《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする
111話~神殿騎士~
小舟の中――。
セイはエインに押し倒されていた。襲われているわけではない。女たちはみんな身をかがめているのだ。
すこしでも、モンスターの視界に入らないようにしようとしていたのだ。舟が見つかった時点で怪しまれることは必至であり、乗り手が身をかがめていても、そう効果はなかったかもしれないが。
左右は土壁になっており、真ん中に川が流れている。地上にはモンスターたちがあふれかえっているはずだが、水掘りの中を覗きこまれないかぎりは、見つかることはなさそうだ。
「見えたよ」
女のひとりが静かにそう言った。
丸太で組み上げられた小さな舟着場があった。
舟を停めた。
女たちはそそくさと降りてゆく。セイを襲った名残でみんな着ているブリオーが乱れていた。白い素足や小麦色の素足がなまめかしい。セイも小舟からおりた。ようやく自由になれたという解放感があった。
「帰りはどうします?」
と、セイは質問した。
「修道院にいる者たちを連れて、帰りは舟を往復することになるだろうな」
「地上の道は難しそうですからね」
「ああ」
修道院とは言っても、ただの修道院ではない。都市ほどではないが、ちゃんと城壁で囲まれている。小舟で入ったところはちょうど、修道院の裏庭に出たようだ。芝が刈りそろえられており、低木がほどよく茂っていた。
「何者だ!」
と、騎士が槍を向けてきた。肩当てにシルベ教の紋様が入っている。シルベ教に仕える神殿騎士だろう。
「怪しいものじゃない。サファリアからの来た者だ」
エインがそう言うと、神殿騎士は槍をおろした。
「そうですか。都市からの援護ですか。助かりました」
神殿騎士はホッと胸をナでおろした様子を見せたのだが、今度は跳びあがって驚いていた。
「お、男がいるじゃないですか!」
「あ、バカ。どうして女の姿に戻ってないんだよ」
と、エインに注意された。
そんなこと言われても、小舟のなかで女たちの肉欲にいじめ抜かれて、セイの頭は沸騰していたのだ。ただでさえ忘れがちなのに、冷静に女に戻れるわけがない。
それに。
(バレてるんなら、もういいかな)
と、投げやりな気分になっている。
子供ができないように、注意しておけば良いのだ。
「それより修道院は、どういう状況なんですか?」
と、セイは話をそらした。
「今のところ問題はありません。モンスターたちはどうやら、この修道院には興味がないらようです」
「そうですか」
被害が少なそうでなによりだ。
しかし、なんですか……と神殿騎士は照れ臭そうに続けた。
「もう少し詳しい話は、修道院の中でいたしましょう。男がいるといろいろ問題ですから、そちらの殿方は別室に案内しましょう」
神殿騎士がセイの腕をつかんできた。
なかば強引に引っ張ってくる。
「ちょっと待ちなよ。そう言って、セイのことを独り占めするつもりだろう」
と、エインが空いているほうのセイの腕をつかんだ。
騎士とエインが、セイの腕を引っ張り合う。
「ひ、独り占めなど失敬な。ちょっと2人でお茶でもしようと――それから、お疲れのようだから、カラダのマッサージでもして、一緒に風呂でも……」
「欲望が駄々漏れじゃないか。この男は私の男なんだからな。好きなようにさせないよ」
別にマッサージをしてもらうつもりはないし、一緒に風呂に入るつもりもない。それからエインの所有物になった覚えもない。女たちはどうやら、モンスターに襲われていることよりも、セイという男をどうやって我が物にするかということにご執心らしい。
「わかった。わかりました。女の姿をしておけば良いんでしょう」
セーコになっておいた。
それにもまた騎士が驚いた。
「女にもなるのですか」
「この様子だと、修道院のほうは無事みたいですね」
「うむ。城壁もあるし、破られる心配もありません。モンスターたちは見事にスルーして、都市サファリアに向かっているようです」
「なら、別に避難する必要もなさそうですね」
むしろここにいるほうが、安全かもしれない。
「なんだ、助けに来て損したな」
と、エインがあからさまに肩を落としていた。
なら引き返そうかと思ったのだが、またしても神殿騎士がセイの腕をつかんできた。
「あなたは英雄印のクロカミ・セイなのでしょう。あなたに伝えておきたいことがあるのです」 ということだ。
「あ、また、そうやって、セイにヤらしいことをしようって魂胆だろ」
「ち、違う!」
と、神殿騎士は顔をあからめていた。
ヤらしいことをしようとしているだなんて、エインはどの口で言っているのか。
