《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする
108話~サファリアの構図~
都市サファリアには主体となる都市があり、水掘りの向こうには副市がある。
ぐるりを城壁で囲まれており、容易に敵の侵入を許すつくりではない。都市の入口となるのが西と東にある城門棟だ。その城門棟も今は跳ね橋があげられているので、そう簡単にはモンスターは入れない。
手薄いのは副市のほうだ。もともと空堀だった場所に今は水がたまっている。そこは問題ないとして城前からの侵入が考えられた。
そしてもう一つ心配なのが――。
都市に寄り添うようにして建てられている築城修道院だ。シルベ教の修道院になっている。子供を多く引き取っており、孤児もたくさんいるということだった。
「以上が、この都市のおおまかな構造です」
そう言ったのは、イティカ・ルブミラルの後を継いでギルド長として立っている、ザンザだった。
もともと《シャクナゲ級》の冒険者である2人――ザンザとテルデルンは、イティカ不在の今、冒険者を取り仕切る立場にいた。
冒険者組合。
いつもは賑やかな場所だが、今は冒険者たちが出払っている。セイとキリアとフォルモルとシラティウス。
それから、ザンザの5人しかいなかった。ザンザがセイたちにたいして、状況を説明してくれているのだ。
「すると、問題なのは築上修道院というわけですか」
机上に広げられた図面を、セイは指差した。
「その通りです。モンスターの軍勢に囲まれているため、迂闊に援護を出すこともできません。そこで現在このサファリアにおいて、屈指の戦力となるセーコさまに向かってもらおうと考えております」
「シルベ教の修道院ですよね?」
「ええ。それが何か?」
タギール・ジリアルの件もあり、シルベ教を信用して良いのかわからないところがある。そのことを言った。
「このモンスター騒動の件に、シルベ教がどの程度かかわっているのかはわかりません。なににせよ、修道院にいる子供たちは心配です」
それもそうだ。
助けに行くのは良いが――。
「それは、私ひとりで行くことになりますか?」
「いえ。《愛を求めるもの》のクランが協力を申し出ています」
「ああ。あのクランですか……」
セイの素性に気づきはじめているゴウス・エイン率いるクランだ。信用しきれないところがあるが、まさかこの緊急時に妙なことはしないだろう。
「それから、キリア・ユーナさまは副市バービカンの守備にあたってください。どうも人ともモンスターとも見分けのつかぬ厄介な連中が攻撃を仕掛けてきておりまして」
ザンザは眉宇をくもらせそう言った。
「厄介な連中?」
「亡霊――とでも申しましょうか……」
「なるほど。了解しました」
と、キリアはうなずいた。
亡霊と言うと1人しか思いつかない。キリアの仇敵であるマッシュ・ポトトがいるのだろう。
「それから東口の城門棟に負傷者が多数出ております。できればフォルモル・ラレンチェさまには、そちらの負傷者を見てもらいたいのです」
「東口に何か?」
とフォルモルが尋ねる。
「ケルベロスが城門を突き破ろうとしていて、止めるのに苦労したのです」
「わかりました」
と、フォルモルは大きくうなずいた。
ケルベロス――つまりそれを操るタギール・ジリアルがいるということだ。
「城門棟は堅牢です。跳ね橋をあげた今は、ケルベロスも手を出しあぐねているので、負傷者のほうをお願いします。すでに、薬師のカール・セルヴィルが向かっているはずです」
キリアとフォルモルは冒険者ギルドを出て行き、おのおの指示された持ち場に向かった。フォルモルにとっても、キリアにとっても因縁の相手がいるのだ。2人の乙女の背中からは強い闘志が感じられた。
「それではすぐに《愛を求めるもの》の者たちが来るはずなので、セーコさまはここでお待ちください」
そう言い残すと、ザンザも冒険者組合を出て行った。
残されたのは、セイとシラティウスである。
「私は?」
と、シラティウスが無表情を、セイに向けてくる。
「シラティウスは人前で魔法を使ってないからな。まさかドラゴンになるだなんて、誰も思っちゃいないだろ。戦力として見られてないんじゃないか?」
「不服」
シラティウスはそう言うと、セイのワキバラをツネってきた。
「痛いって」
「なんなら私がドラゴンになって、外のヤツらを蹴散らしてきても良いけど」
シラティウスなら、それも可能かもしれない
一瞬そう思ったが、さすがに無謀だ。
「とんでもない数のモンスターが集まってるんだぜ。ケルベロスもいるらしいし、今は様子を見よう」
セイも築城修道院に行かなければならない。シラティウスに何かあったとしても、助けに行けない。
「わかった」
と、シラティウスは座っていたイスから跳び下りた。
「どこ行くんだ?」
「私はお呼びでないみたいだし、宿に戻ってお昼寝」
シラティウスはそう言って頬をふくらませた。
「だからって油断するんじゃないぜ」
そう忠告しておいた。
マッシュ・ポトトとタギール・ジリアルが動いているということは、シラティウスの敵対者であるシド・アラインが動いている可能性は非常に大きい。シラティウスはわかっているのか、返答なく立ち去ってしまった。
