《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする
107話~兄弟~
かつてフィルドランタにはふたりの王がいた。
ハーレム。
サタン。
ふたりは兄弟だった。ありとあらゆるチカラを使うことのできる魔王サタン。何一つチカラの持たないハーレム。優秀な兄と、出来の悪い弟だった。
『ただ、共通する点がありました』
念話。
裏路地に木箱が積まれている場所があった。そこに腰かけてセイは、レフィール伯爵の言葉に耳をすませていた。レフィール伯爵は長い時間をかけて、この騒動について完全に調べ終わったということだった。
「なんです。共通する点というのは?」
レフィール伯爵がモゴモゴと言い淀んでいるので、セイがうながした。
『ふたりともトンデモナイ好色だったそうです
「女好きということですか」
『はい』
どうにか世界中の美女を我が物にする方法はないかと、魔王サタンは思案した。そして名案を思い付いた。男が自分ひとりだけになれば良いのだと。ほかの男をすべて消してしまおうと。
『魔王サタンはすべての男を、モンスターに変える雨を降らすことを決めたのです。そして霧へと変化して、徹底的に男をモンスターに変えてしまいました』
ただし、ひとりだけモンスターにならない男がいた。
それが次男のハーレムだった。
ハーレムはなんの能力もない無能だと思われていたが、実は、他人の印を自分のチカラにする能力があった。
「それはオレもよく知ってます」
身に染みて実感している。
『そして英雄王ハーレムは、女たちの印を自分のものにして、魔王サタンを封印したのだそうです』
その魔王サタンの封印された場所というのが、神の図書館なのだ。
「どうして封印なんでしょうか」
兄弟とはいえ、もはや天災レベルの人物だ。殺してしまうべきだろうと思う。実際に、災厄はふたたび訪れているのだ。
『英雄王ハーレムに、魔王サタンは倒せなかったのかもしれませんね。魔王サタンはトンデモナイ魔力の持ち主で、ありとあらゆる印を創造することができたそうですから』
「怖ろしいですね」
男をすべてモンスターに変える。そんなチカラもあるのだ。
『これが私の調べた結果です。セイのお役に立てれば良いのですが』
「もうひとつ気になるんですが……」
『なんでしょうか?』
「どうして、そんな大事な資料が隠されているのでしょうか?」
まるで隠蔽されているかのようだ。
英雄王ハーレムの話だって、夢物語だと思っている人はすくなくない。
『それはその……英雄王ハーレムは、自分の印がある場所がコンプレックスだったようです。ですので、英雄王ハーレムの名誉のためにも、伏せられているというか……』
「は?」
『いえ。なんでもありません。大昔のことですから、資料が消えてしまっていたのでしょう』
と、あわてたようにレフィール伯爵は言った。
「そうですか」
紙もロクにない時代だったのだろう。
仕方がない。
『魔王サタンは、他者に〝完全印〟を与えることができるそうです』
「手に入れるとどうなるんです?」
『圧倒的な魔力を手に入れ、人ではない存在になる――とか』
「そりゃまた大層な存在ですね」
女たちの掛け声が聞こえてきた。
モンスターを都市に入れまいと戦っているのだろう。セイものんびりとレフィール伯爵と話をしている暇はあまりない。
レフィール伯爵は、セイの焦りを察知したのか、早口で言った。
『魔王サタンがよみがえったと考えるべきです。サタンの魔力によってモンスターたちは動き、都市サファリアを包囲しているものと思われます』
「そっちは無事ですか?」
『はい。こちらは問題ありません』
なら、良かった。
都市サファリアはモンスターに包囲されており、迂闊には動けない。レフィール伯爵のほうに何かあっても、すぐには助けに行くことができない。
良いですか、セイ――とレフィール伯爵は続けた。
『魔王サタンを封印するためには、3種の封印を手に入れる必要があります』
「手に入れるたって、3種とも奪われてしまいましたよ」
『どうにか、取り返す方法を考えなくてはいけませんね』
「取り返す方法――ですか」
『封印の持ち主が死んでいる以上、効果を発揮することはできません。取り返して、自分の物にしてください』
ナめろ、ということだろう。
ナめるナめない以前に、封印は手の届く場所にはない。
たしか、シルベ教を統括しているカテミラルダという都市がある。もし、封印が保管されているとすれば、そこだろう。
