《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする
112話~毒~
「どうぞ、おかけください」
と、石室に通された。
「失礼します」
修道院そのものが石造りのために、だいたいが石室になっているようだ。神殿騎士はホントウにセイと二人きりで話がしたいようだった。
切実なものを感じたために、エインたちには別室で待っていてもらうことにした。と言ったものの、大人しく待っているはずがない。エインたちは、この石室のトビラの外で待ち構えている。
「いちおうこの部屋は、賓客従者用の宿舎となっておりますので、おくつろぎください」
「はい」
汚すぎず、キレイすぎず――といった部屋だ。
テーブルやベッドも用意されている。これといった特徴のない簡素な部屋ではあった。レフィール伯爵のキュリンジ城で、セイにあてがわれていた部屋に似ている。
「別に、お伝えしようとしていたわけではないのですが、こうして出会ったのも何かの縁。セイさまにはシルベ教のことを伝えておこうと思います」
そう言うと、神殿騎士はつけていたヘルムをとった。
プラチナブロンドのうつくしい髪があらわになった。ヘルムで閉じ込められていた女の香りがいっきにあふれていた。
「シルベ教のことですか」
「ご存知の通り。シルベ教は〝印〟というチカラを信仰対象にしている宗派であり、このフィルドランタにおいてイチバン影響力の強い、宗派でもあります」
「ええ」
冠婚葬祭など、ほとんどシルベ教がになっていた。学問や医術に関しても、シルベ教が行っているものだ。
「シルベ教は今、2つの派閥にわかれております。1方は、封印を解いて神の図書館を開けようとする者。もう1方は、それに反対する者です」
どうぞ、と神殿騎士はセイに水を出してくれた。
ノドが乾いていたところだ。
ありがたい。
「シルベ教も一枚岩ではないんですね」
はい、と神殿騎士はうなずく。
「神の図書館は、おそらくすでに開かれております」
「ええ」
魔王サタンは復活しているだろう――というのが、レフィール伯爵の見立てでもあった。
「つまり、この勝負はすでに我らの勝利。英雄王の印を持つ者に勝ち目はない」
神殿騎士はそう言いきると、懐に忍ばせていたナイフをセイに突き付けてきた。
咄嗟のことだった。が、かろうじてセイはそれを回避することができた。回避というよりも、イスから転げ落ちただけだったが。
「いったい何のつもりですかッ」
持っていたグラスを落としてしまって、コップが割れた。
「タギールさまからの命令だ。貴様を見かけたら抹殺しろという命令を受けている」
「そりゃ残念だったな。抹殺し損ねて」
「いいや。上手くいった」
神殿騎士はそう言うと、ニヤリと微笑んでみせた。
急にセイのカラダが痺れはじめた。
「ぐっ」
「油断させておいて、毒を盛ったのがうまく行ったようだ」
水だ。
なんの警戒もなく飲んでしまったのが、いけなかった。
視界が歪む。
「おい、どうかしたかッ」
エインたちが、部屋になだれ込んできたときには、神殿騎士は窓から跳びだして逃げていた。
セイの視界が暗くなった。
と、石室に通された。
「失礼します」
修道院そのものが石造りのために、だいたいが石室になっているようだ。神殿騎士はホントウにセイと二人きりで話がしたいようだった。
切実なものを感じたために、エインたちには別室で待っていてもらうことにした。と言ったものの、大人しく待っているはずがない。エインたちは、この石室のトビラの外で待ち構えている。
「いちおうこの部屋は、賓客従者用の宿舎となっておりますので、おくつろぎください」
「はい」
汚すぎず、キレイすぎず――といった部屋だ。
テーブルやベッドも用意されている。これといった特徴のない簡素な部屋ではあった。レフィール伯爵のキュリンジ城で、セイにあてがわれていた部屋に似ている。
「別に、お伝えしようとしていたわけではないのですが、こうして出会ったのも何かの縁。セイさまにはシルベ教のことを伝えておこうと思います」
そう言うと、神殿騎士はつけていたヘルムをとった。
プラチナブロンドのうつくしい髪があらわになった。ヘルムで閉じ込められていた女の香りがいっきにあふれていた。
「シルベ教のことですか」
「ご存知の通り。シルベ教は〝印〟というチカラを信仰対象にしている宗派であり、このフィルドランタにおいてイチバン影響力の強い、宗派でもあります」
「ええ」
冠婚葬祭など、ほとんどシルベ教がになっていた。学問や医術に関しても、シルベ教が行っているものだ。
「シルベ教は今、2つの派閥にわかれております。1方は、封印を解いて神の図書館を開けようとする者。もう1方は、それに反対する者です」
どうぞ、と神殿騎士はセイに水を出してくれた。
ノドが乾いていたところだ。
ありがたい。
「シルベ教も一枚岩ではないんですね」
はい、と神殿騎士はうなずく。
「神の図書館は、おそらくすでに開かれております」
「ええ」
魔王サタンは復活しているだろう――というのが、レフィール伯爵の見立てでもあった。
「つまり、この勝負はすでに我らの勝利。英雄王の印を持つ者に勝ち目はない」
神殿騎士はそう言いきると、懐に忍ばせていたナイフをセイに突き付けてきた。
咄嗟のことだった。が、かろうじてセイはそれを回避することができた。回避というよりも、イスから転げ落ちただけだったが。
「いったい何のつもりですかッ」
持っていたグラスを落としてしまって、コップが割れた。
「タギールさまからの命令だ。貴様を見かけたら抹殺しろという命令を受けている」
「そりゃ残念だったな。抹殺し損ねて」
「いいや。上手くいった」
神殿騎士はそう言うと、ニヤリと微笑んでみせた。
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「ぐっ」
「油断させておいて、毒を盛ったのがうまく行ったようだ」
水だ。
なんの警戒もなく飲んでしまったのが、いけなかった。
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「おい、どうかしたかッ」
エインたちが、部屋になだれ込んできたときには、神殿騎士は窓から跳びだして逃げていた。
セイの視界が暗くなった。
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