《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

執筆用bot E-021番 

第100話~真夜中の不審者~

 深夜だった。



 カンテラを消して、セイは暗闇のなかで目を閉じていた。何度か眠っては起きてを繰り返していた。それこそ潮の満ち引きのようだった。眠りなれない場所だったので、熟睡できなかったのかもしれない。



 ガサゴソ……。



 床に敷かれた葉っぱがこすれる音が響いていた。薄く目を開けた。小さな人の輪郭が見えた。シラティウスが何かしてるのだろうかと思った。



 が――しかし、闇夜にまぎれて凶なる光を見た。それはダガーのきらめきだった。



(なんだ?)



 寝返りを打つフリをして、周囲の様子をさぐった。シラティウスはセイのとなりで眠っていた。



 ならば、あの侵入者は誰なのか……。



 藁ぶき屋根の隙間から月明かりが差し込んだ。シラティウスによく似た顔だった。しかし、髪の色が違う。灰色の髪をしていた。少女であることには違いない。灰色の少女はダガーを抜き身のまま、シラティウスに迫っていた。



 敵意を感じる。
 味方ではない。



 少女はセイたちのことを眠りこけていると思っているはずだ。ならば、跳び起きれば不意をつける。しかし、もう少し間合いが欲しい。



 1歩、2歩……慎重に迫ってくる。



 今だ!
 セイは跳ね起きた。



 少女の持っているダガーをとりあげようと、手首をつかんだ。しかし、少女の反応もはやかった。セイのワキバラに蹴りを入れてきた。思わず少女の手を離してしまった。闇夜の中、少女が飛びずさった。



「誰だ?」
「……ッ」



 奇襲失敗をさとったのか、少女はサッと部屋から跳びだして行った。



「あ、待てッ」



 あわてて追いかけた。外は暗闇とはいっても、月明かりがある。この距離なら見失うことはない。そう思ったのだが、藁ぶき屋根の家屋の曲がり角を何度か曲がると、少女は消えてしまった。



「どうかされましたか?」
 この騒ぎで起きてきたのだろう。



 ティルが尋ねてきた。
 ティルだけでなく、他の蜥蜴族も起きてきていた。



「それが……」
 目を覚ますと不審者が部屋にいた。捕まえようとしたのだが、見逃してしまった。そう述べた。



「見失ったところということならば、すぐ近くにいるはずです。みんなに探させましょう」



「すみません。手間をかけさせて」



「いえ。アムマイトの襲撃から救ってくださったのです。これぐらい容易い御用ですよ」
 と、ティルをはじめに蜥蜴族は協力的だった。



 ほんの数秒前に見失ったところなのだ。ちょっと探せば見つけることが出来るはずだった。


 しかしーー。
 見つからなかった。



 蜥蜴族はアムマイトの襲撃に備えて、警備を厳しくしていた。にも関わらず、セイが見たような不審者は出てこなかった。



 空が白みはじめたので、捜索は打ち切りとなった。



「見つけられず申し訳ありません」
 と、ティルは謝ってきた。



「いえ。こちらこそ手伝ってもらったのに」



「いえいえ。そもそも、ここは蜥蜴族の集落。不審者が入り込んでいるとなれば、それは我らの不手際です」
 と、セイとティルは互いに頭を下げ合うことになった。



 たしかに蜥蜴族の集落なのだが、こうまで見つからなければセイの見間違いだと疑われても仕方がない。なのに、必死に不審者を探してくれる蜥蜴人たちには、申し訳ないという気持ちがあった。

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