《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

執筆用bot E-021番 

120話~シラティウスの戦いⅡ~

 不意にシドの振るったダガーが弾き飛ばされた。一本の棒が、シラティウスとシドの間に割り込んでいた。



「いい目覚ましになりましたよ」
 そう言ったのはセイだ。
 シドのダガーを弾いたのは、セイの槍だった。



「もう大丈夫なの?」
 シラティウスは尋ねた。



「まだ若干、手足は痺れるけど、カールの煎じてくれた薬がきいたみたいだ。かなり動けるようになった」



「そう」



 助かった。



 ただ、セイに助けられたことに、すこし違和感をおぼえた。シラティウスは半分は人だが、半分はドラゴンだ。



 同じ人族を見ていても、か弱い存在に見えることがある。それはフォルモルやキリアだってそうだし、セイのこともチッポケな存在に見える。自分が守ってあげなくちゃいけない存在に見える。だから助けられることに、違和感があったのだ。



「腐ってもドラゴンハンター。このシド・アライン。手足のしびれている男に遅れは取らないのです」



「いや。無駄な抵抗はよしたほうが良いぜ」
 セイがアゴをしゃくって見せた。



 テルデルンや《愛を求めるもの》アストランチアが、シドの背後に構えていた。



「せめてシラティウスだけでもッ」
 と、シドは新たにダガーを構えて、シラティウスのもとに駆けてくる。逆手に持って上段に構える。
 さっきと同じ構えだ。



「おっと」
 と、セイは槍の柄で、シドの胸を突いた。



「うっ」
 と、シドがよろめいた。



「そんなに振り上げちゃ、隙だらけだぜ」



 セイが足払いをかけると、シドはアッサリと転倒した。今だッ、とテルデルンが声をあげた。



《愛を求めるもの》アストランチアの者たちが、シドのことをひっ捕らえた。シドはたちまち拘束された。



「尋問なら、私に任せて」
 と、シラティウスが名乗り出た。



 今まで散々、命を狙ってくれた詫びをしなくてはならない。この馬用のムチで尻を叩きまわしてやろうと思った。



「よせよせ。シドが怯えてるじゃないか」



 顔を青くして、歯をカチカチと鳴らしていた。そういう顔をされると、イジメたくなるのだ。



「大丈夫。あれは演技だから、それに尋問は必要だから。尻の肉が裂けるまで、叩きのめしてあげるつもり」



「だから、よせって」
 と、セイがシラティウスからムチを取り上げた。



「あ……」
「見かけによらずドSなんだよなぁ」



 ホントウならムチを取り上げられたことで、すこしは苛立っていたかもしれない。けれど、今はあまり厭ではなかった。セイが無事だった。それが自分の胸の奥に、大きな安心を生んでいることに気づいた。



(彼がいれば……)



 万が一、ドラゴンになって暴走しても、止めてくれる。チッポケな存在のくせに、シラティウスの心の中では、セイは大きな存在だった。

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