《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

執筆用bot E-021番 

112話~毒~

「どうぞ、おかけください」
 と、石室に通された。



「失礼します」
 修道院そのものが石造りのために、だいたいが石室になっているようだ。神殿騎士はホントウにセイと二人きりで話がしたいようだった。



 切実なものを感じたために、エインたちには別室で待っていてもらうことにした。と言ったものの、大人しく待っているはずがない。エインたちは、この石室のトビラの外で待ち構えている。



「いちおうこの部屋は、賓客従者用の宿舎となっておりますので、おくつろぎください」



「はい」



 汚すぎず、キレイすぎず――といった部屋だ。
テーブルやベッドも用意されている。これといった特徴のない簡素な部屋ではあった。レフィール伯爵のキュリンジ城で、セイにあてがわれていた部屋に似ている。



「別に、お伝えしようとしていたわけではないのですが、こうして出会ったのも何かの縁。セイさまにはシルベ教のことを伝えておこうと思います」



 そう言うと、神殿騎士はつけていたヘルムをとった。



 プラチナブロンドのうつくしい髪があらわになった。ヘルムで閉じ込められていた女の香りがいっきにあふれていた。



「シルベ教のことですか」



「ご存知の通り。シルベ教は〝印〟というチカラを信仰対象にしている宗派であり、このフィルドランタにおいてイチバン影響力の強い、宗派でもあります」



「ええ」



 冠婚葬祭など、ほとんどシルベ教がになっていた。学問や医術に関しても、シルベ教が行っているものだ。



「シルベ教は今、2つの派閥にわかれております。1方は、封印を解いて神の図書館を開けようとする者。もう1方は、それに反対する者です」



 どうぞ、と神殿騎士はセイに水を出してくれた。
 ノドが乾いていたところだ。
 ありがたい。



「シルベ教も一枚岩ではないんですね」
 はい、と神殿騎士はうなずく。



「神の図書館は、おそらくすでに開かれております」



「ええ」



 魔王サタンは復活しているだろう――というのが、レフィール伯爵の見立てでもあった。



「つまり、この勝負はすでに我らの勝利。英雄王の印を持つ者に勝ち目はない」



 神殿騎士はそう言いきると、懐に忍ばせていたナイフをセイに突き付けてきた。



 咄嗟のことだった。が、かろうじてセイはそれを回避することができた。回避というよりも、イスから転げ落ちただけだったが。



「いったい何のつもりですかッ」
 持っていたグラスを落としてしまって、コップが割れた。



「タギールさまからの命令だ。貴様を見かけたら抹殺しろという命令を受けている」



「そりゃ残念だったな。抹殺し損ねて」
「いいや。上手くいった」



 神殿騎士はそう言うと、ニヤリと微笑んでみせた。
 急にセイのカラダが痺れはじめた。



「ぐっ」



「油断させておいて、毒を盛ったのがうまく行ったようだ」



 水だ。
 なんの警戒もなく飲んでしまったのが、いけなかった。
 視界が歪む。



「おい、どうかしたかッ」



 エインたちが、部屋になだれ込んできたときには、神殿騎士は窓から跳びだして逃げていた。



 セイの視界が暗くなった。

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