ぐるりを城壁で囲まれており、容易に敵の侵入を許すつくりではない。都市の入口となるのが西と東にある城門棟だ。その城門棟も今は跳ね橋があげられているので、そう簡単にはモンスターは入れない。
手薄いのは副市のほうだ。もともと空堀だった場所に今は水がたまっている。そこは問題ないとして城前からの侵入が考えられた。
そしてもう一つ心配なのが――。
都市に寄り添うようにして建てられている築城修道院だ。シルベ教の修道院になっている。子供を多く引き取っており、孤児もたくさんいるということだった。
「以上が、この都市のおおまかな構造です」
そう言ったのは、イティカ・ルブミラルの後を継いでギルド長として立っている、ザンザだった。
もともと《シャクナゲ級》の冒険者である2人――ザンザとテルデルンは、イティカ不在の今、冒険者を取り仕切る立場にいた。
冒険者組合。
いつもは賑やかな場所だが、今は冒険者たちが出払っている。セイとキリアとフォルモルとシラティウス。
それから、ザンザの5人しかいなかった。ザンザがセイたちにたいして、状況を説明してくれているのだ。
「すると、問題なのは築上修道院というわけですか」
机上に広げられた図面を、セイは指差した。
「その通りです。モンスターの軍勢に囲まれているため、迂闊に援護を出すこともできません。そこで現在このサファリアにおいて、屈指の戦力となるセーコさまに向かってもらおうと考えております」
「シルベ教の修道院ですよね?」
「ええ。それが何か?」
タギール・ジリアルの件もあり、シルベ教を信用して良いのかわからないところがある。そのことを言った。
「このモンスター騒動の件に、シルベ教がどの程度かかわっているのかはわかりません。なににせよ、修道院にいる子供たちは心配です」
それもそうだ。
助けに行くのは良いが――。
「それは、私ひとりで行くことになりますか?」
「いえ。《愛を求めるもの》のクランが協力を申し出ています」
「ああ。あのクランですか……」
セイの素性に気づきはじめているゴウス・エイン率いるクランだ。信用しきれないところがあるが、まさかこの緊急時に妙なことはしないだろう。
「それから、キリア・ユーナさまは副市バービカンの守備にあたってください。どうも人ともモンスターとも見分けのつかぬ厄介な連中が攻撃を仕掛けてきておりまして」
ザンザは眉宇をくもらせそう言った。
「厄介な連中?」
「亡霊――とでも申しましょうか……」
「なるほど。了解しました」
と、キリアはうなずいた。
亡霊と言うと1人しか思いつかない。キリアの仇敵であるマッシュ・ポトトがいるのだろう。
「それから東口の城門棟に負傷者が多数出ております。できればフォルモル・ラレンチェさまには、そちらの負傷者を見てもらいたいのです」
「東口に何か?」
とフォルモルが尋ねる。
「ケルベロスが城門を突き破ろうとしていて、止めるのに苦労したのです」
「わかりました」
と、フォルモルは大きくうなずいた。
ケルベロス――つまりそれを操るタギール・ジリアルがいるということだ。
「城門棟は堅牢です。跳ね橋をあげた今は、ケルベロスも手を出しあぐねているので、負傷者のほうをお願いします。すでに、薬師のカール・セルヴィルが向かっているはずです」
キリアとフォルモルは冒険者ギルドを出て行き、おのおの指示された持ち場に向かった。フォルモルにとっても、キリアにとっても因縁の相手がいるのだ。2人の乙女の背中からは強い闘志が感じられた。
「それではすぐに《愛を求めるもの》の者たちが来るはずなので、セーコさまはここでお待ちください」
そう言い残すと、ザンザも冒険者組合を出て行った。
残されたのは、セイとシラティウスである。
「私は?」
と、シラティウスが無表情を、セイに向けてくる。
「シラティウスは人前で魔法を使ってないからな。まさかドラゴンになるだなんて、誰も思っちゃいないだろ。戦力として見られてないんじゃないか?」
「不服」
シラティウスはそう言うと、セイのワキバラをツネってきた。
「痛いって」
「なんなら私がドラゴンになって、外のヤツらを蹴散らしてきても良いけど」
シラティウスなら、それも可能かもしれない
一瞬そう思ったが、さすがに無謀だ。
「とんでもない数のモンスターが集まってるんだぜ。ケルベロスもいるらしいし、今は様子を見よう」
セイも築城修道院に行かなければならない。シラティウスに何かあったとしても、助けに行けない。
「わかった」
と、シラティウスは座っていたイスから跳び下りた。
「どこ行くんだ?」
「私はお呼びでないみたいだし、宿に戻ってお昼寝」
シラティウスはそう言って頬をふくらませた。
「だからって油断するんじゃないぜ」
そう忠告しておいた。
マッシュ・ポトトとタギール・ジリアルが動いているということは、シラティウスの敵対者であるシド・アラインが動いている可能性は非常に大きい。シラティウスはわかっているのか、返答なく立ち去ってしまった。
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