにいるのか考えるのは後回しだ。



「フォルモルはみんなを連れて、この場を離れてください」



「どうするつもり?」



「オレがドラゴンになって、キリアを取り返します」



「他に打開策もないし、それに賭けてみましょうか」



「はい。お願いします」



 無茶しちゃダメよ――とフォルモルはセイのひたいにキスをした。フォルモルの熱い感触にセイの心臓がドキンと跳躍した。いまさらキスごときで緊張する、自分の精神がすこし面白かった。



 冒険者ギルドは骨組は残っているが、もはや壁は穴だらけだった。セイを残して他の者たちは、そこから抜け出して行った。

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