セイはエインに押し倒されていた。襲われているわけではない。女たちはみんな身をかがめているのだ。
すこしでも、モンスターの視界に入らないようにしようとしていたのだ。舟が見つかった時点で怪しまれることは必至であり、乗り手が身をかがめていても、そう効果はなかったかもしれないが。
左右は土壁になっており、真ん中に川が流れている。地上にはモンスターたちがあふれかえっているはずだが、水掘りの中を覗きこまれないかぎりは、見つかることはなさそうだ。
「見えたよ」
女のひとりが静かにそう言った。
丸太で組み上げられた小さな舟着場があった。
舟を停めた。
女たちはそそくさと降りてゆく。セイを襲った名残でみんな着ているブリオーが乱れていた。白い素足や小麦色の素足がなまめかしい。セイも小舟からおりた。ようやく自由になれたという解放感があった。
「帰りはどうします?」
と、セイは質問した。
「修道院にいる者たちを連れて、帰りは舟を往復することになるだろうな」
「地上の道は難しそうですからね」
「ああ」
修道院とは言っても、ただの修道院ではない。都市ほどではないが、ちゃんと城壁で囲まれている。小舟で入ったところはちょうど、修道院の裏庭に出たようだ。芝が刈りそろえられており、低木がほどよく茂っていた。
「何者だ!」
と、騎士が槍を向けてきた。肩当てにシルベ教の紋様が入っている。シルベ教に仕える神殿騎士だろう。
「怪しいものじゃない。サファリアからの来た者だ」
エインがそう言うと、神殿騎士は槍をおろした。
「そうですか。都市からの援護ですか。助かりました」
神殿騎士はホッと胸をナでおろした様子を見せたのだが、今度は跳びあがって驚いていた。
「お、男がいるじゃないですか!」
「あ、バカ。どうして女の姿に戻ってないんだよ」
と、エインに注意された。
そんなこと言われても、小舟のなかで女たちの肉欲にいじめ抜かれて、セイの頭は沸騰していたのだ。ただでさえ忘れがちなのに、冷静に女に戻れるわけがない。
それに。
(バレてるんなら、もういいかな)
と、投げやりな気分になっている。
子供ができないように、注意しておけば良いのだ。
「それより修道院は、どういう状況なんですか?」
と、セイは話をそらした。
「今のところ問題はありません。モンスターたちはどうやら、この修道院には興味がないらようです」
「そうですか」
被害が少なそうでなによりだ。
しかし、なんですか……と神殿騎士は照れ臭そうに続けた。
「もう少し詳しい話は、修道院の中でいたしましょう。男がいるといろいろ問題ですから、そちらの殿方は別室に案内しましょう」
神殿騎士がセイの腕をつかんできた。
なかば強引に引っ張ってくる。
「ちょっと待ちなよ。そう言って、セイのことを独り占めするつもりだろう」
と、エインが空いているほうのセイの腕をつかんだ。
騎士とエインが、セイの腕を引っ張り合う。
「ひ、独り占めなど失敬な。ちょっと2人でお茶でもしようと――それから、お疲れのようだから、カラダのマッサージでもして、一緒に風呂でも……」
「欲望が駄々漏れじゃないか。この男は私の男なんだからな。好きなようにさせないよ」
別にマッサージをしてもらうつもりはないし、一緒に風呂に入るつもりもない。それからエインの所有物になった覚えもない。女たちはどうやら、モンスターに襲われていることよりも、セイという男をどうやって我が物にするかということにご執心らしい。
「わかった。わかりました。女の姿をしておけば良いんでしょう」
セーコになっておいた。
それにもまた騎士が驚いた。
「女にもなるのですか」
「この様子だと、修道院のほうは無事みたいですね」
「うむ。城壁もあるし、破られる心配もありません。モンスターたちは見事にスルーして、都市サファリアに向かっているようです」
「なら、別に避難する必要もなさそうですね」
むしろここにいるほうが、安全かもしれない。
「なんだ、助けに来て損したな」
と、エインがあからさまに肩を落としていた。
なら引き返そうかと思ったのだが、またしても神殿騎士がセイの腕をつかんできた。
「あなたは英雄印のクロカミ・セイなのでしょう。あなたに伝えておきたいことがあるのです」 ということだ。
「あ、また、そうやって、セイにヤらしいことをしようって魂胆だろ」
「ち、違う!」
と、神殿騎士は顔をあからめていた。
ヤらしいことをしようとしているだなんて、エインはどの口で言っているのか。
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