《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

執筆用bot E-021番 

107話~兄弟~

 かつてフィルドランタにはふたりの王がいた。



 ハーレム。
 サタン。



 ふたりは兄弟だった。ありとあらゆるチカラを使うことのできる魔王サタン。何一つチカラの持たないハーレム。優秀な兄と、出来の悪い弟だった。



『ただ、共通する点がありました』



 念話。
 裏路地に木箱が積まれている場所があった。そこに腰かけてセイは、レフィール伯爵の言葉に耳をすませていた。レフィール伯爵は長い時間をかけて、この騒動について完全に調べ終わったということだった。



「なんです。共通する点というのは?」
 レフィール伯爵がモゴモゴと言い淀んでいるので、セイがうながした。



『ふたりともトンデモナイ好色だったそうです
「女好きということですか」
『はい』



 どうにか世界中の美女を我が物にする方法はないかと、魔王サタンは思案した。そして名案を思い付いた。男が自分ひとりだけになれば良いのだと。ほかの男をすべて消してしまおうと。



『魔王サタンはすべての男を、モンスターに変える雨を降らすことを決めたのです。そして霧へと変化して、徹底的に男をモンスターに変えてしまいました』



 ただし、ひとりだけモンスターにならない男がいた。
 それが次男のハーレムだった。



 ハーレムはなんの能力もない無能だと思われていたが、実は、他人の印を自分のチカラにする能力があった。



「それはオレもよく知ってます」
 身に染みて実感している。



『そして英雄王ハーレムは、女たちの印を自分のものにして、魔王サタンを封印したのだそうです』



 その魔王サタンの封印された場所というのが、神の図書館アカシック・レコードなのだ。



「どうして封印なんでしょうか」



 兄弟とはいえ、もはや天災レベルの人物だ。殺してしまうべきだろうと思う。実際に、災厄はふたたび訪れているのだ。



『英雄王ハーレムに、魔王サタンは倒せなかったのかもしれませんね。魔王サタンはトンデモナイ魔力の持ち主で、ありとあらゆる印を創造することができたそうですから』



「怖ろしいですね」
 男をすべてモンスターに変える。そんなチカラもあるのだ。



『これが私の調べた結果です。セイのお役に立てれば良いのですが』



「もうひとつ気になるんですが……」



『なんでしょうか?』



「どうして、そんな大事な資料が隠されているのでしょうか?」
 まるで隠蔽いんぺいされているかのようだ。
 英雄王ハーレムの話だって、夢物語だと思っている人はすくなくない。



『それはその……英雄王ハーレムは、自分の印がある場所がコンプレックスだったようです。ですので、英雄王ハーレムの名誉のためにも、伏せられているというか……』



「は?」



『いえ。なんでもありません。大昔のことですから、資料が消えてしまっていたのでしょう』
 と、あわてたようにレフィール伯爵は言った。



「そうですか」
 紙もロクにない時代だったのだろう。
 仕方がない。



『魔王サタンは、他者に〝完全印〟を与えることができるそうです』



「手に入れるとどうなるんです?」



『圧倒的な魔力を手に入れ、人ではない存在になる――とか』



「そりゃまた大層な存在ですね」



 女たちの掛け声が聞こえてきた。
 モンスターを都市に入れまいと戦っているのだろう。セイものんびりとレフィール伯爵と話をしている暇はあまりない。



 レフィール伯爵は、セイの焦りを察知したのか、早口で言った。



『魔王サタンがよみがえったと考えるべきです。サタンの魔力によってモンスターたちは動き、都市サファリアを包囲しているものと思われます』



「そっちは無事ですか?」
『はい。こちらは問題ありません』



 なら、良かった。
 都市サファリアはモンスターに包囲されており、迂闊には動けない。レフィール伯爵のほうに何かあっても、すぐには助けに行くことができない。



 良いですか、セイ――とレフィール伯爵は続けた。



『魔王サタンを封印するためには、3種の封印を手に入れる必要があります』



「手に入れるたって、3種とも奪われてしまいましたよ」



『どうにか、取り返す方法を考えなくてはいけませんね』



「取り返す方法――ですか」



『封印の持ち主が死んでいる以上、効果を発揮することはできません。取り返して、自分の物にしてください』



 ナめろ、ということだろう。
 ナめるナめない以前に、封印は手の届く場所にはない。



 たしか、シルベ教を統括しているカテミラルダという都市がある。もし、封印が保管されているとすれば、そこだろう。

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