《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする
116話~キリアの戦いⅠ~
副市バービカン。
バービカンというのはつまり、城門棟よりすこし出張ったところにある部分のことである。
構造上出張っているというだけであって、もちろん城壁に守られているし、都市の内部であることに違いない。
しかも跳ね橋をあげてしまえば、掘りが都市を守ってくれる。
単純なモンスターであれば侵入を許すことはない。
しかし――。
剣の結び合う音が、バービカンの内部に響きわたっている。亡霊どもが入り込んでいるのだ。
亡霊は斬っても斬れる存在ではない。
「くそったれッ」
と、キリアは吐き捨てた。
そう言うキリアにも、亡霊が襲いかかってくる。手に槍を持つ亡霊たちだった。槍の柄めがけてコブシを打ち込む。柄が粉々に砕けた。亡霊たちの持つ武器を破壊していくしかない。
しかしこれでは――。
「ジリ貧だッ。術者がいるはずだ。探し出せッ」
キリアはさっきから、マッシュ・ポトトのことを探している。ヤツがいるはずなのだ。見当たらない。
まさか都市の外から亡霊を出しているのだろうか。ならば、城を出て迎え撃つしかない。亡霊たちと剣を結び合っていた冒険者たちに、疲労が見えはじめている。
「苦戦しているようだから、手を貸してやるのだ」
城壁の上から、何から跳び下りてきた。
モンスターか?
違う。
真っ赤なドレスに身をまとった少女だ。瞳も髪も赤い。鮮血の少女。無垢な面をしているその少女を、キリアはよく知っていた。
「レリル・ロロナかッ!」
身構えた。
この厄介な事態に、さらに厄介なものが跳びこんできたとヘキエキした。杞憂だった。
「聞いてなかったのか? この貧乳筋肉娘。このレリル・ロロナが援護してやると言っているのだ」
「ひ、貧乳だとッ。失敬な。私はそこそこあるぞ。すくなくとも貴様よりかはなッ」
「なッ。ま、まぁ良いのだ。あの殿方は胸などよりも、腋に興味があるようだからな」
「は? なんの話だ」
「このレリル・ロロナのチカラが必要なのだろう」
ロロナはそう言うと、大鎌を振り回した。
あたりにいる亡霊たちが、一斉に刻まれてゆく。
〝斬印〟
ありとあらゆる物体を斬るという魔法だ。
「その鎌は……」
たしかセイが破壊したはずだ。
「わざわざ新調したのだ。これは命を刈り取る鎌ではない。私の進むべき道を切り開く鎌なのだ」
一振り、二振り。
亡霊たちが消されてゆく。
仲間になるとずいぶんと頼もしい。
「どういう風の吹き回しだ」
「あの鎌を壊されてから、私は自分が誰かに止めて欲しかったことに気づいたのだ。あの殿方が止めてくれた。あの殿方が私を求めてくれた。だから援護してやるのだ」
「あの殿方というのは、もしやセイのことか?
「もちろん」
キリアは混乱した。
この暗殺者にいったいどういう心境の変化があったのか。腋がウンヌンと言っていたが、よくわからない。
ただ、恋をする乙女の顔をしていた。
「事情はよくわからんが、援護してくれるならありがたい」
「勘違いするなよ――なのだ。私はあの殿方のために援護するのだ。貴様たちなど興味はないのだ」
「セイを求めているのは、貴様だけではない。女はみんなあの男を求めている」
セイを見ていると、キリアはときおり切なくなる。
どれだけ想っても、決して自分の腕の中におさめておくことはできないのだ。
「マッシュ・ポトトは橋にいる荷物の中に隠れているのだ」
ロロナはそうつぶやいた。
「橋だと? ウソじゃないだろうな?」
「脳みそまで筋肉なのか? このロロナがわざわざ援護してやっているのだ。ウソなんかつくわけないのだ」
たしかにウソではなさそうだった。
バービカンというのはつまり、城門棟よりすこし出張ったところにある部分のことである。
構造上出張っているというだけであって、もちろん城壁に守られているし、都市の内部であることに違いない。
しかも跳ね橋をあげてしまえば、掘りが都市を守ってくれる。
単純なモンスターであれば侵入を許すことはない。
しかし――。
剣の結び合う音が、バービカンの内部に響きわたっている。亡霊どもが入り込んでいるのだ。
亡霊は斬っても斬れる存在ではない。
「くそったれッ」
と、キリアは吐き捨てた。
そう言うキリアにも、亡霊が襲いかかってくる。手に槍を持つ亡霊たちだった。槍の柄めがけてコブシを打ち込む。柄が粉々に砕けた。亡霊たちの持つ武器を破壊していくしかない。
しかしこれでは――。
「ジリ貧だッ。術者がいるはずだ。探し出せッ」
キリアはさっきから、マッシュ・ポトトのことを探している。ヤツがいるはずなのだ。見当たらない。
まさか都市の外から亡霊を出しているのだろうか。ならば、城を出て迎え撃つしかない。亡霊たちと剣を結び合っていた冒険者たちに、疲労が見えはじめている。
「苦戦しているようだから、手を貸してやるのだ」
城壁の上から、何から跳び下りてきた。
モンスターか?
違う。
真っ赤なドレスに身をまとった少女だ。瞳も髪も赤い。鮮血の少女。無垢な面をしているその少女を、キリアはよく知っていた。
「レリル・ロロナかッ!」
身構えた。
この厄介な事態に、さらに厄介なものが跳びこんできたとヘキエキした。杞憂だった。
「聞いてなかったのか? この貧乳筋肉娘。このレリル・ロロナが援護してやると言っているのだ」
「ひ、貧乳だとッ。失敬な。私はそこそこあるぞ。すくなくとも貴様よりかはなッ」
「なッ。ま、まぁ良いのだ。あの殿方は胸などよりも、腋に興味があるようだからな」
「は? なんの話だ」
「このレリル・ロロナのチカラが必要なのだろう」
ロロナはそう言うと、大鎌を振り回した。
あたりにいる亡霊たちが、一斉に刻まれてゆく。
〝斬印〟
ありとあらゆる物体を斬るという魔法だ。
「その鎌は……」
たしかセイが破壊したはずだ。
「わざわざ新調したのだ。これは命を刈り取る鎌ではない。私の進むべき道を切り開く鎌なのだ」
一振り、二振り。
亡霊たちが消されてゆく。
仲間になるとずいぶんと頼もしい。
「どういう風の吹き回しだ」
「あの鎌を壊されてから、私は自分が誰かに止めて欲しかったことに気づいたのだ。あの殿方が止めてくれた。あの殿方が私を求めてくれた。だから援護してやるのだ」
「あの殿方というのは、もしやセイのことか?
「もちろん」
キリアは混乱した。
この暗殺者にいったいどういう心境の変化があったのか。腋がウンヌンと言っていたが、よくわからない。
ただ、恋をする乙女の顔をしていた。
「事情はよくわからんが、援護してくれるならありがたい」
「勘違いするなよ――なのだ。私はあの殿方のために援護するのだ。貴様たちなど興味はないのだ」
「セイを求めているのは、貴様だけではない。女はみんなあの男を求めている」
セイを見ていると、キリアはときおり切なくなる。
どれだけ想っても、決して自分の腕の中におさめておくことはできないのだ。
「マッシュ・ポトトは橋にいる荷物の中に隠れているのだ」
ロロナはそうつぶやいた。
「橋だと? ウソじゃないだろうな?」
「脳みそまで筋肉なのか? このロロナがわざわざ援護してやっているのだ。ウソなんかつくわけないのだ」
たしかにウソではなさそうだった。
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