ハーレム。
サタン。
ふたりは兄弟だった。ありとあらゆるチカラを使うことのできる魔王サタン。何一つチカラの持たないハーレム。優秀な兄と、出来の悪い弟だった。
『ただ、共通する点がありました』
念話。
裏路地に木箱が積まれている場所があった。そこに腰かけてセイは、レフィール伯爵の言葉に耳をすませていた。レフィール伯爵は長い時間をかけて、この騒動について完全に調べ終わったということだった。
「なんです。共通する点というのは?」
レフィール伯爵がモゴモゴと言い淀んでいるので、セイがうながした。
『ふたりともトンデモナイ好色だったそうです
「女好きということですか」
『はい』
どうにか世界中の美女を我が物にする方法はないかと、魔王サタンは思案した。そして名案を思い付いた。男が自分ひとりだけになれば良いのだと。ほかの男をすべて消してしまおうと。
『魔王サタンはすべての男を、モンスターに変える雨を降らすことを決めたのです。そして霧へと変化して、徹底的に男をモンスターに変えてしまいました』
ただし、ひとりだけモンスターにならない男がいた。
それが次男のハーレムだった。
ハーレムはなんの能力もない無能だと思われていたが、実は、他人の印を自分のチカラにする能力があった。
「それはオレもよく知ってます」
身に染みて実感している。
『そして英雄王ハーレムは、女たちの印を自分のものにして、魔王サタンを封印したのだそうです』
その魔王サタンの封印された場所というのが、神の図書館なのだ。
「どうして封印なんでしょうか」
兄弟とはいえ、もはや天災レベルの人物だ。殺してしまうべきだろうと思う。実際に、災厄はふたたび訪れているのだ。
『英雄王ハーレムに、魔王サタンは倒せなかったのかもしれませんね。魔王サタンはトンデモナイ魔力の持ち主で、ありとあらゆる印を創造することができたそうですから』
「怖ろしいですね」
男をすべてモンスターに変える。そんなチカラもあるのだ。
『これが私の調べた結果です。セイのお役に立てれば良いのですが』
「もうひとつ気になるんですが……」
『なんでしょうか?』
「どうして、そんな大事な資料が隠されているのでしょうか?」
まるで隠蔽されているかのようだ。
英雄王ハーレムの話だって、夢物語だと思っている人はすくなくない。
『それはその……英雄王ハーレムは、自分の印がある場所がコンプレックスだったようです。ですので、英雄王ハーレムの名誉のためにも、伏せられているというか……』
「は?」
『いえ。なんでもありません。大昔のことですから、資料が消えてしまっていたのでしょう』
と、あわてたようにレフィール伯爵は言った。
「そうですか」
紙もロクにない時代だったのだろう。
仕方がない。
『魔王サタンは、他者に〝完全印〟を与えることができるそうです』
「手に入れるとどうなるんです?」
『圧倒的な魔力を手に入れ、人ではない存在になる――とか』
「そりゃまた大層な存在ですね」
女たちの掛け声が聞こえてきた。
モンスターを都市に入れまいと戦っているのだろう。セイものんびりとレフィール伯爵と話をしている暇はあまりない。
レフィール伯爵は、セイの焦りを察知したのか、早口で言った。
『魔王サタンがよみがえったと考えるべきです。サタンの魔力によってモンスターたちは動き、都市サファリアを包囲しているものと思われます』
「そっちは無事ですか?」
『はい。こちらは問題ありません』
なら、良かった。
都市サファリアはモンスターに包囲されており、迂闊には動けない。レフィール伯爵のほうに何かあっても、すぐには助けに行くことができない。
良いですか、セイ――とレフィール伯爵は続けた。
『魔王サタンを封印するためには、3種の封印を手に入れる必要があります』
「手に入れるたって、3種とも奪われてしまいましたよ」
『どうにか、取り返す方法を考えなくてはいけませんね』
「取り返す方法――ですか」
『封印の持ち主が死んでいる以上、効果を発揮することはできません。取り返して、自分の物にしてください』
ナめろ、ということだろう。
ナめるナめない以前に、封印は手の届く場所にはない。
たしか、シルベ教を統括しているカテミラルダという都市がある。もし、封印が保管されているとすれば、そこだろう。
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